
モンキーチューニング史の頂点、“デスモ”という異端

4MINIチューンの歴史は長いが、その中でも頂点として語られる存在がある。スペシャルパーツ武川のデスモドロミックヘッドだ。モンキー用社外パーツとしては“最高傑作”のひとつと称されるこのユニットは、単なる高性能ではなく、構造そのものが異質である。
デスモドロミックといえば、ドゥカティのエンジンで広く知られる機構だ。通常の4ストロークエンジンはバルブスプリングでバルブを閉じるのに対し、デスモはカムで“開けて”“閉じる”強制バルブ開閉式を採用する。これによりバルブスプリングが不要となり、動弁系の抵抗は極めて小さく、高回転域でもバルブの追従性が崩れない。
その高度な機構を4MINIに落とし込んだのが、このSP武川のデスモヘッドだ。ツインカム4バルブに加え、“開”と“閉”で独立したカムプロフィールを持ち、ヘッド内には8本のロッカーアームを高密度に配置。中空カムシャフト+ボールベアリング支持という仕様も含め、もはやミニバイク用パーツの域を完全に超えている。
そして、このエンジンの本質は“成立させていること”そのものにある。もともと50ccベースという極めて小さなエンジンに対し、デスモ機構のような複雑な動弁系を収めるには、限られたスペースの中に精密部品を極限まで詰め込み、なおかつ正確に作動させなければならない。わずかなクリアランスのズレが即トラブルに直結する世界で、それを製品として成立させている事実こそが、SP武川の技術力の高さを物語る。
そして、その結果として得られる性能は明確だ。50ccのノーマルが約2.5ps/8000rpmで頭打ちになるのに対し、この124ccデスモエンジンは19ps以上/13000rpmまで一気に吹け上がる。スペックだけでも別物だが、体感はそれ以上。まさに“異端”と呼ぶにふさわしい存在である。


鬼レスポンス&超パワー。扱いきれないほど速いのに、気持ちいい

エンジンを始動した瞬間から、その違いははっきりと現れる。停車状態で軽くスロットルを開けただけで、まるで直結しているかのように回転が跳ね上がる。「これがデスモか」と思わず口に出るほどの鋭さで、そのフィーリングは往年の250cc2ストレーサーを彷彿させる。
走り出してからはさらに過激だ。軽量アウターローターと乾式クラッチの組み合わせはダイレクトそのもので、最初はクラッチミートに気を遣うものの、ひとたび回し始めればクロスミッションのつながりで4速まで一気にシフトアップ。5速でも余裕で引っ張るトルクがあり、高めのギヤで低回転走行しても意外なほど扱いやすい。
ただし、その鋭すぎるレスポンスゆえに、パーシャルの維持は簡単ではない。わずかな開度変化で出力が変わるため、交通の流れに合わせてスロットルを一定に保つのが地味に難しい。それでも、そのシビアさすら楽しいと感じてしまうのが、このエンジンの魅力だ。
サーキットのようなシチュエーションでは、コーナー立ち上がりでのわずかなスロットル開度から細やかにパワーを引き出し、トラクションを逃さず加速。タイムを狙ううえで、これ以上ないフィーリングを持つ。
そして全開域。これまで試乗した4MINIカスタムの中でも明らかに最速クラスで、ハンドルにしがみついてシフトアップするのが精一杯。10インチ化+ロングホイールベース化された車体でも、なおエンジン性能が上回る。乗りこなすには相当なスキルが必要だ。
デスモドロミック124ccコンプリートエンジン(ワイヤー式乾式クラッチ)

・価格:95万7000円
・適合:12Vモンキー/ゴリラ(Z50J/AB27)
・デスモドロミックツインカム4バルブヘッド搭載
・強制バルブ開閉式で高回転でも安定した動弁制御
・最高出力:19ps以上/約13000rpm
・スーパーストリートアウターローター標準装備
・乾式クラッチ採用
・TAF5速クロスミッション組み込み済み
・キット販売設定あり(ユーザー組み立て対応)
その他のディテール



※こちらの記事はモトチャンプ2026年2月号に掲載されたものです。

