SP武川最高峰スペックに仕上げられたAB27モンキー(いわゆるキャブモンキー)。前後10インチ+ロングスイングアーム化され、頼りなさは皆無だ。

モンキーチューニング史の頂点、“デスモ”という異端

4MINIチューンの歴史は長いが、その中でも頂点として語られる存在がある。スペシャルパーツ武川のデスモドロミックヘッドだ。モンキー用社外パーツとしては“最高傑作”のひとつと称されるこのユニットは、単なる高性能ではなく、構造そのものが異質である。

デスモドロミックといえば、ドゥカティのエンジンで広く知られる機構だ。通常の4ストロークエンジンはバルブスプリングでバルブを閉じるのに対し、デスモはカムで“開けて”“閉じる”強制バルブ開閉式を採用する。これによりバルブスプリングが不要となり、動弁系の抵抗は極めて小さく、高回転域でもバルブの追従性が崩れない。

その高度な機構を4MINIに落とし込んだのが、このSP武川のデスモヘッドだ。ツインカム4バルブに加え、“開”と“閉”で独立したカムプロフィールを持ち、ヘッド内には8本のロッカーアームを高密度に配置。中空カムシャフト+ボールベアリング支持という仕様も含め、もはやミニバイク用パーツの域を完全に超えている。

そして、このエンジンの本質は“成立させていること”そのものにある。もともと50ccベースという極めて小さなエンジンに対し、デスモ機構のような複雑な動弁系を収めるには、限られたスペースの中に精密部品を極限まで詰め込み、なおかつ正確に作動させなければならない。わずかなクリアランスのズレが即トラブルに直結する世界で、それを製品として成立させている事実こそが、SP武川の技術力の高さを物語る。

そして、その結果として得られる性能は明確だ。50ccのノーマルが約2.5ps/8000rpmで頭打ちになるのに対し、この124ccデスモエンジンは19ps以上/13000rpmまで一気に吹け上がる。スペックだけでも別物だが、体感はそれ以上。まさに“異端”と呼ぶにふさわしい存在である。

ノーマルの約2.5ps/8000rpmで頭打ちとなる特性に対し、このデスモエンジンは19ps以上/13000rpmまで到達。数値だけでなく、実際の吹け上がりと加速感でも“別物”と断言できる仕上がりだ。
ヘッド内部には8本のロッカーアームを配置し、吸排気それぞれを“開”と“閉”で個別制御。極めて複雑かつ高精度な構造ながら、バルブ追従性は非常に高く、高回転域でも失速感のない鋭い伸びを実現する。
中空構造のカムシャフトは、バルブ開閉それぞれに専用カム山を持つデスモ専用設計。両端はボールベアリング支持とされ、フリクション低減と高回転安定性を両立している。
コンプリートエンジンには軽量アウターローターと乾式クラッチを標準装備。レスポンスの鋭さとダイレクトな駆動感が特徴で、スロットル操作に対する反応は極めてリニアだ。

鬼レスポンス&超パワー。扱いきれないほど速いのに、気持ちいい

TAF5速クロスミッションを組み込み、加速時の回転落ちを抑えたギヤ比設定を採用。高回転域をキープしたまま一気に加速できるため、このエンジンの性能を余すことなく引き出せる。

エンジンを始動した瞬間から、その違いははっきりと現れる。停車状態で軽くスロットルを開けただけで、まるで直結しているかのように回転が跳ね上がる。「これがデスモか」と思わず口に出るほどの鋭さで、そのフィーリングは往年の250cc2ストレーサーを彷彿させる。

走り出してからはさらに過激だ。軽量アウターローターと乾式クラッチの組み合わせはダイレクトそのもので、最初はクラッチミートに気を遣うものの、ひとたび回し始めればクロスミッションのつながりで4速まで一気にシフトアップ。5速でも余裕で引っ張るトルクがあり、高めのギヤで低回転走行しても意外なほど扱いやすい。

ただし、その鋭すぎるレスポンスゆえに、パーシャルの維持は簡単ではない。わずかな開度変化で出力が変わるため、交通の流れに合わせてスロットルを一定に保つのが地味に難しい。それでも、そのシビアさすら楽しいと感じてしまうのが、このエンジンの魅力だ。

サーキットのようなシチュエーションでは、コーナー立ち上がりでのわずかなスロットル開度から細やかにパワーを引き出し、トラクションを逃さず加速。タイムを狙ううえで、これ以上ないフィーリングを持つ。

そして全開域。これまで試乗した4MINIカスタムの中でも明らかに最速クラスで、ハンドルにしがみついてシフトアップするのが精一杯。10インチ化+ロングホイールベース化された車体でも、なおエンジン性能が上回る。乗りこなすには相当なスキルが必要だ。

デスモドロミック124ccコンプリートエンジン(ワイヤー式乾式クラッチ)

・価格:95万7000円
・適合:12Vモンキー/ゴリラ(Z50J/AB27)
・デスモドロミックツインカム4バルブヘッド搭載
・強制バルブ開閉式で高回転でも安定した動弁制御
・最高出力:19ps以上/約13000rpm
・スーパーストリートアウターローター標準装備
・乾式クラッチ採用
・TAF5速クロスミッション組み込み済み
・キット販売設定あり(ユーザー組み立て対応)

その他のディテール

ハイパワー化に対応するため、車体は10インチホイール化に加えスイングアームを約16cm延長。サスペンションやブレーキも強化され、エンジン性能に負けない車体バランスを確保している。
SP武川製DNメーター(それぞれ速度計、回転計)が並ぶコクピットもレトロでいい。
ヘッドライト下にはオイルクーラーを配備。フロントフォークはテレスコピックタイプに変更され、ブレンボ製4ポットキャリパーで制動力をアップしている。

※こちらの記事はモトチャンプ2026年2月号に掲載されたものです。