「自動車文化を楽しむ」をコンセプトに内外の名車が一堂に会する
2026年4月10日(金)~12日(日)にかけて、ヘリテージカーを中心とした展示・販売イベントの『オートモビル・カウンシル2026』が開催された。このイベントの特色は全国のプロショップが車両を展示するだけでなく、その場で商談ができるところにある。車両に売価がつけられていることで、希少性や人気の度合い、最新の流通相場を理解できるのがユニークなところだ。

2025年は記念すべき10回目ということで、イタリアから20世紀を代表するカーデザイナーであるジョルジェット・ジウジアーロ氏がスペシャルゲストとして来日した。

今年は海外からのゲスト招致こそなかったが、日本のエンスージアストにも馴染み深い人物として、『カーグラフィックTV』の司会で馴染み深い音楽プロデューサー・作曲家の松任谷正隆氏と放送作家・脚本家の小山薫堂氏のほか、フリーアナウンサーの安東弘樹氏と俳優の中田圭祐氏などがゲストに招かれトークショーが開催された。

また、「自動車文化を楽しむ」ことをコンセプトに掲げる『オートモビル・カウンシル』では、アートや音楽などのさまざまな文化との融合を図る一般として「MUSIC MEETS CARS」と銘打ち、ライブやレコードコンサートなどを展開している。
今年のプレシャズライブには、初日にジャズシンガーのマリーン氏、2日目に『ペトロールズ』の歌とギター担当する長岡亮介氏、3日目に『冥想』『マイ・ピュア・レディ』『My Song For You』などの代表曲を持つ歌手の尾崎亜美氏と『サディスティック・ミカ・バンド』にベーシストとして参加し、近年は『SKYE』で活躍する小原 礼氏をゲストに迎えて歌とトークを披露した。
主催者展・その1:
イタリアの名門カロッツェリア「Designed by ピニンファリーナ」
『オートモビル・カウンシル2026』の見どころのひとつが主催者展示だ。例年、ふたつのテーマが用意され、今年は『イタリアの名門カロッツェリア「Designed by ピニンファリーナ」』と『車の粋人が注目する新たな潮流〈レストモッドの世界〉』が選ばれた。それぞれのテーマに沿った車両が特別展示される。

『ピニンファリーナ』の展示に並べられたのは、フェラーリ250GT SWB、フェラーリ330GTC、ランチア・ベータ・モンテカルロ、フェラーリ288GTO、フィアット・アバルト・750レコルド・エンデューロ・ピニンファリーナの5台だ。

これらの車両は『オートモビル・カウンシル2024』の主催者展示で花形を飾る予定だったという。しかし、会期直前にカロッツェリア・ベルトーネで辣腕を振るった天才デザイナーのマルチェロ・ガンディーニ氏が死去したことに伴い、急遽予定を変更して「Designed by ベルトーネ」に差し替えた経緯がある。すなわち、今回の展示は2年越しで実現した待望の主催者展示ということだ(これら車両の詳しくは次回以降にリポートする)。
主催者展・その2:
車の粋人が注目する新たな潮流〈レストモッドの世界〉

もうひとつの主催者展示の『レストモッドの世界』には、ランチア・デルタ・インテグラーレ フトゥリスタ by アモス、デルタ Evo マルティーニ・レーシング、ポルシェ911リイマジンド by シンガー-DLS、プロドライブ P25の4台が並んだ。

「レストモッド」とは、restoreとmodifyのふたつの言葉を掛け合わせた造語だ。旧車に乗りたいが、現代車並みの快適性と信頼性、安全性を確保したいし、可能であれば性能面でも過去を上回って欲しい……贅沢な要求に応えるために生まれたカスタムジャンルである。
もともとレストモッドは戦前型のフォードやシボレーにパフォーマンスの向上のため、シボレー製スモールブロックに代表される戦後型のV8エンジンを搭載し、それに合わせてボディやサスペンションを改造するアメリカのHOTROD文化から自然発生的に生まれたようである。

登場当初、オリジナル至上主義のエンスージアストからは「邪道」として白眼視されていたが、旧車の美しさを現代的なパフォーマンスで楽しむというスタイルがアメリカ以外の地域でも次第に受け入れられるようになり、レストモッドを製作する専門のビルダーが、コンプリートカーを発売するに至って多くのファンに受け入れられ、世界的に人気が高まっている。

多くのレストモッドは、ボディなどの基本骨格をドナーカーから流用する。エンジンの搭載位置や駆動方式を変えることはなく、ボディのフォルムもオリジナルのイメージに沿ったものになる。その一方、パワーユニットは高性能化される場合が多く、それに伴いサスペンションも強化。ヘッドライトなどの機能部品は最新のものに改められ、電子制御系もアップデートされる。

本来は備わらないエアコンやパワステなどの快適装備が製作時に追加されることも珍しくはなく、外観をオリジナルに近づけながら、目に見えない部分にモダナイズを図ったクラシックとモダンの融合……それこそがレストモッドの真髄である。

レストモッドの製作は職人による手作業となるため、その分、車両価格は高額となる。一例を挙げるなら、今回展示されたポルシェ911リイマジンド by シンガー-DLSは3000万円から。25台が生産されたプロドライブP25(ボディシェルはスバル・インプレッサの2ドア廉価グレードのリトナものが流用されたとの噂もある)はイギリスからの輸送費や登録費用は別にして、およそ9000万円になる。

これらはあくまでもベーシックな金額であり、豊富に用意されたオプションを選んでいけばプライスは青天井。まさに選ばれた人間だけがステアリングを握ることを許された究極の趣味車であり、コレクターズアイテムとなる。
優雅で気品があり、知的で精錬された
『CAR GRAPHIC』を創刊した故・小林彰太郎氏の世界観

筆者が『オートモビル・カウンシル』の会場に足を運ぶのは、3年連続・3回目となるが、世の中にカーショーは星の数ほどあれど、それらとは明らかに会場を包み込む空気が違う。すなわち、クルマへのこだわりは強いがオタク的なところは皆無であり、優雅で気品があり、知的で精錬された都会的な雰囲気が会場全体を包んでいる。そして、来場者のほとんどが生活にゆとりのある好事家の紳士淑女なのだ。

そのことは彼らのファッションや立ち居振る舞いからも察せられる。来場者の客層の違い……それこそがJapan Mobility Showや東京オートサロン、ノスタルジック2デイズあたりのイベントとは空気が異なる理由なのだろう(強いていえば、以前リポートした『コンコルソ・デレガンツァ・ジャパン』に雰囲気は似ている)。
しかし、そのような来場者が集まるには、ホストである主催者側にも同レベルの知性と品格が求められる。クレジットを見るとこのイベントの主催はオートモビル・カウンシル実行委員会となっている。

が、特別後援に『CAR GRAPHIC』の文字がある。同誌は自動車評論家・クラシックカーの権威であり、高尚かつ華麗な文体で知られた故・小林彰太郎氏が1962年に創刊した日本を代表する自動車雑誌だ。そのような小林氏が生涯をかけて築き上げたもの、言うなれば『CAR GRAPHIC』的な世界観が『オートモビルカウンシル』の会場全体を覆っている。

そのためなのか、『オートモビルカウンシル』はセレブリティも多く集まるイベントなのだが、金持ちばかりが集まる高級車のオーナーミーティングとは違って、財力の違いによって、無言の圧力で庶民を遠ざけるような排他性がまったくない。

「趣味に対する情熱に貴賎なし」とばかりに、来場者も、スタッフも、出展者も、ゲストも、会場に集まったすべての人が「クルマ好き」という共通点で結びつき、フレンドリーな雰囲気の中で趣味を介した楽しい時間を共有する。エンスージアストにとってなんとも優しく、居心地の良い空間でもあるのだ。それこそが『CAR GRAPHIC』を創刊した小林氏の目指した世界であり、後進のために残してくれた最大の遺産なのかもしれない。
国産車メーカーもブースを出展
イギリスの名門・アルヴィスをはじめ世界の名車が見られる希少な機会

『オートモビルカウンシル』の出展車両は、主催者展示はもちろん各ショップが持ち込んだものを含めて「自動車文化を楽しむ」という観点から自動車黎明期からヤングタイマー、そしてメーカーやインポーターが持ち込んだ最新モデルまで、生産国を問わず、さまざまな車両がバランスよくエントリーしていた。それは自動車の歴史そのものでもある。

その中には小林氏が生前もっとも愛したイギリスの名門・アルヴィスの姿もある。古くから同車を取り扱う明治産業は『オートモビル・カウンシル』以外のカーショーにブースを構えることがほぼなく、このイベントはアルヴィスの実車を見られる数少ないイベントでもあるのだ。

ほかにもブリストルやヒーレー、アルファロメオ、ランチア 、フェラーリ、アルピーヌ、メルセデス、ポルシェなどの歴史的に希少なモデルが展示され、最近ではすっかり高級ヒストリックカーとなったハコスカGT-RやS30型フェアレディZ、サバンナRX-3などの日本のファンにとっては郷愁を誘うクルマの姿もあった。

しかも、それらの多くは無粋なパーテーションで区切られることなく間近で見学できるのだ。これは共通の趣味を持つ「仲間」として来場者を信頼してのことだろう。

さらにはポルシェジャパンやマセラティのような高級車を取り扱うインポーターだけでなく、トヨタやホンダ、三菱といった日本を代表するメーカーが参加していることも注目に値するだろう。

ほんの20~30年前までは「わが社はあくまでも量産車メーカーであって、台数を売ることが至上命題です。自動車文化を語ろうにもわが社の製品に歴史的・文化的な価値なんてありませんよ」などとメーカーの人間が曰っていたことを思えば、ブースを構え、最新モデルと共に誇りを持って自社のコレクションを国産車メーカーが出展する姿には、隔世の感を禁じ得ない。たとえ、それが広報宣伝活動の一環だったとしても、それは日本の自動車産業が文化的に成熟したことの証であり、ひとりのモーターファンとして大変嬉しく思う。

自動車という深遠かつ広大な趣味の世界
車両価格にこだわっていてはその真髄は見えない

以上が『オートモビルカウンシル2026』の筆者の感想込みのあらましだ。あるいは、ひょっとするとみなさんの中には、ここまでのイベントリポートを読んで「どうせ買えないクルマを見ても仕方がない」との感想をお持ちになった方がいるかもしれない。

たしかに、目の前で一生のサラリーに匹敵する金額の高級車が飛ぶように売れるさまを見れば、人によってはやっかみなどから不快に感じることもあるだろうし、日本の経済事情を考えれば、そのような高級車の即売会など浮世離れした金持ちの道楽に過ぎない、との批判があるかもしれない。

しかし、そのような人にはこう問いたい。「君はピラミッドのある世界と、ピラミッドのない世界の、どちらが好きかね」と。ご存知の通りこれは宮﨑駿監督の『風立ちぬ』のカプローニ伯爵のセリフだ。ここで言う「ピラミッド」とは、一部の人間の夢のために弱者が犠牲となった世界の産物である。

富の偏在は今に始まったことではなく昔からあることで、高級車やスポーツカーの多くは金持ちの道楽、すなわち近代における「ピラミッド」そのものなのかもしれない。だが、歴史を改めて振り返ってみて、そのような無駄がなく、実用一辺倒の自動車だけしか存在しない世界が果たして我々の心を本当に豊かにしてくれただろうか?

筆者はモーターファンであると同時に航空ファンやミリタリーファンでもある。航空機やミリタリーの世界では、普通の人間が一生操縦桿を握ることがない戦闘機や爆撃機、個人の所有が認められていない戦車や銃器を趣味の対象としているが、ファンは航空祭や海外の軍事博物館を訪ねたり、模型を作ったり、文献を調べて知識を増やしたりして、あれこれ脳内で妄想しながら結構楽しんでいる。それは鉄道ファンや船舶ファンも同様であろう。

クルマやオートバイはなまじ個人が所有できるものだけに、対象を語るときにどうしても金額が気になってしまうのかもしれない。だが、買える・買えないの価値判断だけで自動車という深遠かつ広大な趣味の世界を論ずるのは、趣味人として些か寂しいことではないだろうか。

日本で『オートモビルカウンシル』のようなイベントが存在することは何よりも幸福なことであるし、クルマ好きならこおような機会をみすみす見逃すのはもったいない話だ。クルマに興味がある人なら『オートモビルカウンシル』は1度は訪れるべきイベントだと思う。
フォトギャラリー:『オートモビルカウンシル2026』
なお、ここまでの画像や、本文にはない画像はページトップの「この記事の画像をもっと見る(57枚)」で見ることができる。どのような車両が展示していたのか、また、当日の雰囲気を画像で楽しんでほしい。




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