設置には、交通量や事故歴など複数の数値化された基準が必要

見通しの悪い交差点などを通りかかった際、「ここに信号機があればいいのに」と感じた経験を持つ人は少なくないだろう。
しかし、実は信号機の新設は、地域住民からの要望や「事故が起きそうで危ない」といった主観的な理由だけですぐに実現するものではないという。
設置にあたっては、警察庁が定めた指針に基づいて、客観的で厳格な条件をクリアする必要があるのだ。
具体的には、交差点を通過する自動車の交通量や、横断する歩行者の数、過去の交通事故の発生履歴といった複数の指標が詳細に数値化されている。
また、ピーク時における1時間あたりの車両や歩行者の通行量も細かく計測され、一定の基準値を超えているかどうかが現場で確認される。
くわえて、隣接する別の信号機との距離も重要な判断材料となり、交通の乱れを防ぐため、市街地では原則として150メートル以上の間隔を空けることが定められている。

これらの条件をすべて満たし、なおかつ信号機を設置することが交通の安全と円滑化に寄与すると各都道府県の公安委員会に判断されて、初めて設置に向けた動きが本格化するしくみになっている。
つまり、単に「交通量が多くて危ないから設置してほしい」という地域の声だけでは、簡単に設置できないのが実情だ。
かえって渋滞や事故を招く? ラウンドアバウトへの注目

だが、条件を満たして信号機を設置すればすべての交通課題が解決するとは限らない。
交通を物理的に止める装置である以上、新たに置くことでかえって渋滞を引き起こしてしまったり、赤信号で停止した車への追突事故を誘発してしまったりするおそれもあるからだ。
また、むやみに設置数を増やすと、周囲の主要な道路網全体の流れまで悪化させてしまうリスクのほか、信号機は設置にかかる初期費用だけでなく、その後の継続的なメンテナンス費用や電気代といった維持管理のコストが発生し続ける点も考慮しなければならない。
そのため、近年はあえて信号を置かない「ラウンドアバウト(環状交差点)」等の新しい選択肢も全国で注目されている。

ラウンドアバウトは、交差点の中心にある円形の地帯を時計回りに通行するしくみであり、信号待ちの無駄な時間がなく、交差点内ではスピードが落ちるため重大な出会い頭の事故も起きにくいというメリットがある。
くわえて、地震や台風による停電時であっても交差点としての機能が完全に停止しないため、災害時の交通確保という観点からも評価されている。
交通量や地域の事情によっては、信号機に頼らないこのような道路設計の方が、結果的に安全でスムーズな交通を実現できるケースも増えているようだ。

このように、信号機の設置は、ただ安全だけを追求するのではなく、円滑な交通の流れや維持管理のバランスを取った緻密な調整の結果として成り立っている。
地域の声や客観的なデータをもとに設置の可否が見極められていることを理解すれば、何気ない交差点の景色の見え方も変わってくるかもしれない。
なぜそこに信号機があるのか、あるいは無いのかという背景に目を向けることで、より安全な運転への意識も高まるはずだ。
