ファッションスクーターをあえてヤンチャに振る!

MACHINE:HONDA TACT OWNER:そらさん

1980年代のスクーターシーンには、実用車とは違う“遊びの乗り物”としての空気があった。ホンダ・タクトもその代表的な存在で、1982年に登場したニ代目では軽快なスタイルと扱いやすさを磨き、1985年には三代目タクトをベースとし、デザイナーブランド「クレージュ」とのコラボ仕様が追加された。

クレージュタクトは、白を基調に淡いブルーやピンクを組み合わせた爽やかなカラーリングが特徴。どちらかといえば女性向けのおしゃれスクーターという立ち位置だったが、その独特の雰囲気が当時の若者にも刺さった。網サンダルを履いて街を流すような、昭和のヤンキー文化と相性が良かったのだ。

オーナーのそらさんが楽しむこの1台も、狙いはまさにそこ。クレージュタクトらしい上品なカラーや丸みのあるシルエットは活かしつつ、チャンバーやカウルの変更で“少しワルい”方向に振っている。かわいいだけじゃない、でもやりすぎでもない。このさじ加減がなんとも絶妙だ。

淡いクレージュカラーにチャンバーを組み合わせた、かわいさとヤンチャ感のミックスが絶妙なタクト。やりすぎないライトカスタム感がいい!

丸みのあるタクトのシルエットはそのままに、Dio AF27系エンジンを換装。見た目だけでなく走りもアップデートされている。

Dio AF27系エンジン換装で走りもアップデート

見た目はクレージュタクトらしさを残しているが、中身はしっかり手が入っている。エンジンはDio AF27系を換装。古いスクーターを現在も楽しむうえで、走りの余裕や補修パーツ面を考えても合理的なメニューだ。

排気系はカメレオンファクトリー製チャンバーを装着。さらに、チャンバーは角度を付けるために曲げ加工を施している。単に取り付けるだけではなく、車体とのバランスや見え方まで意識しているのがポイント。ちょいヤンチャな雰囲気を出しつつ、全体のまとまりを崩していないのがうまい。

足周りは前後にDJ・1R用ホイールを流用。フロントフォークはKN企画製、リヤショックはYSS製へ交換済みで、見た目だけでなく乗り味もリフレッシュされている。スクーターのライトカスタムは、外装だけで雰囲気を作ることもできるけれど、このマシンは走りの部分にもきちんと手が入っているのがいい。

カメレオンファクトリー製のチャンバーを途中でカットし、角度をつけてリメイク。ちょっとヤンチャなカチアゲスタイルに仕上げる。

フロントショックはKN企画製に交換済み。ホイールはDJ・1R用を流用し、足元のスポーティ感を高めている。

ノーマル感を残すから“当時っぽさ”が効いてくる

クレージュらしいパステルラインとロゴがこのモデルの見どころ。カスタムしても、この雰囲気はしっかり残している。

外装は基本的にノーマルカウルを活かしつつ、アンダーカウルとライト周りのカウルはオークションで手に入れた社外製を使用。古いスクーターの場合、当時物パーツや社外外装を探すこと自体が楽しみであり、同時に大変な部分でもある。コツコツ集めた部品で形にしていく感じも、80年代スクーター遊びらしいところだ。

シートは二段タイプを採用し、ハンドル周りにはキタコ製じゃんけんミラーをセット。これがまた、ただの便利パーツではなく“当時っぽい遊び心”として効いている。エアクリーナーボックスは自家塗装、サイドスタンドは自作と、細部にもオーナーの手が入る。

クレージュタクトの爽やかさを残したまま、チャンバーや足周りで昭和ヤンチャな味を加える。言葉にするとシンプルだけど、やりすぎると一気に別モノになってしまう難しい方向性だ。そこを、かわいさと悪さのちょうど真ん中でまとめている。見ていてニヤッとしてしまう人も多いのではないだろうか。

シンプルで見やすい純正メーター。淡いブルーのハンドル周りと小物使いが、クレージュタクトらしい雰囲気を引き立てる。

クリアグリップに、ボンボン小物をぶら下げなどクレージュタクトが支持された世界観を大切にしている。

フロント内側には小物入れを装備。デザインだけでなく、街乗りスクーターとしての使いやすさもタクトの魅力。

HONDA COURRÈGES TACT(クレージュタクト)

ホンダ・クレージュ・タクトは、パリのファッションデザイナー、アンドレ・クレージュ氏がデザインを手がけた女性向けスクーター。1985年5月発売モデルでは、パールホワイト/ピンクとパールホワイト/ブルーの2タイプを設定し、フロアステップやサイドストライプ、スピードメーターの数字までカラーコーディネート。エンジン出力は従来の5.0psから5.4psへ向上し、始動方式もキック式とセル式の併用となった。販売計画は2万台の限定販売で、当時価格は13万9000円だった。

※この記事は月刊モトチャンプ2021年3月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】