ホンダは、北米市場で販売している電気SUV「プロローグ」を2026年モデル限りで終了すると発表した。GMとの共同開発によって誕生した同車は、ホンダの北米電動化戦略を支える重要なモデルだったが、その役割は約3年で幕を閉じることになる。

一見すると「1車種の販売終了」というニュースに過ぎない。しかし、この決断の背景をたどると、見えてくるのはホンダが進める電動化戦略そのものの変化である。

プロローグはGMのEV専用プラットフォーム「Ultium」をベースに開発された北米専用モデルだ。ホンダにとっては、自社開発EVが本格展開されるまでの“つなぎ役”という位置付けで2024年に投入された。発売後は一定の販売実績を残したものの、EV市場全体の成長鈍化や市場環境の変化を受け、当初想定していた役割を終えたと判断したようだ。

重要なのは、今回の販売終了が「EV撤退」を意味するわけではないという点である。むしろホンダは現在、EV一辺倒ではなく、市場ごとの需要に応じてハイブリッドとEVを最適に組み合わせる、より現実的な電動化戦略へ軸足を移しつつある。
数年前まで、多くのメーカーは2030年頃を見据えてEVへの急速な移行を掲げていた。しかし近年は世界各地でEV需要の伸びが鈍化し、充電インフラや販売価格など地域ごとの事情も浮き彫りになっている。こうした環境変化を受け、各社は戦略を柔軟に見直し始めた。ホンダもその例外ではない。
現在、ホンダが当面の主力に据えるのは「e:HEV」である。同社は次世代ハイブリッドシステムの開発を進めるとともに、開発コストや開発期間の大幅な削減も掲げている。電動化を進めながらも、収益性との両立を図る姿勢が鮮明になってきた。
一方で、自社開発EVを諦めたわけではない。CESで披露した「Honda 0 Series」を軸とする次世代EV群や、新開発EV専用プラットフォーム、独自の車載OS「ASIMO OS」の開発は引き続き進められている。つまり、GMとの協業モデルから自社開発EVへの橋渡しが、プロローグ本来の役目だったと見ることもできる。

日本市場への影響も小さくない。当面はプレリュードやCR-V、今後登場する新型SUVなどでもe:HEVが中心的なパワートレインであり続ける可能性が高い。一方、自社開発EVについては市場動向を見極めながら段階的に投入されることになりそうだ。EVかハイブリッドかという二者択一ではなく、市場ごとに最適な電動車を提供するという考え方が、今後のホンダの基本戦略になっていくのである。
プロローグの販売終了は、1台のモデルが姿を消すという出来事以上の意味を持つ。それは、急速なEVシフトから現実的な電動化へと舵を切るホンダの新たな出発点でもある。ハイブリッドで収益基盤を固めながら、自社開発EVで次の時代を狙う――。ホンダの電動化戦略は、今まさに第二章へ入りつつあるのである。