bZ4Xが売れている

トヨタbZ4X Z(FWD)車両価格:550万円

電気自動車(BEV)は、自宅で充電できないと厳しい──筆者はずっとそう思っていた。

ところが、1週間で約480kmを走ったトヨタbZ4Xは、その考えを少し変えてしまった。

実電費は9.1km/kWh。返却時点で479.7kmを走っていながら、バッテリー残量はまだ25%、メーターが示す航続可能距離は128kmも残っていた。

これだけ走れて、150kWの急速充電に対応するなら、自宅に充電設備がなくても、月に数回、出先で急速充電すればいいのではないか?つまり、これまでBEVを最初からショッピングリストから外していたマンション住まいの人にも、bZ4Xは現実的な選択肢になるのではないか。

しかも国のCEV補助金は130万円。

いまbZ4Xが売れている理由を探ってみると、そこには大幅改良によって「普通に使えるBEV」へと変貌したbZ4Xの姿が見えてきた。

FWDが搭載するフロントモーターの最高出力は前型の150kWから165kWへと15kWアップ。

前置きが長くなった。

いま、トヨタbZ4Xが売れている。bZ4Xの2026年7月の単月登録台数は2766台。1~6月の上半期累計では1万3777台を記録しており、7月分まで加えると今年だけですでに1万6543台が登録されたことになる。

今年上半期の登録車販売ランキングでは堂々の27位。スバル・フォレスター(1万3415台)、ホンダZR-V(1万924台)、日産エクストレイル(1万787台)よりも売れているのだ。

なぜそんなに売れているのか? bZ4Xを借り出して1週間過ごしてみた。試乗したグレードはZ(FWD・車両本体価格550万円)である。

全長×全幅×全高:4690mm×1860mm×1650mm ホイールベース:2850mm

bZ4Xは(……何年経っても少々しっくりこないネーミングだが)、2022年5月に販売を開始し、2025年10月に大規模な商品改良を受けた。基本的なボディ骨格こそ従来型を踏襲するが、中身はまさに一新された。

・バッテリー容量:71.4kWh → 74.69kWh
・モーター最高出力:150kW(204ps) → 165kW(227ps)
eアクスルを刷新し、パワー半導体にSiC(シリコンカーバイド)を採用することで電力損失を4割削減した。その結果、
・WLTC交流電力量消費率:128Wh/km → 113Wh/km

となった。これだとピンと来づらいので、電費(1kWhで何km走れるか)に換算すると、
・約 7.81 km/kWh → 約8.85 km/kWh

となる。結果として、カタログの一充電走行距離は 512km 746km へと驚異的な伸びを見せた。

借り出した時のバッテリー残量は100%、航続可能距離は477kmだった。

ちなみに、話題を集めるBYDの軽EV「RACCO(ラッコ)」のモード電費が8.06km/kWhである。そう考えると、ミドルサイズSUVであるbZ4Xの8.85km/kWh(ベースグレードのG FWDならさらに良い9.01km/kWh バッテリー容量57.72kWh 航続距離544km)という電費がいかに優秀であるかがわかる。

この圧倒的な電費の良さが、売れている理由の大きなひとつだろう。

実電費は9.1km/kWh!

ディスプレイオーディオは14インチに拡大された。

今回、1週間の試乗で479.7kmを走行し、メーター上の実電費は9.1km/kWhを記録した。返却時のバッテリー残量は25%で、残り航続可能距離は128km。

なんと、カタログのモード電費を実走で上回ってしまったのだ。もちろん、常時オートエアコンON、ドライブモードはNORMALという日常と変わらない条件である。

このまま同じような条件で走れたと仮定すれば、メーター表示上では約608kmを走れる計算になる。ざっくり満充電で600km走るとしよう。

日常運用で、バッテリー残量が20%になったタイミングで急速充電を行うと考える。

通常、バッテリー保護の観点から急速充電は80%程度で切り上げるのがスマートだ。

となると、普段使いの運用範囲は「SOC(バッテリー残量)80% → 20% → 急速充電で80%に戻す」というサイクルになる。

これを距離に換算すると、「航続距離480km(80%) → 120km(20%)で急速充電 → 480km(80%)」だ。つまり、今回の実電費を基準にすれば、SOC80%から20%までの60%分だけでも約360km走れる計算になる。

月間走行距離が700km前後の方なら、「月に2回、出先で急速充電するだけ」で何ら支障なく運用できる計算だ。

150kWの急速充電能力が生きる

自宅駐車場に駐めたbZ4X。3kWの普通充電ができるようにしてあるが、今回はあえて充電しなかった。

bZ4Xの急速充電受入能力は最大150kW。

輸入車にはさらに高いモデルもある(例えばポルシェ・タイカンやアウディ e-tron GTは最大270kW)が、国内でも150kW級のCHAdeMO急速充電器が普及し始めており日本の環境ではこれで十二分だ。

トヨタの公表データによれば、「約28分で10%→80%の充電が可能」とされている。

今回はスケジュールの都合で急速充電スタンドでのテストは見送ったが、150kW急速充電器を使えば、30分間で残量20%から80%前後までしっかりリカバリーできるはずだ。もちろん、90kWや50kW充電器ではここまで入らないし、150kW充電器でも2台同時充電時には出力が分散されるため「ベストエフォート」ではある。

だが、これだけの受入性能と実電費があれば、自宅に充電設備がないマンション暮らしの人でも、bZ4Xを何ら不自由なく使いこなせる。

気になる充電代(電気代)は?

今回の試乗は高速道路6割、市街地4割程度だった。

気になるコストはどうだろうか。

まずは東京電力管内の一般家庭向け電気料金(スタンダードSプラン)で考えてみる。

1kWhあたりの基本電力量料金は、
・第1段階(~120kWh):29.80 円/kWh
・第2段階(120kWh~300kWh):36.40 円/kWh
・第3段階(300kWh超~):40.49 円/kWh

燃料費調整額などを考慮して少し高めの「40円/kWh」とし、モード電費(8.85km/kWh)で計算すると、走行コストは 4.5/km となる。

これをレギュラーガソリン(160円/Lと仮定)の燃費に換算すると、 35.5 km/L に相当する。ガソリン車よりも遥かに燃料代が安いからこそ、「BEVは自宅の普通充電で運用するのがセオリー」と言われてきたわけだ。

では、自宅充電ができないマンション住まいの人が外の急速充電メインで運用した場合はどうなるか。

例えば、一般的な「e-Mobility Power(急速充電カードプラン)」を利用した場合、
・月額基本料金:4,180円
・都度利用料金:急速27.5円/分(1回30分まで)
となる。

月に2回、急速充電(30分×2回)を行うとすると、

4,180円 +(27.5円 × 30分 × 2回)= 5,830 /

bZ4X(バッテリー容量74.69kWh)で残量20%(約14.9kWh)から80%(約59.8kWh)まで給電すると、差分は44.9kWh。高出力充電のロスや制御を考慮して少し控えめに「1回で40kWh給電(2回で80kWh)」と仮定しよう。

80kWhの電力を得るのに5,830円かかるため、1kWhあたりの実質単価は約72.9円/kWh。

走行コストは 72.9円 ÷ 8.85km/kWh = 8.24/km となり、自宅充電の約2倍になってしまう。

それでも、ガソリン燃費に換算すれば 19.4km/L の計算となり、同等サイズのガソリン車よりは十分に経済的だ。

基本料金無料の「TEEMO」という選択肢

ここで注目したいのが「TEEMO(ティーモ)」の存在だ。TEEMOはトヨタ(トヨタコネクティッド)が提供する充電サービスで、なんと月額基本料金が無料となっている。

150kW以上の急速充電を利用する場合、都度料金(80円/分)のみで済む。

月に30分×2回の急速充電を行った場合、かかる費用は 80円 × 30分 × 2回 = 4,800 / だ。

なお、TEEMOは充電器の出力によって料金が異なり、50kW以下なら40円/分、50kW超~150kW未満なら60円/分、150kW以上が80円/分。毎回150kW器を使う必要がなければ、実際の充電コストはさらに抑えることができる。

数字が並んだので、月80kWh(走行約700km分)の充電コストをわかりやすくまとめてみよう。

完全自宅で普通充電:約 3,200 円/月(ガソリン換算:35.5 km/L
TEEMOで急速充電:4,800 円/月(ガソリン換算:23.6 km/L
e-Mobility Powerで急速充電:5,830 円/月(ガソリン換算:19.4 km/L

自宅充電ができず外の急速充電だけに頼ったとしても、ガソリン車と比べれば十分に競争力のあるランニングコストに収まる。しかも現在トヨタは、新型bZ4X購入者を対象に「トヨタのお店で充電料金1年間無料キャンペーン」を実施している。対象となるTEEMO充電器なら、2回、130分までの充電が1年間無料になる。

おや? ここまで読んできた人なら気づいたかもしれない。今回試算した月700km程度の使い方なら、必要な急速充電はちょうど月2回だった。つまり条件がうまく合えば、「マンション住まいで自宅充電がなくても、最初の1年間は普段使いに必要な充電をほぼこの無料枠でまかなえる可能性がある」これはかなり強烈だ。

最大の引き金は「補助金」というマジック

上から
トヨタ・ハリアー 全長×全幅×全高:4740mm×1855mm×1660mm ホイールベース:2690mm
bZ4X 全長×全幅×全高:4690mm×1860mm×1650mm ホイールベース:2850mm
RAV4 全長×全幅×全高:4600mm×1855mm×1685mm ホイールベース:2690mm

そして、bZ4Xがこれほど爆発的に売れている最大の要因は、やはり「補助金」を含めた圧倒的なお買い得感だろう。

2026年現在、国のCEV補助金は最大130万円が適用される。

競合・関連モデルと車両本体価格(税込)を比べてみる。
・bZ4X Z(FWD):550万円
・ハリアー Z(FF):418万円
・RAV4 Z ハイブリッド(E-Four):490万円

ところが、130万円のCEV補助金を差し引くと、
bZ4X Z(FWD)実質価格420万円
・ハリアー Z(FF):418万円
・RAV4 Z ハイブリッド(E-Four):490万円

なんと、ハリアーZとほぼ同額、RAV4ハイブリッドよりも70万円以上安く買えてしまう。

さらに東京都では、2026年度からEV購入への助成が大幅に拡充された。トヨタ車の場合、メーカー別上乗せだけで60万円が設定され、基本助成や給電機能、再生可能エネルギーの利用、V2Hなどの条件を満たすことで助成額はさらに増える。条件次第では最大130万円に達する。

国のCEV補助金130万円と合わせれば、最大で260万円。ただし東京都の助成額は再エネ電力や設備などの条件によって異なるため、誰でも260万円の補助を受けられるわけではない。

すべての上乗せ条件を満たした場合、計算上は550万円-130万円-130万円=290万円。bZ4X Z(FWD)が300万円を切る計算になる。290万円といえば、上級コンパクトSUVである「カローラクロス HYBRID Z(約361万円・オプション込)」を検討している人の予算枠にすっぽり収まるどころか、下回る価格だ。

BEVは、自宅で充電できる人が買うクルマ。そんな常識は、そろそろ過去のものになるのかもしれない。少なくとも今回、bZ4Xと約480kmを過ごして、筆者のなかにあった「マンション住まいならBEVは無理」という思い込みは、かなり薄くなった。

トヨタbZ4X Z(FWD)
全長×全幅×全高:4690mm×1860mm×1650mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:1880kg(1920kg)
サスペンション:Fストラット式/Rダブルウィッシュボーン式
フロントモーター
2XM型交流同期モーター
定格出力:64kW
最高出力:167kW(227ps)
最大トルク:268Nm

駆動用モーター
リチウムイオン電池
総電圧:391.0V
容量:191Ah
個数:104
総電力量:74.69kWh

WLTC交流電力量消費率:113Wh/km
 市街地モード96Wh/km
 郊外モード106Wh/km
 高速道路モード126Wh/km
一充電走行距離746km
車両価格:550万円