ユーティリティ面はワゴンとしても使えるフィットが圧勝




新型フィットはグレード体系と名称が一新され、ベースグレードの名称は“BASIC”から“X”へ、主力の“HOME”は“Z”へと改められ、最上級グレードだった“リュクス”は廃止されてハイブリッド専用の“RS”へと統合された。
新たにRSグレード譲りのスポーティなエクステリアデザインが与えられた新生Zグレードはハイブリッド、ガソリンモデルともに全長が数十ミリ延長されたが、室内や荷室の基本寸法は全グレード共通だ。
フィットの全長と全幅はマツダ2と同一数値となるが、後席の膝まわりはフィットの方が明らかに広い。リヤハッチまでほぼ直線的なルーフラインを描くフィットに対し、マツダ2は運転席をピークに強くスラントする形状となっており後席頭上空間もフィットに軍配が上がる。後席開口面積が広いフィットの方が乗降性も優位となるが、マツダ2も見た目ほどには乗降性は悪くない。
両者はルーフ形状やリヤハッチの傾斜角の違いにより荷室の使い勝手にも大きな差がある。両車の荷室寸法はフィットが長さ660mm×幅1010mm×高さ870mm、マツダ2が700mm×1000mm×730mmだ。荷室面積にはほとんど差はないが、荷室容量はフィットが308リットル、マツダ2が280リットルとやや大きな差がある。リヤハッチの開口部が広いのもフィットの方だ。
さらにフィットはセンタータンクレイアウトとダイブダウンシート機構により、後席格納時の床面段差が小さく抑えられるうえ、座面を跳ね上げるチップアップ機構も備わる。小柄な体格の人であればフィットで車中泊も無理なく行なえるだろう。マツダ2とほぼ同じボディサイズでありながら、ワゴンとしての利用も可能な高いスペース効率と機能性がフィットの特徴だ。
それに対して、リヤがシェイプダウンされたデザインのマツダ2はスポーティなスタイリングが特徴だが、ユーティリティ面ではパーソナルカーの域を出ない。後席居住性と荷室の使い勝手といった実用面ではフィットが明確なアドバンテージを持っている。
ホンダ フィット Z
ボディサイズ=全長4080mm×全幅1695mm×全高1540mm
ホイールベース=2530mm
車両重量=1100kg
タイヤサイズ=185/60R15(前後)
マツダ 2 15BD iSelection II
ボディサイズ=全長4080mm×全幅1695mm×全高1525mm
ホイールベース=2570mm
車両重量=1100kg
タイヤサイズ=185/60R16(前後)
マツダ2の4気筒ガソリンエンジンは意外なほど燃費性能が優秀


エンジンはどちらも1.5Lの直列4気筒であり、エンジンスペックもよく似ている。トランスミッションはフィットがCVTであるのに対し、マツダ2は6速ATだ。
駆動伝達効率の面ではCVTのフィットが有利と言えそうだが、両者のWLTCモード平均燃費を比較すると、フィットの18.1km/L(Zグレード)に対し、マツダ2が20.3km/L(15BDグレード)となる。全速度域で燃費はマツダ2の方が優れ、とりわけ市街地燃費では3.5km/Lもの差を付けてフィットを上回っている。
この違いはエンジンの燃焼制御の差が主要因と言えるだろう。両車のエンジンは実効圧縮比を膨張比よりも低くすることで、より多くの膨張エネルギーを最大限取り出すミラーサイクル(アトキンソンサイクル)を採用しているが、2021年6月の改良モデルからマツダ2に搭載されるエンジンの幾何学的圧縮比は14:1であるのに対し、フィットはごく平均的な10.6:1だ。
斜め渦燃焼も取り入れたマツダ2のP5-VPS型直噴エンジンは吸気側に電動式、排気側に油圧式のバルブタイミング可変機構を備えており、高い圧縮比を精密なバルブ制御で緻密にコントロールすることで、より広い領域でミラーサイクル運転を可能としている。
ピークパワーではフィットに及ばないものの、最大トルク発生回転数はマツダ2の方が800rpmも低く扱いやすい。マツダ2に搭載される4気筒エンジンは出力特性と燃費性能、ドライバビリティのバランスでクラス随一と言えるだろう。
さらに、マツダ2に用意される2種のスポーツグレードでは6速MTが選択できるうえ、ハイオク仕様とすることで最高出力116ps/最大トルク149Nmまでスペックを高めた6速MT専用の競技グレード“15MB”も用意されている。
フルハイブリッドシステムを持たないマツダは、このクラスをガソリンエンジンの性能のみで戦わなければならない立場にあった。対するホンダは、ハイブリッドモデルに注力せざるを得ない。こうした立場と戦略の違いがガソリンモデルのスペック差として表れている。
ホンダ フィット Z
エンジン形式=直列4気筒ガソリンエンジン
排気量=1496cc
最高出力=118ps/6600rpm
最大トルク=142Nm/4300rpm
トランスミッション=CVT
駆動方式=2WD(FF)
マツダ 2 15BD iSelection II
エンジン形式=直列4気筒ガソリンエンジン
排気量=1496cc
最高出力=110ps/6000rpm
最大トルク=142Nm/3500rpm
トランスミッション=6速AT
駆動方式=2WD(FF)
今や希少なスポーツハッチ! 現行型マツダ2は8月末で生産終了


フィット“Z”の新車価格は214万5000円、マツダ2“15BD iセレクションII”は199万5400円だ。
フィットは旧HOMEグレードから10万円近い値上げとなっているが、外観変更に加えてRSグレードと同じ本革巻き3本スポークステアリングを新採用。フロントおよびフロントサイドガラスはUV・IRカットガラスに変更されるとともに、シートヒーターも標準装備となっており、値上げ額に十分見合う改良と言えそうだ。
一方、マツダ2の“15BD iセレクションII”は快適装備を充実させた買い得グレードとなる。本革巻きステアリングに加えシートヒーター&ステアリングヒーターが標準装備であり、UV・IRカットガラスが標準だ。フィットではオプション設定となるブラインドスポットモニターや360度ビューモニターも標準で備わっており、装備の面ではフィットに引けを取らない。
15BDグレードは非電動パーキング式のACCが6万6000円のオプション設定となっているが、それを加えてもフィットより安価だ。両車のガソリンモデルの総括を述べると、ユーティリティではフィットが圧倒的に優位であり、燃費性能とスポーツ性ではマツダ2に分がある。
後席の狭さと電子プラットフォームの古さに目をつむれば、4気筒ガソリンエンジンを6速ATや6速MTで操れるコンパクトスポーツハッチのマツダ2は、電動化と合理化が著しいこの時代にあって奇跡のような存在と言ってよいだろう。
しかし、こうしたクルマの購入層が市場全体から見て少数派であることは、ガソリンモデルのフィットRSが廃止された事実が物語る。
そのマツダ2も8月末で生産を終える。次期型はボディサイズやコンセプトこそ継承されるとしても、パワートレインは時代相応の変化を遂げるだろう。純ガソリンエンジンをATやMTで走らせる、昔ながらのスポーツハッチスタイルのマツダ2は現行型限りとなりそうだ。
車両本体価格
ホンダ フィット Z:214万5000円
マツダ 2 15BD i Selection II:199万5400円
