置きイベ仕込みの極低フォルムはそのままに…

珍車スタイルに本気のドリフトスペックを凝縮!

ラグジュアリーなEセグメントボディに3.7L V6のVQ37VHRを搭載するY51型フーガ。そのOEMモデルとして三菱から販売されたのがプラウディアだ。わずか552台しか登録されていないという希少性もあり、今や街中で見かけることはほとんどない。

そんなプラウディアに惹かれながらも、実車を手に入れることができなかったオーナーの“かしまし”さん。そこで選んだのが、フーガ370GTをベースにプラウディアを再現するという大胆な手法だった。

ベース車にはOEM元となったY51前期型をチョイス。縦フィン形状の専用フロントグリルをはじめ、リヤエンブレム、エンジンフードカバー、フロアマット、スマートキーまでプラウディア純正品へと交換している。専用マルチモニターだけは入手困難だったため見送ったものの、それ以外は細部までこだわったフルコンプリート仕様だ。

ちなみに後期型フーガをベースにプラウディア化する場合、フェンダーやボンネット、ヘッドライトまで交換する必要がある。その点でも、前期型はベース車として圧倒的に有利なのである。

さらにフロントにはフーガ・タイプS専用バンパーを組み合わせているため、完成したのは実在しない“プラウディア・タイプS”。リヤはテールレンズが共通なので、エンブレムを交換するだけで違和感なく仕上げられる。ボディカラーにはBNR32 GT-R純正色のクランベリーレッドパールを採用してオールペイント。

その姿は本物と見紛うほどで、国内では「何のクルマ?」と聞かれることもしばしば。海外からも「なぜ三菱エンブレムなのか?」といったDMが届くというから、その擬態ぶりは相当なものだ。

ただし、このマシンの魅力は希少車への“擬態”だけではない。

もともとはスタンス系イベントを中心に楽しんでいたかしましさんだったが、センスブランドとOS技研のコラボによるフーガ用機械式LSDが登場したことをきっかけに、約10年ぶりにドリフトへ復帰。置きイベントで作り込んだ極低スタイルを維持したまま、走りにも妥協しないドリフトマシンへと進化させていったのである。

足まわりはT-DEMAND製プロダンパーを軸に構築。スプリングレートはフロント100kg/mm、リヤ24kg/mmというハードな設定だ。さらにV36用アッパーアームやショートナックルを投入し、アーチ上げやフロントメンバー上げまで敢行。生足のまま極限まで車高を落とし、スタンスとドリフト性能を両立させている。

19インチホイールに合わせてフェンダーアーチまで作り込んでいるが、ドリフト時には前後10.5J×18+15のエンケイRPF1を装着。まずは18インチで自在に振り回せるスキルを身につけ、最終的には19インチのままドリドレへのエントリーを目標としている。

ブレーキにはフーガ・タイプS純正のフロント4ポット&リヤ2ポット対向キャリパーを採用。そこへ三菱仕様のキャリパーカバーを組み合わせている。本来のプラウディアは片押しキャリパーなので、ここにも“存在しない高性能版プラウディア”という遊び心が込められている。

リヤにはヒッチメンバーも備えるが、極端なローダウンゆえにヒッチキャリアは実用できなかったという。見た目と実用性のせめぎ合いも、このクルマならではのエピソードだ。

パワーユニットはVQ37VHRを基本的にノーマルのまま活かし、ドリフト走行で重要となる冷却系を重点的に強化。パワステクーラーを2基掛けとし、オイルクーラーとATFクーラーも追加している。

さらにスイッチ操作で間欠噴射できるウォータースプレーまで装備。連続走行時の熱対策を徹底し、長時間のドリフトにも対応できる仕様へと仕上げている。

そして最大のトピックが、トランスミッションの5速MT化だ。JZX100用のR154型ミッションをスワップし、500ps台まで対応できるキャパシティとコストパフォーマンスを両立。本格的なドリフト走行を見据えた駆動系を構築している。

脱着式ステアリングの導入に合わせて右側のパドルシフトは撤去しているが、高級スポーティセダンらしい雰囲気を残すため、左側だけはあえて残した。実際のシフト操作は、もちろんMTのシフトレバーで行なう。

インテリアには、仲間がワンオフ製作したサイドバー付きロールケージを譲り受けて装着。運転席にはホールド性を重視したブリッド・ゼロCS、助手席には乗降性に優れるディーゴ・タイプRをセットしている。

ファミリーセダンとしての面影を残しながらも、コクピットは完全に走りのための空間へと変貌した。

サイドブレーキが使えないフーガでのドリフトには、当初かなり苦戦したというかしましさん。そこでVQ搭載車限定のドリフトイベントにも足を運び、他車への同乗を繰り返しながらステアリング操作やアクセルワーク、進入スピードなどを研究。現在も走り込みを続け、ドライビングスキルを磨いている。

超希少なプラウディアの姿を再現し、スタンスシーンで磨き上げた極低フォルムを維持したまま、本気で横を向けられるドリフトマシンへ。

単なるOEM車レプリカでもなければ、単なるドリフトマシンでもない。**見た目の美学と走りの性能、そのどちらも妥協せず突き詰めたからこそ生まれた、唯一無二の“プラウディア・タイプS”なのである。

PHOTO:南井浩孝(Hirotaka MINAI)/REPORT:村田純也(Junya MURATA)

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