パワーアップだけがチューニングじゃない
最新制御で名機1JZを若返らせる
JZX100チェイサーの中でも、JTCC参戦を記念してTRDが手掛けた希少なコンプリートカー『TRDスポーツ・ツアラーV』。4年間で2924台が生産されたこの一台と20年近く付き合ってきたオーナーのふうさんは、走行2万km台という極上車を手に入れて以来、ノーマルの良さを味わいながら、少しずつチューニングを重ねてきた。

かつては速さを求めた時期もあったが、純正部品の生産終了が増え、家族を乗せる機会も増えたことで、その方向性は次第に変化。TRD×レカロのフルバケットシートも、チャイルドシートの使い勝手を考えて純正へ戻したことで、改めてJZX100本来の完成度を実感したという。
現在は、希少なTRDスポーツの雰囲気を残した「ノーマル+α」をテーマに、長く快適に乗り続けられるストリート仕様を追求している。


エクステリアも、その考え方に沿った仕上がりだ。TRDスポーツ専用バンパーにはインターセプター製リップスポイラーを組み合わせ、インタークーラーはDIYで純正置き換えタイプからHKS前置きタイプへ変更。以前装着していたカーボンボンネットは純正へ戻し、現在も大切に保管している。リヤにはTRDスポーツ専用のアルミ製ウイングを残し、希少車ならではの素性を生かしたアダルトなスタイルに仕上げられている。


パワーユニットは、1JZ-GTEにかつて一世を風靡したアミューズのGT30プロタービンキットを組み合わせる。タービン交換時にはシリンダーヘッドのみをオーバーホールし、ピークパワーだけでなく耐久性も重視。GT30プロを選んだ理由も、無理なく性能を高められることに加え、純正然としたエンジンルームを維持できる点にある。10万kmを走破した現在も美しく保たれたエンジンルームからは、オーナーの愛情が伝わってくる。

そんな愛機に経年変化が現れ始めたのが近年のこと。ブーストハンチングなどによって本来の気持ち良さが失われてきたため、インパクトへ持ち込み、制御系を一新した。
中心となるのは、純正ECUを撤去して単独制御を可能とするハルテックの最新フルコン『Nexus S3』。高精度センサーやR35用イグニッションコイル、高効率インジェクターも投入し、古くなった制御系や補機類を現代化することで、経年劣化によるトラブルリスクの低減も図った。低減も図った。

ブースト圧は、耐久性を考慮して従来と同じ1.1キロを維持し、最高出力406ps、最大トルク50.79kgmを発揮。ピーク値こそ以前と大きく変わらないものの、中間域のレスポンスやトルク特性は大幅に改善され、全域で扱いやすいエンジンへと生まれ変わった。さらに、燃焼効率が高まったことで、アミューズ製マフラーはそのままながら排気ガスの臭いも減少。エキゾーストノートまで穏やかになったというのも、最新制御による興味深い変化だ。


ブレーキは、まだノーマルだった頃に動物の飛び出しを避けるため、フルブレーキングした経験をきっかけに強化。フロントにはTRD製4ポット、リヤにはJZA80用2ポットキャリパーを投入し、ブレーキマスターもJZA80用へ交換することで、十分な制動力を確保する。



インテリアも派手な演出は避け、純正の雰囲気を重視。フルスケールメーターを備えながら、ドライバーの視界に入る追加メーターはAピラーのブースト計程度に抑えている。その他のメーター類はセンターコンソールへスマートに収め、EVCに至っては灰皿内へ収納するなど、大人のストリートチューンらしい作り込みを徹底している。

大幅なパワーアップを狙うのではなく、20年以上前に設計された名車へ現代の制御技術を投入することで、本来の魅力を維持しながら信頼性と扱いやすさを引き上げる。将来は息子へ託すことも考えているという、このTRDスポーツ・ツアラーV。ネオクラシック世代のチューンドカーを未来へ残していくための、新たなアップデート術を体現する一台なのである。
PHOTO:南井浩孝(Hirotaka MINAI)/REPORT:村田純也(Junya MURATA)
●取材協力:インパクト 京都府久世郡久御山町野村村東91-3 TEL:075-754-7405
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