普段は快適なファミリーセダン!

週末は富士を駆ける戦闘旅客機

4人家族の日常を支えるファミリーカーでありながら、毎月サーキットへ持ち込み、タイムアタックも楽しむ。オーナーのなかしんさんが掲げるコンセプトは、まさに「戦闘旅客機」だ。純正電動シートを残すなど、家族で快適に使える環境には手を加えず、その一方で富士スピードウェイを本気で攻められる走行性能を追求している。

まず重視したのが、1.8t近い車重を確実に受け止めるブレーキ性能だ。フロントにはエンドレスの鍛造モノブロックキャリパー「MONO6ラリー」と370mmの2ピースローターを投入し、パッドにはMX72プラスを組み合わせる。

リヤはあえて純正キャリパー+MX72プラスとすることで、前後の制動バランスや耐フェード性を煮詰め、富士のストレートエンドでも安心して踏み切れる制動力を確保した。

VR30DDTTはエンジン本体に手を加えることなく、Z1モータースポーツのボルトオンタービン「VRX70B」を投入。ボールベアリング式でレスポンスにも優れ、最大ブースト圧1.65キロで約640psを発揮する。そのパワーに対応するため、低圧/高圧燃料ポンプと直噴インジェクターはいずれもAMS製の大容量品へ交換し、燃料供給能力もしっかりと確保されている。

そして、サーキットでVR30DDTTの性能を安定して引き出すために欠かせなかったのが、冷却系の強化だ。AMS製の水冷インタークーラーとヒートエクスチェンジャーに加え、冷却水量を約6L増加させる容量アップサブタンクまで導入。

特にサブタンクの効果は大きく、吸気温度の上昇によるセーフ制御を抑え、クーリングを挟みながら富士を連続周回できる環境を構築した。最終コーナーからの立ち上がり加速にも、明確な違いが現れるという。

エンジンマネージメントにはECU-TEKを使用し、シードレーシングの香田さんが担当。ただし、現在の約640ps仕様では、純正エアフロセンサーや圧力センサーの計測範囲がネックとなっており、現状は暫定的なセットアップに留まっている。

今後は大径エアフロ化に合わせてエアフロマップを新規製作し、より高い圧力まで計測できるセンサーも投入。VRX70B本来の性能を引き出す、さらに緻密なセッティングへと進化させる予定だ。

足回りには、アラゴスタをベースとしたマインズセッティングの車高調を採用。スプリングレートはフロント14kg/mm、リヤ8kg/mmとし、フロントにしっかりと荷重を乗せて旋回させながら、リヤの安定感を失わないセットアップを追求している。

さらに、高速域での安定性を高めるため、空力にも着目。なかしんさんがDIYで製作したアルミ製リヤディフューザーによって、社外マフラー装着時に乱れやすい床下の空気を整流したところ、高速域で感じていたリヤのふらつきが解消。コーナー進入時のブレーキングまで安定するほどの効果を体感したという。リヤにはエスプリ製GTウイングも装着し、法規に適合させるため、両端を短縮加工している。

エキゾーストには、センターパイプから交換する柿本改「クラスKR」を装着。足元にはワンオフで製作したBCフォージドKL01を組み合わせ、フロント9.5J、リヤ10JにアドバンA052の255/35R19、275/35R19を履く。日産純正センターキャップまで装着できるよう製作されたホイールも、純正然としたスタイルを崩さないためのこだわりだ。

ちなみに富士スピードウェイを走る際も、ATはパドル操作ではなく通常のDレンジを使用。パドル操作では変速時のギクシャク感がタイム短縮につながらないという判断から、クルマ側の変速制御に任せて走る。

また、サーキット仕様では定番となるバケットシートも装着せず、ファミリーユースに欠かせない純正電動シートを維持している。

508psのブーストアップ仕様では、富士で1分58秒45を記録。そして約640psまで進化した現在、次なる目標は1分56秒台だ。エアフロと圧力センサーをアップデートして制御を煮詰めれば、さらなる加速性能も期待できる。

家族4人で快適に出掛けられる日常性を一切捨てることなく、冷却、制動、サスペンション、空力、そしてパワーを磨き込む。なかしんさんの400Rは、「ファミリーカーでどこまで速くなれるか」を本気で追求した、異色のタイムアタッカーなのである。

●取材協力:シードレーシング 千葉県柏市藤ヶ谷562-8 TEL:04-7138-6340

「GT-RじゃなくタイプMを選んだ男の35年間」究極のHCR32を目指した熱きチューニングストーリー

新車購入から35年。富士スピードウェイでリミッターに当たった瞬間から始まったチューニングは、RB20改2.3L+GT2535タービンによる372ps仕様へと到達した。時代を超えて進化を続けるR32タイプMは、まさに人生を共に歩む相棒だ。

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