メグロとは

目黒製作所によって製造されたMEGURO

メグロは、かつて存在した日本のオートバイメーカー「目黒製作所」にルーツを持つブランドである。

目黒製作所は1924年に設立され、当初は自動車修理やオートバイ部品の製造を手がけていた。1930年代初頭にはエンジンの製作を進め、1937年に最初の量産モーターサイクル「Z97」を発売。戦前から完成車を生産してきた、日本でも歴史の長いモーターサイクルメーカーのひとつである。

戦後は排気量の異なるモデルへラインアップを拡大し、1950年代には日本を代表するオートバイメーカーのひとつへ成長した。

1960年には川崎航空機工業と業務提携。1962年に「カワサキメグロ製作所」へ改称し、その後は川崎航空機工業との統合が進んだ。メグロが培った大型車の技術や車体設計は、のちのカワサキ「W」シリーズにも受け継がれていく。

基本情報

メグロ S1

MEGURO S1は、メグロブランドの250ccクラスを担う空冷単気筒スポーツモデルである。

現行の2026年モデルは2025年9月15日に発売。メーカー希望小売価格は74万2,500円で、カラーは「エボニー×クロームメッキ」の1色が設定されている。現行S1には複数のグレード設定はなく、1モデルでの展開だ。

搭載するのは232ccの空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブエンジン。最高出力18PS/7,000rpm、最大トルク18N・m/5,800rpmを発生し、6速トランスミッションを組み合わせる。車両重量は143kg、シート高は740mmとコンパクトな車体構成だ。

兄弟車にあたるのが、カワサキ・W230である。

W230も型式8BK-BJ230A、232cc空冷単気筒エンジン、最高出力18PS、車両重量143kgなど、主要なメカニズムをS1と共有する。全長・全幅・全高も共通だ。一方、S1はシート高740mm、W230は745mmとわずかに異なり、外装やメーター、排気音の演出にもそれぞれの個性が与えられている。

2026年モデルのメーカー希望小売価格はW230が66万5,500円、S1が74万2,500円。その差は7万7,000円となる。

主要諸元表

項目MEGURO S1
型式8BK-BJ230A
全長×全幅×全高2,125×800×1,090mm
軸間距離1,415mm
最低地上高150mm
シート高740mm
車両重量143kg
エンジン空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ
総排気量232cc
最高出力18PS/7,000rpm
最大トルク18N・m/5,800rpm
トランスミッション常時噛合式6段リターン
フレームセミダブルクレードル
フロントタイヤ90/90-18M/C(51S)
リヤタイヤ110/90-17M/C(60S)
フロントブレーキφ265mmシングルディスク
リヤブレーキφ220mmシングルディスク
燃料タンク容量11L
WMTCモード燃費40.5km/L
乗車定員2名
メーカー希望小売価格742,500円(税込)

メグロ・S1の魅力

MEGURO S1の魅力は、歴代メグロの意匠や乗り味を、現在の250ccクラスへ落とし込んでいる点にある。

デザインのモチーフとなったのは、1964年に登場した「カワサキ 250 メグロ SG」だ。ティアドロップ型のフューエルタンクを黒とクロームメッキで仕上げ、タンク側面には新たにデザインされた立体的なMEGUROエンブレムを配置。車体全体も黒とクロームを基調とし、歴代メグロを思わせる佇まいを作り上げている。

メーターにもS1独自の意匠が取り入れられた。

丸型インストゥルメントの文字盤には、往年のメグロを意識したカラーやフォントを採用。パネル下部には、カタカナで赤く記された「メグロ」のロゴを配置している。現代的な液晶ディスプレイを組み込みながら、視界に入る部分でもブランドの歴史を感じられる仕立てだ。

エンジンの造形にもこだわりが見られる。空冷単気筒らしい大きく丸みを帯びた冷却フィンを設け、クラシカルなエンジンの表情を演出。ホワイトパイピングを施したシートやスチールフェンダー、スポークホイールなど、細部までレトロスポーツとして統一されている。

走行時に味わえる鼓動感もS1の特徴である。

クランクシャフトの高い慣性モーメントによって、低中回転域では空冷単気筒らしい鼓動を感じやすい特性。アクセルを開けた直後からトルクを引き出しやすく、市街地や郊外を流す速度域でもエンジンの存在感を楽しめる。

排気音については、250メグロSGをイメージしたチューニングを実施。デザインに加え、音や乗り味まで含めてメグロらしさを表現している点もS1の特徴となる。

車体の扱いやすさにも配慮されている。

ハンドル、シート、ステップを組み合わせたアップライトなライディングポジションにより、自然な姿勢で操作しやすい構成。フロント18インチ、リヤ17インチのスポークホイールを採用し、クラシカルな外観と滑らかなハンドリングを両立している。

メグロ・S1の気になるポイント

MEGURO S1の兄弟車W230

MEGURO S1を検討する際に大きな判断材料となるのが、兄弟車W230との価格差である。

前述したとおり、2026年モデルのS1はW230より7万7,000円高い。エンジン性能や車両重量、車体寸法など多くの基本スペックを共有しているため、MEGUROエンブレムや黒×クロームの外装、専用メーター、250メグロSGを意識した排気音などにどこまで価値を感じられるかが選択のポイントとなる。

動力性能についても用途との相性を確認したい。

最高出力は18PSで、低中回転域では空冷単気筒らしい鼓動感を味わいやすい特性となっている。高速道路も走行できる排気量だが、高速巡航や追い越し加速で大きな余裕を求める場合は、より排気量の大きなモデルも比較対象になる。

ライディングポジションも体格によって印象が変わる。S1のシート高は740mmと低く、足つき性に配慮された設定。一方、身長の高いライダーでは膝まわりの窮屈さを感じる可能性もあるため、購入前には実車にまたがり、ハンドルやステップを含めた姿勢を確認しておきたい。

外装では、黒とクロームメッキを多用している点も特徴となる。S1らしさを強く印象づける仕上げだけに、きれいな状態を保ちたい場合は、メッキ部分の汚れやくすみなども含めて日常的な手入れを意識したいところだ。

メグロ・S1 中古市場

MEGURO S1は2024年11月に国内販売を開始した新しいモデルだが、中古車もすでに流通している。2026年8月時点のグーバイクでは、MEGURO S1の中古バイクが43件掲載されている。発売から2年に満たない車種ながら、複数の個体を比較できる状況だ。

掲載車両を見ると、2025年モデルを中心に、車両価格50万円台後半から60万円台の個体が複数確認できる。具体的には、走行距離1,211kmで55.8万円、2,301kmで57.22万円、16kmで61.19万円といった車両が掲載されている。走行距離や装備内容によって価格には幅が見られる。

中古車では高年式かつ低走行の個体が多く、数十kmから数千km程度の車両が中心となっている。現状では、経年した車両を低価格で探す市場というより、比較的新しい個体を状態や装備の違いから選ぶ段階といえる。

なお、掲載台数や価格は随時変動するため、購入時には最新の情報を確認したい。

メグロ・S1 中古 注意点

MEGURO S1の中古車を選ぶ際は、年式、使用履歴、外装、カスタム状態の4点を中心に確認しておきたい。

まず押さえておきたいのが、2025年モデルと2026年モデルの違いである。

2025年モデルのメーカー希望小売価格は72万500円、2026年モデルは74万2,500円。カラーはいずれも「エボニー×クロームメッキ」で、基本的なエンジンや車体構成にも大きな変更はない。中古車では年式だけを優先せず、販売価格や走行距離、保証内容まで含めて比較したい。

使用履歴も確認したいポイントだ。

中古市場には走行距離数十kmから数百km程度の個体も見られる。走行距離が少なくても、登録時期や保管状況、試乗車としての使用歴などによって状態は異なるため、初度登録年月や保証の残期間と合わせて販売店へ確認しておきたい。

S1では外装の状態も重要となる。

黒塗装とクロームメッキ、立体的なタンクエンブレムはS1を特徴づける部分である。タンクやメッキ部分の傷、くすみ、サビ、エンブレム周辺の状態などを実車で確認したい。スポークホイールについても、スポークやリムのサビ、曲がりなどをチェックしておくと安心だ。

カスタム車では、装着されている部品と純正部品の有無も確認したい。マフラーやUSB電源などが装着された車両では、取り付け状態や配線処理に加え、ノーマル状態へ戻せるかまで把握しておくと選びやすい。

メグロ・S1 中古が高い理由

MEGURO S1の中古車は、現時点では比較的高い価格を維持している。背景としてまず挙げられるのが、発売から日が浅いことだ。

国内発売は2024年11月20日。2026年8月時点でも2年が経過しておらず、前述したとおり中古市場では高年式かつ低走行の車両が多い。経年や走行距離による値下がりが進んだ個体が少ないことが、現在の相場を支える要因のひとつとなっている。

新車価格も、中古相場を考えるうえで押さえておきたい。現行2026年モデルのメーカー希望小売価格は74万2,500円。中古車でも60万円前後の低走行車が見られ、新車価格との差が限られる個体もある。

また、2025年モデルと2026年モデルでエンジン性能や主要な車体構成に大きな差がないため、旧年式でも性能面で見劣りしにくい。これも中古車の価値を保ちやすい条件のひとつと考えられる。

今後、年式や走行距離の異なる車両が増えれば価格帯が広がる可能性はある。現段階では、単純な安さだけで中古車を選ぶより、車両状態や保証、装備内容まで含めて新車と比較したい。

メグロ・S1の変遷

MEGURO S1自体は2024年に発売された新しいモデルである。その背景には、戦後のメグロが展開した250ccクラスと、カワサキへ受け継がれた系譜がある。

メグロが250ccクラスへ進出したのは1950年。「ジュニアJ」を投入し、その後はSシリーズなどへ発展していった。250ccクラスは、戦後のメグロを支える重要なカテゴリーのひとつとなる。

1964年には「カワサキ 250 メグロ SG」が登場。248ccの空冷4ストロークOHV単気筒エンジンを搭載し、メグロの名称を残した最後期のモデルとして1969年まで生産された。現在のMEGURO S1は、この250メグロSGの正統な後継車として位置づけられている。

一方、大排気量モデルの系譜では、1965年の「カワサキ500メグロK2」が、その後の650-W1の基礎となった。メグロが培った技術はWシリーズへ受け継がれ、カワサキの大型モーターサイクルの発展にもつながっていく。

2021年に登場したMEGURO K3

長く途絶えていたメグロの名称は、2020年にブランド復活が発表され、2021年にはMEGURO K3として現代のカワサキラインアップへ戻った。

2023年のJapan Mobility Showでは、ブランド復活後の新たな250ccモデルとしてMEGURO S1を公開。翌2024年11月20日に2025年モデルを国内発売した。2025年9月には2026年モデルへ移行し、現在もメグロブランドの250ccモデルとして展開されている。

まとめ

MEGURO S1によって、メグロという歴史あるブランドを250ccクラスで選べるようになった。兄弟車のW230と主要なメカニズムを共有する一方、S1では250メグロSGを意識した意匠や専用エンブレム、メーター、排気音などを通じて、メグロとしての個性を明確にしている。

大型モデルのMEGURO K3よりも身近な車格で、普通自動二輪免許でも乗れるS1。ブランドの歴史やクラシカルなモーターサイクルに魅力を感じる人にとって、メグロの世界へ触れる入口となる一台だ。