荒れた路面でも快適!「ボトムリンク」
スチール製一体型フレームを採用するキャブレター時代のスーパーカブ、通称=鉄カブを象徴する装備のひとつが「ボトムリンク」だ。リンクを介してショックアブソーバーを作動させるフロントサスペンション機構で、荒れた路面でも快適に走れるよう考えられていた。
このサスペンションの特徴は、ブレーキをかけたときの動きにある。一般的なテレスコピックフォークのようにフロントが沈み込むのではなく、逆にサスペンションが上に伸びる方向へ動く。いわゆる“アンチダイブ”的な性格を持っていたのである。
慣れないと「おっ?」となる独特な動きだけれど、これもカブらしい個性のひとつだ。

鉄カブを象徴するボトムリンク式フロントサスペンション。ブレーキング時にフロントが浮き上がる仕組みで、片手で出前を持ちながら運転するような昭和時代では逆に助かる機構だったのだろう。
ブレーキング時の姿勢を安定!「アンチリフト」
そのボトムリンクの特徴である“フロントが浮き上がるような動き”を軽減するために採用されたのが「アンチリフト機構」だ。
1983年発売のスーパーカスタム50に搭載され、その後もこのグレードに採用された。
狙いはズバリ、ブレーキング時の姿勢をより安定させること。ボトムリンクらしい動きを残しつつ、減速時の車体変化を穏やかにするための工夫だった。つまり、「ボトムリンクがダメだから追加した」というより、カブらしい足周りをさらに扱いやすく磨いた機構と考えると分かりやすい。

ボトムリンク特有のブレーキング時のリフト方向の動きを抑えるアンチリフト機構。1983年のスーパーカスタム50に採用された。
φ130mmの強化ブレーキ!「デカドラム」
続いては名前を聞けばだいたい想像できる「デカドラム」。
標準的なカブのドラムブレーキは前後ともφ110mmだが、1998年以降の一部モデルではφ130mmの大径ドラムを採用。これがカブ好きの間で「デカドラム」と呼ばれている。ちなみにプレスカブのリヤもφ130mmだ。
見た目にもハブ周りの存在感が増すので、流用カスタムとして人気メニューのひとつ。もちろん狙いは制動力の強化。荷物を積んで走る実用車として、しっかり止まれることは大切なのだ。

通称“デカドラム”と呼ばれるφ130mmの大径ドラムブレーキ。標準的なφ110mmよりひと回り大きく、制動力アップを狙っている。
釘に負けない!?「タフアップチューブ」
最後は「タフアップチューブ」。
これはHondaが独自開発した、パンクに強いチューブだ。内部が「空気室」と「液室」に分かれた二重構造になっており、釘などが貫通すると防止液と繊維が穴を塞ぐ仕組み。現在は流通していない。
毎日の通勤や配達で使われることの多いスーパーカブにとって、パンクは単なるトラブルではなく、その日の仕事を止めてしまう大問題。今でこそ幹線道路に釘が落ちていることはあまり見なくなったが、1990年代くらいまでは路肩に釘やビスを見かけることがあり、左端を走らないといけない原付はパンクすることも多かった。

空気室と液室を分けた二重構造を持つタフアップチューブ。釘などが刺さった際に、防止液と繊維で穴を塞ぐ耐パンク性を狙った。
ボトムリンク、アンチリフト、デカドラム、タフアップチューブ。どれも派手な装備ではないけれど、荒れた道を走り、荷物を積み、毎日使われるスーパーカブには大切なものばかり。
足周りを見ても、カブがただの“安い実用車”ではなく、使う人のことをかなり真面目に考えて作られてきたバイクだと分かるのである。
※この記事は月刊モトチャンプ2025年8月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】