“横型”って、そもそも何が横なの?

歴代カブ系エンジンの大きな変更点を言えば、動弁系のOHV→OHC化と、燃料供給のキャブレター→フューエルインジェクション(FI)化だろう。耐久性と燃費の向上を主眼に行われたイノベーションとともに、横型エンジンのヒストリーに目を向けてみよう。

まずこの横型エンジン。ホンダの小排気量車に搭載された49〜125ccクラスの空冷4ストローク単気筒エンジンは、腰上、つまりシリンダーヘッド、シリンダー、ピストンを前方に大きく傾けた“水平シリンダーレイアウト”を採用しているのが特徴だ。横型エンジンという呼称はあくまで通称である。ちなみに、この横型と対比させるかたちで“縦型”と呼ばれるエンジン形式もホンダには多くラインナップされている。まさにCB50やエイプがそうだ。

では、なぜわざわざシリンダーをここまで寝かせたのか? その答えは、スーパーカブの“乗りやすさ”にある。

またぎやすくするために、エンジンを寝かせた!

そんな横型を搭載した第一号のバイクがC100、初代スーパーカブというわけである。

スカートを履いた女性でも乗車できる、はたまた片足を振り上げてまたがらなくても良い──そのための上空スペースを確保できるアンダーボーン型フレームを導入するには、このフレーム形式にピッタリと収まる、スペースを食わないコンパクトなエンジンが必要だった。

それこそが、シリンダーを前へ大きく倒した前傾ユニット、水平シリンダーの横型エンジンだったということである。つまり、エンジンを寝かせたのは奇抜さを狙ったわけではない。低い車体を作り、乗り降りしやすくするための必然だったのだ。

カブだけじゃない! モンキーもダックスも“横型一家”

C100、C50以降、ホンダの横型エンジンはモンキーやゴリラ、ダックス、シャリィ、モトラ、ジャズ、ベンリィなど、たくさんのモデルに搭載され熟成を重ねてきたのである。

ここも横型エンジンのスゴいところ。ひとつの車種だけに使われて終わったわけではなく、用途もキャラクターも違うホンダの小排気量車へ次々と広がっていった。

しかも、基本レイアウトを守りながら中身は着実に進化している。OHVからOHCへ、キャブレターからフューエルインジェクションへ。長く使われたからこそ、時代に合わせて磨き込まれてきたのである。

“寝ているだけ”じゃない! 中身もしっかり進化した

横型エンジンの進化を分かりやすく見せてくれるのが、低フリクション化だ。

50ccモデルは2007年から、110ccモデルは2009年から、フリクションを低減させるために「ローラーロッカーアーム」方式を採用。さらに、それと同時に「オフセットシリンダー」も採用され、従来型に比べてフリクションロス低減に貢献している。

カムと接する摺動面をローラー化したローラーロッカーアーム。動弁系のフリクションを減らし、エンジン内部の抵抗低減に貢献する。

左が従来型、右がオフセットシリンダー。シリンダー位置をクランク中心からずらすことで、ピストンを横方向へ押し付ける力を減らし、フリクションロス低減を狙う。

基本の姿は昔ながら。でも、中身まで昔のままではない。こうした改良を積み重ねてきたからこそ、横型エンジンは長く生き残っているのだろう。

丈夫で経済的! 横型エンジンは実用車の強い味方

しかし、メリットはなにもスペース効率だけではない。

山岳部や未舗装路などの過酷なエリアでも壊れにくいタフネスさや、少ないガソリンでなるべく長い距離を稼ぐことができる高い燃費性能など、このエンジンでしか成し得なかった信頼と実績に思いを馳せるたびに……横型エンジンの偉大さを痛感するのである。乗り降りを楽にするために生まれ、モンキーやダックスなどへ広がり、OHC化やFI化、低フリクション化を重ねながらホンダの小排気量車を支えてきた。

バンザイ、横型!

※この記事は月刊モトチャンプ2025年8月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】