数値で明確となった
カーブスリットの優位性

田中哲也プロの走行データをプログラミングした、独自のサーキットモード計測ができるダイナモ。摩材の検証や製品チェックに活躍する。

ディクセルでは、実走テストで得にくいデータ収集や性能検証などが可能となるブレーキダイナモメーターを活用した開発体制を敷き、ハイパフォーマンスなブレーキパッドやディスクローターを多彩に展開している。

FPタイプ
ノンスリット仕上げでブレーキローターのスタンダードモデルとなるのがこちら。摺動面の温度分布にムラは生じにくいが、高温となるため、マッチングするパッドによってはフェード気味になり、制動力が低下してしまう可能性もある。
FSタイプ
6 本ストレートスリットの逆回転仕様で、制動力と摩材のクリーニング効果を高めている。摺動面の熱分布はスリット本数の少なさからクーリング が追いつかず 、ピストンまわりの中央部が高温気味となっているのが下のデータでわかるだろう。
FCタイプ
8 本 カーブスリットの正回転仕様で、パッド摩耗を抑制しつつ、制動力やクーリング性能の向上を得ている。ブレーキダイナモメーターで測定した摺動面の熱分布は均一かつ 低温となっていて、パッドの熱負荷も抑えることができる

ここでディクセルが提案するのは、カーボン含有量を20%増やして、独自の熱処理を施し、耐歪み性能・耐クラック性能を大幅に高めたFシリーズローターだ。

「理想の制動フィールを引き出すためは、ブレーキパッドだけでなく、ブレーキローターとセットで考えていくことが重要です。

純正ローターが摩耗してから交換を検討される人が多いのですが、ブレーキローターも制動力を高めるチューニングパーツで、摩耗が進むほどに熱容量は低下します。とくにサーキット走行は温度域も高くなりますので、こちらをオススメする次第です」

と、技術開発部の木村真生さん。

F シリーズはハイカーボン材に熱処理も加えたスポーツローター。耐久レースなどでも高い性能を実証している。

ここで注目したいのは、ブレーキダイナモを使ったFシリーズの計測データだ。ローターに刻まれたスリットが制動力アップや摩材面のクリーニングなどに貢献することは何となく理解していても、どれにすべきかわからないという読者も多いはず。

とくにFシリーズはストレートスリットのFS、カーブスリットのFCとスリットモデルがふたつ設定されているので、いずれを選べばよいのか悩ましい。

しかし、同社が独自のサーキットモードで計測したブレーキダイナモデータを見ると、それも簡単に解決できる。下の比較グラフを見ればわかるように、スリット本数の多いFCが少ない踏力で高い制動力を安定して発揮していることは明白で、FPよりFS、FSよりFCといった性能差が読み取れる。

SAE J2522 Ave.μ比較

車両:SUBARU VAB WRX STI
FP/FS/FCローター+SタイプによるSAE J2522テスト結果
160 →130km/h 200 →170km/h 制動や180→100km/hといった高速度域からの急制動でスリット入りは効果を発揮。その中でも平均摩擦係数はFS<FCとなっていることが注目点。街乗りシーンや80km/h以下の制動ではFPとの差はほぼない。高速域からの制動でスリットは威力を発揮。

Circuit Mode 各コーナーAve.μ比較

車両:SUBARU VAB WRX STI
FP/FS/FCローター+SタイプによるCircuit Modeテスト結果
各コーナーにおける平均摩擦はFP<<FS&FCとなっている。スリットの効果はCircuitMode のような高負荷制動で大いに威力を発揮。その中でもFS<FCとなっていることから、8 本カーブスリットがより高い制動力を生み出していることが読み取れる。

Circuit Mode 各コーナー最大bar比較

車両:SUBARU VAB WRX STI
FP/FS/FCローター+SタイプによるCircuit Modeテスト結果
各コーナーの平均摩擦はFP<<FS&FCとなっていて、スリット入りローター使用時は反比例して液圧を抑えることができる。最も制動負荷の高いヘアピンコーナーにおける最大液圧はFS>FC。FCのほうがラクに止まることができている。

Circuit Mode 10LAP目ローター温度比較

温度の順位はFP<FS<FC
この順位で制動力が高いが、パッド摩擦材とローター摺動面のスリットが摩擦することで噛み込みが生じ、その部分から高温になっていると推測。⇒サーモグラフィックカメラで検証へ。

カーブスリットはストレートスリットよりもスリットの長さが稼げるため、クーリング的に有利となり、摺動面の温度もほかのモデルと比べて低温となっている。

摩材面のクリーニング作用でパッド消耗が早くなるというスリットローター特有のデメリットは多少あるものの、サーキット走行時のパフォーマンス優先でアップグレードを図るなら、ブレーキローターはFCタイプを選びたい。

ブレーキローターはハードユーザーこそスタンダードモデルを使うべき!? ディクセル PDタイプのススメ

サーキット走行を楽しむなら、ブレーキパッドはスポーツタイプに交換したい。その際、ローターも、せめて純正新品には交換したい。では、ディクセルのローターはどうだろう? そのあたり、ストレートに伺った。 Photos/稲田浩章 Text/勝森勇夫 本記事はレブスピード 2024年9月号からの抜粋です。


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