右直事故の死者数で8割以上がバイク直進中
警察庁の公式ホームページにある「二輪車の安全利用の促進」内で公表されているデータには、2021年(令和3年)~2025(令和7年)の5年間におけるバイクの死亡事故に関する以下のようなデータがある。
●二輪車乗車中死者数
・2369人(令和3年~令和7年合計)

●二輪車乗車中の事故累計別死者数(令和3年~令和7年合計)
・車両単独:811人(34.0%)
・車両相互:1558人(65.4%)
●二輪車乗車中における車両相互事故の事故累計別死者数(令和3年~令和7年合計)
・1位:右折対直進:469人(31%)
(内訳:二輪車直進401人、二輪車右折68人)
・2位:出会い頭:430人(28.4%)
・3位:正面衝突:207人(13.7%)

以上から分かる通り、バイク乗車中の死亡者数は、単独の事故よりもクルマなど車両相互の事故によるものが全体の65.4%と圧倒的に多い。
また、車両相互の事故のなかで、右折対直進、いわゆる右直事故による死者数が最多で、とくに二輪車直進(バイクが直進、相手側のクルマなどが右折)の場合が401人。車両相互事故全体の割合で26.5%、右折対直進の事故合計では約85.5%を占める割合となっている。
ちなみに、同じく警察庁がまとめたデータでは、2026年(令和8年)の上半期(1月〜6月)のバイク乗車数の死者数は204人で、前年の198人よりも増加。また、車両相互の事故による死者数は、自動二輪車で102人となったという。さらに、事故類型別の死者数の1位は右折直進の39人(全体の25.2%)。なかでも、バイクが直進中の事故による死者数は36人と右折直進のうちの92.3%を占め、相変わらずの高水準となっている。

原因で多いのは「バイクが遠くに見える」認識ミス
バイクが直進、クルマが右折する際に起こる交差点での事故は、昔から社会問題となっている。しかも、これらデータにより、現在でもバイクの死者数が多い傾向にあることが分かると思う。
では、実際に、交差点などで直進中のバイクと、右折しようとするクルマとの事故には、どういったケースや原因が考えられるのだろうか。
まず、右折しようとするクルマのドライバーからは、直進するバイクが見えているのに曲がってしまうケース。これは、多くの場合、
「4輪車と比べ、バイクの車体が小さいことで起こりやすい」
といわれている。
右折待ちのドライバーから見てバイクが小さくみえることで、実際の位置より遠くにいるように感じ、「間に合うと思って右折した」ところ、実際はもっと近づいていて衝突してしまう事例は昔から多い。

こうしたドライバー側が、バイクとの距離感を「見間違う(錯覚する)」ケースは、とくに、原付スクーターなどコンパクトな車体のモデルや、オフロード車など細身のモデルで起こりやすいということをよく耳にする。
ちなみに、1998年にバイクのヘッドライトが常時点灯式に義務化された背景にも、こうしたドライバー側の錯覚などによる右直事故が多かったことも要因だ。

直進バイクの速度の出し過ぎも要因
また、直進するバイクの速度がかなり高い場合も、こうしたケースは起こりやすいようだ。これも、警察庁が発表したデータによれば、2023年(令和5年)の右折対直進死亡事故では、自動二輪車が直進だった場合の方が、乗用車・貨物車が直進の場合よりも速度が高い傾向にあったという。
具体的なデータでは、直進車側の危険認知速度の平均(速度帯中間値の平均)を比較した場合、自動二輪車が直進の場合で72.3km/h、乗用車・貨物車が直進の場合では63.4km/hだったという。

ちなみに、危険認知速度とは、交通事故の当事者(クルマのドライバーやバイクのライダーなど)が、相手の車両や人などを認め、危険を認知した時点の走行速度のことだ。ブレーキ、ハンドル操作などの事故回避行動をとる直前の速度、または運転者が危険を認知せず事故に至った場合は事故直前の速度を意味する。事故車両のブレーキ痕や損壊の程度、事故当事者の証言などから、事故の直前のスピードを推測して割り出すのだという。
こうしたデータからも分かる通り、スピードを出し過ぎて走行しているバイクは、前述のクルマのドライバーから小さく見えることとの相乗効果もあり、右直事故に遭いやすいといえるだろう。
バイクが死角を走り見えてない場合もある
一方、右折待ちのクルマから直進するバイクが見えない場合もある。たとえば、渋滞している交差点などで、対向車線のクルマも右折しようとしていて、お互いに曲がろうと目で合図するなどで曲がったら、対向車線のクルマの直後に直進するバイクが出てきて衝突するケースだ。
また、対向車線の直進するクルマが、渋滞で前に進めないため、右折したいクルマにパッシングなどで「どうぞ」と合図して譲った場合。「ありがとう」と右折車のドライバーが曲がったところ、対向車の死角から直進バイクが出てくるといったケースもある。
さらに、バイクが、ほかの直進するクルマの左脇をすり抜けして走っているケースでも、右折しようとするドライバーからは見えづらく、右折した瞬間に衝突といった場合も考えられる。

対策は「かもしれない運転」
以上が、バイクの右直事故でよくあるパターンだが、いずれの場合も、対策としては「かもしれない運転」をするしかないだろう。
これは、まず、直進して交差点に差し掛かったときに、右折待ちのクルマがいた場合、「あのクルマは急に曲がってくる可能性がある」といった心構えを持つことだ。
バイクに限らず、運転中に不測の事態(急に右折待ちのクルマが曲がってくるなど)が起きると、運転者は焦ってしまい、適切な回避行動などが取りづらい場合も多い。そのため、まずは、どんなことが起こっても対象できるような心の準備をしておくのだ。
また、同時に、まさかの時には、いつでもブレーキ操作などをできるよう、ブレーキレバーに指をかけるなど、「体の準備」もしておくといい。
さらに、運転中は、どこか一点を集中して見るのではなく、できるだけ前方の広範囲を見て、信号や標識なども見落とさないことが大切だ。これらにより、右折待ちのクルマだけでなく、急に飛び出してくる自転車や歩行者なども早期に発見しやすくなる。
また、渋滞路ですり抜けしたりするのも、あまりおすすめしない。前述の通り、右折車から見えづらくなるし、同じ車線のクルマが急に左折して巻き込み事故にもつながる。とにかく、自分のバイクが、ほかのクルマなどの死角に入っていないかは、常に意識した方がいい。

もちろん、公道で、速度を出しすぎるのも御法度。前述した右直事故の原因になる場合だけでなく、前後左右から車両や自転車、歩行者などがどんな行動にでるのか分からないからだ。常に、適切な速度で走りながら、周囲の状況をよく見て、可能な限り不測の状況に対処できるようにしたい。

右折時は信号無視の直進車に注意
右直事故の対策としては、ほかにも、自分が右折しようとしている場合は、直進するクルマにも注意したい。例として、筆者の体験談を紹介しよう。
あるとき、3車線ある広い幹線道路の交差点にある右折レーンの先頭で右折待ちをしていた。その後、メインの信号機下にある右折用の矢印式信号機が青になったので、バイクを発進させ交差点に入ろうとしたら、いきなり対向車線の直進するクルマが交差点へ突っ込んできた!
まさに衝突寸前で急ブレーキを掛け、なんとか直進のクルマを避けたが、まさにギリギリだった。なお、その時、当然ながら、直進車の信号は赤。つまり、そのクルマは信号無視をしたのだ。
もしぶつかっていたらと思うと、今でも手のひらに汗がにじむ。しかも、その直進車は、何事もなかったように、そのまま走り去ってしまったので、今でも思い出すと、気分が悪くなる。

交差点など要注意ポイントで安全な走りを!
だが、これも教訓。たとえ、自分が信号機など交通法規を守って走っていたとしても、ルールを無視するドライバーやライダーなどから被害を受ける場合もある。
この経験から、その後は、交差点で右折待ちをする際は、どんな道路でも信号機が青になったからといって、すぐに右折を開始するのはやめた。青になっても一呼吸ほど待ち、対向車などが来ていないことを十分に確認してから、進んだり曲がったりするようにしている。

ともあれ、ツーリングではもちろん、通勤・通学や買い物などで普段バイクに乗る際も、事故に遭わないために、危険が潜んでいる場所や状況を意識しながら走ることは大切だ。
といっても、常にビクビクしたり、ドキドキしながら走る必要はない。そんな状態でバイクに乗っていては楽しくないし、周囲の状況を冷静に判断したり、とっさの対応をしたりすることも難しくなってしまう。
大切なのは、周囲の状況をよく見ながら平常心を保ち、交差点などの要注意ポイントでは、右折車の動きや自分が死角に入っていないかなどを意識すること。そして、必要に応じて速度を落とし、いつでもブレーキなどの操作ができるようにしておくことだ。
右直事故を完全に防ぐことは難しい。だが、「もしかしたら右折車が曲がってくるかもしれない」と意識しておくだけでも、いざというときの対応は変わってくるはずだ。普段はバイクを楽しみつつ、交差点などの要注意ポイントでは少しだけ気を引き締める。そんなメリハリのある走りを心掛けたい。
【関連リンク】
警察庁「二輪車の安全利用の促進」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/nirinsha-anzenriyou.html
