連載

あのコンセプトカー、どうなった?

量産するつもりはなかった! LF-LCは「Pure Design Exercise」だった

2012年のデトロイト・モーターショーでワールドプレミアされたLF-LC

2012年、デトロイト・モーターショー(NAIAS)にレクサスが繰り出したのは、美しいクーペ・コンセプトだった。その名はLF-LC。その名が意味するところは

Lexus Future-Luxury Coupeである。

アメリカで高級ブランドとしての地位を固めつつあったレクサスのラグジュアリー・クーペはSCが担っていた。日本では当初「ソアラ」を名乗っていたモデルだ。2代目SCは2010年に生産を終了。つまり2012年当時、レクサスのラインアップにはラグジュアリークーペが存在しなかった。

高級ブランドにクーペがない……というのは、ある意味、画竜点睛を欠く。

LEXUS LF-LC(2012)
LEXUS LF-LC(2012)

だから、2012年のデトロイト・モーターショーにレクサスがLF-LCを出したのは、ある意味当然のことだった。だが、LF-LCは量産化が約束されたコンセプトカーではなかった。その証拠に、その量産モデルとも言えるレクサスLCがデビューしたのは、2016年のデトロイト・モーターショーだった。だから、開発が進んでいたモデルから逆算してコンセプトカーとして世に出したわけではない。ところが面白いことに、LF-LCには量産計画がなかった。2016年に量産LCを発表した豊田章男社長(当時)は、「LF-LCをデザインしたとき、それを量産車にするつもりはなかった」と明かしている。メディアや顧客から寄せられた予想以上の好反応が、レクサスの考えを変えたのだ。

全長+130mm、全高+75mm。それでもLCはLF-LCにそっくり

ボディサイズから見ていこう

上がLF-LC、下が量産型LC

LF-LC
全長×全幅×全高:4630mm×1950mm×1270mm ホイールベース:2800mm

量産型LC
全長×全幅×全高:4760mm×1920mm×1345mm ホイールベース:2870mm

見比べればLF-LCと量産型LCは驚くほど似ているのに、ボディの基本寸法はかなり違う。全長は130mmも伸びているし、ホイールベースも70mm違う。

上がLF-LC、下が量産型LC

つまり量産LCはLF-LCのパッケージをそのまま量産化したのではない。

上がLF-LC、下が量産型LC

「LF-LCのプロポーションとデザインを、新しい量産車のパッケージで再構築した」と言っていいだろう。レクサス自身も「LF-LCという”原石”を公道を走るクルマとして具現化するため、新しいプラットフォーム開発の機会を活用した」と説明している。

タイヤサイズも興味深い
LF-LC:F&R 265/35R21(外径は約719mm)
量産型LC:F245/40R21(約729mm)R275/35R21(約726mm)

LF-LC Blue concep(2012)タイヤサイズは265/35R21(外径は約719mm)
LEXUS LF-LC(2012)

つまり、量産化してもタイヤ外径を小さくしていない。通常コンセプトカーは大きなタイヤを履いている。その方が純粋に「カッコいい」からだ。

LF-LCの「巨大なタイヤを四隅に置いた低くワイドなスタンス」を再現するために、量産LCでも21インチを本気で成立させたわけだ。

LF-LCを量産車にする──GA-Lと佐藤恒治×森忠雄の挑戦

LCが第一弾となったGA-Lプラットフォーム

LF-LCを本当に量産するには、新しい骨格も必要だった。そこで使われたのが、TNGA思想に基づくエンジン縦置き上級車用のGA-Lプラットフォームである。ただし、GA-LはLCだけのための専用プラットフォームではない。その後のレクサスFRモデルへの展開を前提に開発された新世代アーキテクチャで、LCがその第一弾となった。翌2017年にはフラッグシップセダンのLSにもGA-Lが採用されている。

量産型LC(2016)

レクサスLCの開発責任者はのちにトヨタ自動車社長になる佐藤恒治氏だ(現トヨタ副会長)。チーフデザイナーは誰か?森 忠雄氏である。面白いのは、コンセプトカーのLF-LCと量産LCではデザインチームが違うことだ。

2012年のLF-LCは米国CALTYが担当。公式発表時に紹介されたメンバーは、CALTYプレジデントのケビン・ハンター氏(Kevin Hunter)、スタジオデザインマネジャーのイアン・カータビアーノ氏(Ian Cartabiano)、エクステリアはシニアクリエイティブデザイナーのエドワード・リー氏(Edward Lee)らだった。

LEXUS LF-LC(2012)のデザインスケッチ

LF-LC:CALTY/エドワード・リー氏らデザインチーム
から
量産LC:佐藤恒治チーフエンジニア×森 忠雄チームデザイナー

というリレーだったわけだ。

2012年のLF-LCは大きな反響を呼んだ。つまり喝采ももって受け入れられたのだ。EyesOn Design賞も受賞した。そこからGA-Lプラットフォームとともに開発が進む。だが、LF-LC→量産LCはコンセプトカーのカタチをそのまま縮尺調整して量産化したわけではない。

LF-LC Blue concep(2012)
量産型LC(2016)

LF-LCは本当に純粋なデザインスタディだったのだ。2012年のLF-LCのプレスリリースにもLF-LCは「純粋なデザインスタディ(Pure Design Exercise)」だと書かれている。

LEXUS LF-LC(2012)
量産型LC(2016)

森氏はLF-LCのサーフェスやラインをそのまま量産プラットフォームへコピーしたわけではない。LF-LCのデザインランゲージとテーマを維持しながらさらにエモーションを加えた、と森氏は説明している。森氏は後に「LF-LCは出発点であって、最終目標ではなかった」と振り返っている。

だから、寸法が大きく変わっても量産LCは「ほぼLF-LCのまま」に見えるのだ。

ただし、エクステリアはLF-LCに非常に近いのに、インテリアはかなり違う。これはLF-LCの量産化を後押しした豊田章男社長(当時)がLF-LCのインテリアが本物のドライバーズカーのインテリアとは思えないと指摘したからだという。

LEXUS LF-LC(2012)
LEXUS LF-LC(2012)

比べてみると、確かにインテリアはLF-LCと量産LCはあまり似ていない。

アメリカでのLCは2017年途中に発売して2484台、翌18年は1979台、その後1000台強まで販売台数は落とすが、21年には追加されたコンバーチブル効果もあって2782台まで回復。その後もコンスタントに売れ続けている。発売から8年以上経ってもアメリカで年間1000~1500台規模のセールスを維持している。年間数千台を狙うニッチなラグジュアリーGTとして、そしてレクサスのブランドイメージを担うフラッグシップクーペとして見れば、LCは成功したモデルと言っていいのではないだろうか。

量産型LC(2016)

GA-Lという視点で見ると、興味深い対比もある。その後GA-Lを採用したフラッグシップセダンのLSは、主戦場である北米で販売台数を大きく落としていった。一方、もともと大量販売を期待されるモデルではないLCは、登場から時間が経っても一定の販売規模を維持してきた。

LF-LCは量産するつもりのなかった「純粋なデザインスタディ」だった。ところが、そのデザインが人々を動かし、レクサス自身を動かした。そして4年後、姿かたちを単純にコピーするのではなく、新しいGA-Lプラットフォームの上にLF-LCのデザイン思想を再構築したLCが誕生した。 

LCの最終形ともいえる2026年モデル。いま見ても魅力的だ。

コンセプトカーが量産車を予告したのではない。コンセプトカーの魅力が、量産車を生み出したのである。

連載 あのコンセプトカー、どうなった?

by MotorFan
カーデザイン 1時間前

「量産するつもりはなかった」レクサスLF-LCが4年後にLCになった! 寸法が違うのになぜこんなに似ている?

by MotorFan
カーデザイン 2026.09.13

Microbus Conceptから21年。VWはなぜ「ワーゲンバス」を復活させるのにこれほど時間がかかったのか?

by MotorFan
名鑑 2026.09.06

新型パジェロの原点はELEVANCE Concept? 並べてわかった「似ていないのに、どこか似ている」理由