なぜ徒歩が基本? 避難時の車利用が原則禁止とされる理由とは

避難する親子
大規模な災害が起きたときの避難方法としてクルマの使用は認められていない。

日本は地震大国と呼ばれるほど日常的に地震の発生が多く、日頃から災害への警戒と十分な備えが欠かせない地域である。

それにくわえて2026年の夏は、全国各地で激甚化する大雨による道路の冠水や河川の氾濫といった水害が相次いで発生しており、迅速な避難行動を迫られる機会が格段に増加しているのが現状だ。

こうした大規模な災害が発生した際、いざ命を守るために避難を開始する場面で重要となるのが避難手段の選択である。

実は災害発生時の避難行動においては、車の使用は基本的に認められておらず、徒歩による避難が原則とされており、これは特定の地域に限った話ではなく、津波災害を想定した多くの自治体の防災計画に共通する考え方である。

倒れたクルマ
一斉にクルマで避難してしまうと障害物などのせいによって、渋滞や交通事故が発生する可能性が高い。

そこで知っておきたいのが、なぜ徒歩避難が原則とされているのか、その背景にある理由だ。

この方針が定められている理由としては、まず家屋の倒壊や落下物によって円滑な避難が妨げられるおそれが高いことや、多数の避難者が一斉に車を利用した場合、渋滞や交通事故が発生するリスクが高まる点も大きな理由として挙げられるだろう。

さらに、車の利用が徒歩避難者の円滑な移動を妨げる可能性があることも見過ごせない。

つまり車避難の原則禁止は、個人の安全確保だけでなく地域全体の避難効率を守るための方針だといえる。

車避難が認められる例外的なケースも

車
避難所までかなりの距離がある場合や自動車路が独立して存在している場合には車避難が認められている。

一方で、すべての状況において車避難が一律に禁止されているわけではない。

たとえば、時間的余裕がある遠地津波の場合は、車避難を禁止する必要はないとされているほか、近地津波であっても、自動車路と歩行避難路が交差しない場合には禁止する必要がないとの考え方が示されている。

くわえて、避難場所まで相当な距離があり渋滞や交通事故のおそれが低いと判断される場合も例外の対象となる。

福祉車両
歩行が困難で避難するためにはクルマを使用しなければならない場合にも車避難は認められる。

そしてもうひとつ重要な例外が、高齢者や障害者などの自力での歩行避難が困難な人に限定した車利用である。実際に、こうした課題を踏まえて政策的な見直しもおこなわれてきた。

国交省が公開する資料「自動車で安全かつ確実に避難できる方策」によると、2011年12月に修正された防災基本計画では、津波から避難するためやむを得ない場合に限定した車利用を認める記述が追加されている。

くわえて岩手県の地域防災計画では、避難場所までの距離や要援護者への配慮を踏まえ、やむを得ず車で避難する場合の安全方策を事前に検討することが明記された。

宮城県の津波避難施設整備指針においても、原則徒歩としながら、非住居区域での車避難を想定するなど、地域の実情に応じた対応が図られている。

防災
普段から災害が起きた時の避難手段について考えて備えておくと良い。

このように、車避難の可否は一律ではなく、地域特性や個人の事情によって判断が分かれる部分が大きい。だからこそ平常時から自治体の防災マップを確認し、指定避難場所までのルートや所要時間を把握しておくことが欠かせない。

家族構成や同居する要配慮者の有無なども踏まえ、自分たちに合った避難手段をあらかじめ話し合っておくことを心がけよう。