「10年」という数字そのものより、バッテリーが今どのような状態にあるのかが重要に

中古EVを選ぶ際、最大の不安材料になりやすいのが駆動用バッテリーだ。「10年も経てば大きく劣化し、交換が必要になるのでは」と考える人も少なくないだろう。

トヨタ bZ4X

とくに日産「リーフ」は2010年に初代が登場しており、中古車市場では10年を超えた車両も珍しくない。では、「EVのバッテリーは10年でダメになる」という話は本当なのだろうか。

結論からいえば、10年経過したからといって一律に使用不能になるわけではない。ただし、ガソリン車とは異なる中古車選びのポイントがある。  

リチウムイオンバッテリー

参考になるのが、車両データ分析を手掛けるGeotabが2026年1月に公表した調査だ。21車種、2万2700台を超えるEVについて実際のバッテリーデータを解析したところ、容量低下は平均で年間2.3%だった。2024年の調査で示された1.8%からは上昇しており、Geotabでは高出力DC急速充電の利用増加など、EVの使われ方の変化が影響しているとしている。 

ただし、年間2.3%だからといって「10年間で必ず23%低下する」と単純計算することはできない。バッテリーの劣化は一定ではなく、車種や電池の種類、充電方法、使用環境などによって変わるためだ。

そもそもEVのバッテリー劣化とは、多くの場合「突然壊れてクルマが動かなくなる」ことを意味しない。新品時より蓄えられる電力量が徐々に減少し、それに伴って満充電から走れる距離も短くなっていく。中古EVで重要なのは、何年乗ったかだけではなく、新車時に対して現在どの程度の容量が残っているかなのである。

メーカーの保証内容を見ると、その考え方がよくわかる。

トヨタ「bZ4X」の場合、駆動用バッテリーについてメーカー保証で8年・16万km、さらに「BEVバッテリーサポートプラス」で2年・4万kmをカバーし、合計10年・20万kmまで電池容量維持率70%を保証している。つまりメーカー自身も「10年経ったら使えなくなる」という前提ではなく、10年間使ったうえで一定の容量を維持することを保証の基準としているわけだ。  

日産リーフにも駆動用バッテリーの容量保証が設定されてきたが、年式や搭載バッテリーによって内容は異なる。中古車では「リーフだから何年保証」と一括りにせず、購入する個体の年式や仕様、保証が残っているかを確認する必要がある。

また、初代リーフが登場した15年以上前と現在では、バッテリーを取り巻く技術も変わった。3代目リーフでは、歴代モデルが採用してきた空冷式から水冷式へ変更。バッテリーを適温に保つ温度管理技術などによって、耐久性や急速充電性能の向上が図られている。単純にバッテリー容量を増やすだけでなく、電池を良好な状態で使うための技術そのものが進化しているのだ。

では、同じ「10年落ち・5万km」の中古EVなら、バッテリーの状態も同程度と考えていいのだろうか。

実際には、同じ年式、同じ走行距離でもバッテリーの状態が同じとは限らない。Geotabの調査では、100kWを超える高出力DC急速充電への依存度が高い車両では平均劣化率が年間最大3.0%程度だったのに対し、低出力充電を中心に使用した車両では約1.5%だった。充電環境によって約2倍の差が確認されている。  

使用環境も影響する。高温地域で使われたEVでは、温和な地域と比べて年間約0.4ポイント劣化率が高い傾向が確認されている。つまり年式や走行距離だけでは、そのEVがこれまでどのように充電され、どのような環境で使われてきたのかまでは判断できない。  

そこで中古EV選びで重要になるのが、「SOH(State of Health=バッテリー健全度)」である。

日産では2026年2月27日から、千葉日産自動車、日産サティオ千葉、日産プリンス千葉の3社と連携し、2代目リーフ(ZE1)を対象とした「日産バッテリー状態証明書」のトライアル運用を開始した。

証明書では、新車時を100%としたSOHに加え、現時点で想定されるバッテリー残容量や航続可能距離を確認できる。走行距離とは別に「電池そのものの現在地」を数字で判断できるわけだ。

トヨタも2025年10月生産のbZ4XおよびbZ4X Touringから、メーター上で電池の容量維持率を確認できるようにしている。こうした仕組みが広がれば、中古EVの選び方も変わってくるだろう。ガソリン車では年式、走行距離、整備履歴などがコンディションを判断する大きな材料となるが、EVではそこに「駆動用バッテリーが現在どれだけ健康か」という指標が加わる。  

中古EVを購入する際は、年式や走行距離だけで判断せず、保証の残存期間やバッテリー容量表示を確認し、可能であればSOHやメーカーによる状態証明、現在の満充電時にどの程度の航続距離を確保できるのかまでチェックしたい。

「10年落ちだから危険」「走行距離が少ないから安心」と単純に決めることはできない。初代リーフの登場から15年以上が経った現在、中古EVで見るべきなのは「10年」という数字そのものではなく、その個体のバッテリーが今、どのような状態にあるのかなのである。