そのデザインの基本にあるのは「ベッレッツァ・ネチェッサーリア(必要な美しさ)」
「クオーレロッソ(Cuorerosso)」の車名は、イタリア語で「心臓」を意味する「クオーレ」と、「赤」を意味する「ロッソ」を組み合わせたもの。アルファロメオは、このコンセプトカーを「イタリア」「スポーティさ」「赤」の3つをテーマにデザインしたとする。

アルファロメオは今後、複数のパワートレインに対応するアーキテクチャを使い、全長4.7mまでのモデルを主要なセグメントに展開する計画だ。パワートレインはBEV、プラグインハイブリッド、マイルドハイブリッド、フルハイブリッドを用意し、クアドリフォリオ仕様の設定も視野に入れる。クオーレロッソは、その将来のモデルに向けたデザインの考え方を示している。

デザインの基本にあるのは、アルファロメオが「ベッレッツァ・ネチェッサーリア(必要な美しさ)」と呼ぶ考え方だ。余分なものを取り除いて部品を必要最小限にし、残した部品にはそれぞれ明確な役割をもたせる。アルファロメオとマセラティのCEOを務めるサント・フィチリ氏は、こう話す。
「クオーレロッソで、私たちはアルファロメオらしさを未来へもっていきます。さまざまなエネルギーに対応しながら、テクノロジーも機能も品質も、常にエモーションと運転する楽しさのためにある。それが私たちの考えるベッレッツァ・ネチェッサーリアです」

開発の進め方にも、この考え方が表れている。チェントロ・スティーレは最初のスケッチに1〜2週間しかかけず、すぐに立体のモデリングに移った。最初は、ホイールもガラスもグラフィックもディテールもない、ひとつの塊としてクルマを扱い、テーマとプロポーション、ボリュームの検討に集中した。そこから余分なものを少しずつ取り除き、形を決めていった。
その結果、ボディはフロントからリヤまで途切れのない、一体の彫刻のような面で構成されている。

ボディサイズは全長4700mm、全幅1980mm、全高1331mm、ホイールベース2930mm。重量は1750kg。グランツーリスモの性格とスーパーカーの存在感を組み合わせた2+2クーペで、4座はいずれも独立したシートだ。
サイドには、フロントからリヤへ向かうウェッジラインを通した。ラインの終点は、アルファロメオが伝統的に採用してきた、後端を切り落としたテール形状「コーダトロンカ」だ。途切れのないボディ形状、コーダトロンカ、ボディに組み込んだ低いディフューザーの3つの要素によって、空気抵抗係数(Cd値)は0.28となっている。
リヤでは、リヤウインドウを盾形グリル『スクデット』の形にして、ボディのボリュームに組み込んだのが特徴。また、コーダトロンカの部分には円形のリヤランプを2灯収めている。


サイドのドアハンドルはなく、ドアはルーフに設けたタッチ式のスイッチで開ける。ウインドウはボディと面一で、ロゴもボディに組み込んだ。リヤドアは後ろ側にヒンジがあり、前に向かって開く。
ドアミラーにはイタリア国旗をあしらったインレイを並べ、形状はボリュームを分割する空力用のスラットをもとにした。見た目の重さと前面投影面積を減らし、空気を通すためだ。
ホイールは鍛造で、アルファロメオの「テレフォンダイヤル」型ホイールを再解釈した。3本のスポークに、6つの円形の開口部を2個ずつ配置している。スクデットの形をした開口部と三角形の溝で軽く見せ、空力性能も高めた。色はチタンをイメージしたもので、冷たいトーンに暖かみのある金属の反射を組み合わせている。



スクデットと左右のヘッドランプで伝統の「トリロボ」を表現。グリルは心臓の鼓動のように光る
フロントは、アルファロメオが「トリロボ(3つの葉の意)」と呼ぶ、中央のスクデットと左右の要素からなる伝統の構成を、スクデットと左右のヘッドランプで表現している。ヘッドランプは、あえて自然な比率にした一対の目のように見せた。クルマは冷たい機械であってはならず、見る人との関係をつくれるものであるべきという、アルファロメオの考えに基づいたものだ。
スクデットはボディのボリュームからそのまま立ち上がり、ボンネットに沿って後ろへ伸びる。水面を進むボートの航跡がモチーフだ。
グリルには、バックライトで光る小さな三角形の要素を並べ、アルファロメオのエンブレムにある十字とビショーネ(大蛇)の図柄を浮かび上がらせる。光は心臓の鼓動のように明滅し、ドライバーを迎えるウェルカムライトにも同じ動きを使っている。

33ストラダーレにならった水平なダッシュボード。メーターは2眼と1眼に切り替わる
インテリアは、ドライバー中心のレイアウトを重視した。シートは従来のバケットシートを現代的に解釈したもので、長いセンターコンソールとドアパネルの前後方向のボリュームが乗員を囲む。


ダッシュボードは、1967年の33ストラダーレと、近年発表された新しい33ストラダーレの構成をもとにしている。細く水平に伸びる形で軽さと安定感を表し、ドアパネルへ連続させて室内を広く見せる。
ドライバーの前には、アルファロメオ伝統の2眼のメーターフード(チャンノッキアーレ)を再解釈した「チャンノッキアーレ・ヴィヴェンテ」を置いた。可動式で、2眼の「インメルシーヴォ」と、ふたつが物理的にひとつにまとまる「コンチェントラート」の2つの構成を選べる。コンチェントラートは、昔のレーシングカーの簡素なメーターを思わせる構成だ。運転への集中度が高まるほど表示する情報を減らし、必要なものだけを残す。
ステアリングはステアバイワイヤ式で、伝統の3本スポークを現代的に再解釈した。操作部には物理的なスイッチを残し、触覚と音でフィードバックを返す。センタートンネルには、タッチ式の面とロータリーダイヤル、ドライブモードセレクター、トグルスイッチを組み合わせた操作部「マグマ・ディスプレイ」を配置した。

パワートレインの最上位としては、2.9LのV6フルハイブリッドに、四輪駆動の「Q4」、トルクコンバーター、カーボン製ドライブシャフトを組み合わせる構成を想定している。ドライブモードは「クルーズ」「スポーツ」「クアドリフォリオ」の3つを用意した。
角度によって赤から黒に変わる艶やかなボディ色「リキッドインクレッド」
ボディ色は新色の「リキッドインクレッド」。細かいアルミのベース層に、色の付いたクリア層を重ねている。光が当たると鮮やかな赤に見え、見る角度が変わると黒に近づく。

インテリアでも赤が主役だ。赤はドライバーに近いほど濃く、後席へ向かうほど暗く深い色に変わるグラデーションになっている。乗員が直接触れる部分に用いられるポルトローナ・フラウのヌバックも、手作業で色を付けて同じグラデーションを表現した。
素材には、チタン、アンスラサイト、ガンメタルの色調の金属と、高級内装材の加工で出た端材を60%含む再生レザーを組み合わせた。ダッシュボードには、ヨットレースチーム「ルナ・ロッサ」との共同研究から生まれた、軽くて透ける張りのあるモノフィラメントの生地を使う。外洋レース用のウエアの技術をもとにしたものだ。
センターコンソールは、起動するとマグマや溶岩をイメージしたテクスチャーの内側から赤い光が浮かび上がる。リサイクルのカーボンファイバーと赤い樹脂を組み合わせた複合素材にもトライしている。

ヘッドレストは、33ストラダーレで使ったのと同じ複雑な革加工でつくった。助手席側のダッシュボードには取り外せるバッグを組み込み、固定用のストラップがそのまま持ち手になる。
照明もドライブモードに合わせて変化する。コンチェントラートでは光を減らして気が散らないようにし、クアドリフォリオモードではさらに一部を暗くする。そのうえで、エアベントの4つの光の点でエンブレムの十字を表す。

クオーレロッソは市販を前提としたクルマではないが、ここで示したデザインの考え方は、全長4.7mまでの今後のアルファロメオに展開される。コーダトロンカやスクデットをどう現代の形に落とし込むかは、次の市販モデルを窺い知るうえでの手がかりになりそうだ。



