北米では日産リーフ、欧州ではルノー・セニックがベースのOEMモデルに

三菱自動車の公式サイトでは、エクリプス クロスについて「生産終了」と案内されている。PHEVは2025年8月、ガソリン車も2026年8月に生産を終了した。販売店の在庫状況によっては購入できるものの、2018年に日本へ投入された現行モデルは、その役目を終えることになった。

ところが海外に目を向けると、「エクリプス」の名前は消えるどころか、まったく異なる形で生き残っている。しかも北米と欧州では、それぞれ別メーカーのクルマをベースとする新型EVへと変貌しているのだ。

まず北米で登場したのが、2027年モデルの新型「エクリプス スポーツバック」である。その正体は日産からOEM供給を受けるEVで、ベースとなっているのは新型「リーフ」だ。

三菱  エクリプス スポーツバック

そして今回明らかになった価格には、少々驚かされる。エクリプス スポーツバックは3万7745ドル(約596万円)からで、別途1995ドル(約32万円)の配送費が必要となる。一方、ベースとなるリーフのエントリーグレードは2万9990ドル(約474万円)からで、配送費は1575ドル(約25万円)だ。

三菱  エクリプス スポーツバック

つまり、車両本体価格だけを比較すると、三菱版のほうが7755ドル(約123万円)も高いことになる。

ただし、リーフの最廉価グレードと装備を充実させた三菱版を比較した数字であり、同等装備同士の価格差ではない点には注意が必要だ。実際、エクリプス スポーツバックは装備を充実させた単一グレードで販売される。単純にリーフのエンブレムを三菱に交換しただけではなく、専用デザインのフロントマスクやバンパー、18インチアルミホイールなどを採用し、三菱らしい表情に仕立てられている。

インテリアは基本的にリーフを踏襲するものの、ブラックの合成皮革シートや前後席シートヒーターを装備。14.3インチのデジタルメーターと、同じく14.3インチのインフォテインメントディスプレイも備える。

さらに2600ドル(約41万円)の「テクノロジーパッケージ」を選べば、ルーフレール、ハンズフリー・パワーリフトゲート、10スピーカーのBoseプレミアムオーディオに加え、ボタン操作で透過状態を切り替えられる調光式パノラミックガラスルーフも装着できる。

パワートレインも基本的にリーフ譲りだ。75kWhの駆動用バッテリーを搭載し、前輪を駆動する電気モーターを採用。最高出力は約214hp、最大トルクは約353Nmとされる。

1回の充電で走行できる距離は、米国EPA基準で最大282マイル(約454km)。一方、ベースとなるリーフの上級バッテリー搭載車には、最大303マイル(約488km)の航続距離を実現する仕様も存在する。

ただし、リーフの航続距離はグレードや装備によって異なる。両車の数値を単純比較することはできないものの、三菱版が価格だけでなく装備や保証内容などで独自の価値を打ち出そうとしていることは確かだ。

充電方式は、普通充電用のJ1772ポートと急速充電用のNACSポートを採用。NACSではテスラのスーパーチャージャーを利用でき、最大150kWの急速充電に対応する。条件が整えば、バッテリー残量10%から80%まで約35分で充電できるという。

一方、欧州には北米版とはまったく別の新型「エクリプス クロス」が登場している。

2025年9月に発表された欧州版は、従来型の後継にあたるバッテリーEVだが、こちらも三菱の独自開発車ではない。アライアンスパートナーであるルノーからOEM供給を受けるモデルで、ベースとなるのは「セニックE-Tech エレクトリック」。フランスのドゥエー工場で生産されている。

三菱  エクリプスクロス BEV

欧州版は87kWhのバッテリーを搭載し、WLTPモードで約600kmの航続距離を実現。最高出力160kW、最大トルク300Nmを発揮するなど、北米版とは異なる性能を持つ。ただし、両車の航続距離は測定基準が異なるため、数値だけで優劣を判断することはできない。

三菱  エクリプスクロス BEV

つまり、現在の「エクリプス」を取り巻く状況はかなり複雑だ。北米では日産リーフをベースとする「エクリプス スポーツバック」、欧州ではルノーをベースとする「エクリプス クロス」。そして日本では、三菱が自社で生産してきた従来型エクリプス クロスが生産終了となった。

同じ「エクリプス」の名前を持ちながら、地域によって基本設計もパワートレインも異なるクルマになったわけである。

そこで気になるのが、日本でエクリプス クロスが復活する可能性だ。

現時点で三菱から日本向け後継モデルについての発表はない。ただ、三菱は近年、アライアンスを活用した商品ラインアップの拡充を進めており、北米では日産、欧州ではルノーから供給を受ける体制を構築している。仮に復活するとしても、従来型のような三菱独自開発車になるとは限らない。

なかでも興味深いのが、日産リーフをベースとする北米版だ。新型リーフ自体が日本でも販売されるモデルだけに、日産との協業によって三菱版EVを国内へ投入するという選択肢は考えられる。

ただし、その場合に大きな壁となりそうなのが価格である。北米での価格差(前述)に加えて、国内へ投入するならリーフとの差別化に加え、アウトランダーPHEVをはじめとする三菱SUVとの価格バランスも重要になるだろう。

欧州版についても、フランス生産車を日本へ輸入するとなれば、輸送コストや為替の影響を受ける。さらに、三菱が日本で「エクリプス クロス」という車名そのものを残すのかも、現段階では明らかになっていない。

日産版なのか、ルノー版なのか。それとも日本には別の後継車が用意されるのか。海外で2種類の新型EVが登場した今、日本市場における「エクリプス クロス」の次の展開が気になるところだ。