警察庁の目安には無理がある

歩道の幅の半分を占める植え込み。

2026年4月より、自転車の交通違反に青キップが導入されるようになりました。それにあたり、自転車は道路交通法上、車道の左側を走らなければならない、というルールが改めてクローズアップされています。しかも、クルマが走行中の自転車の右側を走る際は少なくとも1mの間隔を開けること、それが困難な場合は20〜30km/hの速度で運転すること、という目安が警察庁から発表されたため、「現実を無視している」という声が各方面から上がっています。

私も毎日のようにクルマを運転し、たまには電動キックボードも自転車も乗りますが、確かにクルマが警察庁の言うルールを守るのは現実的に不可能だと感じます。また、自転車や電動キックボードに乗っている時も、車道を走るとしばしば恐怖を感じるのが実情です。やはり、ちゃんとした自転車専用道を整備するのがまず先決だと考えます。

最近は自転車走行レーンが設けられている道が増えましたが、ほとんどは車道の左側にペイントで自転車のイラストを書いただけで、実質意味があるものではありません。これで自転車道だ、と言われても誰も納得できないでしょう。「仕方がないよ、日本の道は狭いから」という意見をよく聞きますが、本当にそうでしょうか? 私は日本の道を見て、かねがね疑問を感じていることがあります。それは「なぜ歩道にわざわざ植え込みを設けるのか」ということです。

植え込みをなくせば自転車専用道が作れるはず

なぜこんなに広い植え込みが必要なのか。この部分を歩道と自転車専用レーンに充てれば、格段に使いやすい道になるはずです。

日本の歩道にはかなりの割合で植え込み(植栽)があります。もちろんそれにはある程度の幅が必要ですから、ただでさえ狭い歩道の一部が植え込みに取られます。仮にこの植え込みをなくせば、そのスペースに自転車専用レーンを設けることができるのではないでしょうか。

また植え込みがあるために歩道が狭くなり、ベビーカー同士がすれ違えない、車椅子が通りづらいという歩道もたくさんあります。なぜ歩道が本来担うべき機能を犠牲にしてまで、植え込みを作るのでしょう。当たり前ですが、歩道は可能な限り広く確保するべきなのです(日本の道路にはさらに電柱というやっかいなものが存在しますが、電柱については改めて意見を述べたいと思います)。

植え込みは視界を遮り、危険を増やす

側道から大通りに合流しようと思っても、右から走ってくるクルマや自転車は植え込みに遮られてまるで見えません。本当に危険です。

植え込みのデメリットは歩道のスペースを使うだけではありません。緑とはいえ植え込みは壁のようなものですから、視界を遮ってしまうのです。側道から大通りに出る時、右側を見てクルマの流れを確認したいのに、植え込みがあるために大通りの様子がまるでわからない、そんな経験をしたことがある人は多いでしょう。

結局少しずつ前進して、できるだけフロントガラスに顔を近づけて、恐る恐る右側を確認することになります。多少低い植え込みなら走行するクルマの屋根くらいは見えますが、子供が乗る自転車などはまったく見えません。クルマが来ないから出ようと思ったら植え込みの影からいきなり自転車が出てきて焦ったという思いをした人もいるはずです。これは逆に言えば、大通りを走行するクルマや自転車からも側道から出てくるクルマが見えない、ということです。

ドライバーにとって視覚から得る情報は最も重要なものです。周りのクルマの状況はもちろんですが、歩道には今どんな人がどれくらい歩いているのか、ということも運転する上で重要な情報です。運転とはそれらの情報を常に意識・整理しながら行うものですから、車道と歩道を視覚的に分断する植え込みは交通安全を著しく阻害するものだと言っても過言ではないでしょう。

手入れを怠った植え込みは邪魔で美観を損ねる

また緑は成長するので、夏になるとだらしなく伸びきった植え込みが車道にまで進出し、自転車がそれを避けるために車道中央に大きくはみ出す光景もよく目にしますが、これも極めて危険です。もちろん伸びた植え込みは見苦しいですし、植え込みがあることで、そこにゴミを捨てる不届き者も少なからずいます。美観のために作られた植え込みが却って美観を損なうことになっているのです。

一体植え込みはどのような基準で設けることになっているのでしょうか。東京都に問い合わせたら、担当は「公園緑地部計画課道路緑化計画担当」という部署でした。そこによると、

・幅員3m以上の歩道には0.76mの植樹帯を設ける
・幅員6m以上の歩道には1.97mの植樹帯を設ける

ということでした。これは都道に限った話となりますが、幅が3m以上ある歩道には76cm以上の幅の植え込みが作られることになっているのです(現場によってこの限りではない場合もあります)。この基準は2年ごとに改定されることになっており、最近では横断歩道や交差点の手前5mまでの植樹の高さが最大80cmから60cmに変更されたそうですが、そもそも植樹帯を設けるべきかどうか、という議論にはなっていないようです。

植樹にも維持管理にも多額の税金

植え込みは定期的な剪定作業も必要です。その度に税金を使い、場所によっては交通渋滞も発生します。

もちろん植え込みはタダでは作れません。税金が使われているのです。その業者の選定は入札で決まるそうですが、一体どれくらいの費用がかかっているのでしょうか。少し前のデータですが、財務局のHPで見たところ、板橋区若木2丁目から3丁目までの植栽のケースでは、ハナミヅキやツツジなど、計1122本を植える工事が約1560万円で落札されています。地図で確認したら、おそらく環状8号線の約1.2kmの範囲のようです。また足立区谷在家1丁目から西新井本町2丁目までの約2kmの範囲に2404本の低〜高木(種類不明)を植える工事が、約1130万円で落札されています。

植栽にまつわる付帯作業の内容など、ケースによって金額はまちまちですが、決して安くはありません。都内全域なら相当な金額(税金)が植え込みに注ぎ込まれていることでしょう。また定期的に必要となる剪定作業にも多額の税金が必要です。まさか植栽業者を潤わせるためのシステムだとは思いたくないですが……。

つまり貴重な歩道のスペースを占領してその機能を損ない、交通安全上も好ましくないものを、わざわざ多額の税金を注ぎ込んで作っているのが歩道の植え込みなのです。緑が増えれば環境にもいいし、人々の心も癒されるだろう、というもっともな大義名分があるために、なかなか異議は唱えづらいでしょう。しかし現代の道路事情では歩道の植え込みは明らかに不合理で、デメリットが多すぎます。

自転車専用ルートを作っても、なお歩道に十分な広さがあるならば、視界の邪魔にならない範囲で植え込みを設けるのもいいでしょう。しかし、歩道には植え込みを設けるもの、という盲目的な考えはそろそろ改めてはどうでしょうか。道路と歩道の本来の目的とは何か、今一度よく考える必要があると思います。

車線を塞いで行われる工事。普通に運転していれば絶対に気付きます。(写真は記事の内容とは関係ありません)

工事現場の交通誘導員は即刻廃止すべし!「日本の道路を考える」【Chapter 2】

毎日何気なく使っている道路も、よく見るとふと疑問が湧くことがある。GENROQ永田元輔編集長が日々、クルマを運転し、道を歩き、自転車に乗って感じたことを語る。前回の植え込みに続く第2弾。今回は「道路工事の交通誘導員」について。