いすゞの決断と短かったスバルといすゞの蜜月

自動車に限らず、他社の製品を自社ブランドで販売を行うOEM(original equipment manufacturing)生産や販売を行うメーカーも多い。メリットとしてはコストを抑えて製品を供給できるため、とくに莫大な製造コストのかかる自動車業界では多くのメーカーが業務提携などでこのOEMを採用している。

現代ではトラックやバスといった商用車メーカーとして知られるいすゞも、過去には乗用車やSUVを生産していた。117クーペやジェミニ、ピアッツァ、ビッグホーンといった名車も数多くラインアップしていた。

「街の遊撃手」のCMで一躍話題を攫った2代目いすゞジェミニ(JT150型)。

一方メーカーとしては、当時の対米輸出の自主規制や円高に対処するべく、富士重工(現SUBARU)と業務提携し、米国インディアナ州ラファイエットに両社の合弁会社「SUBARU-ISUZU Automotive Inc」を設立。現地で両メーカーの生産拠点となった。ちなみに現在はSUBARU Indiana Automotiveへと名前を変え、スバル車の現地生産拠点となっているが、略称は変わらずSIAと呼ばれている。

SUBARU-ISUZU Automotive Inc
SUBARU Indiana Automotive

提携を強化したいすゞとスバルだが、お互いのラインナップの弱点を補う形で国内のOEM提携も開始。いすゞのライトバンとしてAP型レオーネを提供し、いすゞジェミネットIIとして販売。一方のスバルへはクロスカントリー4WDであるビッグホーンを供給した。

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https://motor-fan.jp/article/1462219/
『web option』による貴重なジェミネットIIの実車取材レポート。
スバル・ビッグホーン(1988年)

さらに1990年には初代レガシィセダンをいすゞアスカCXとして販売を開始した。
いすゞの乗用車ラインアップの中でも1983年に登場した初代アスカは、いすゞの世界戦略車としてセンセーショナルにデビュー。

いすゞアスカ

1.8Lと2.0Lのガソリンエンジンの他、2.0Lディーゼルが設定されたほか、いすゞオリジナルの5速ATである「NAVI5」を初搭載するなど、最先端技術を惜しみなく投入した意欲作であった。

「NAVI5」
「NAVI5」
いすゞ・NAVi5は本当に失敗作だったのか(その1)世界初のバイ・ワイヤー技術搭載の意義と成果|Motor-FanTECH[モーターファンテック]

今から35年前、いすゞ・アスカに搭載され登場を果たしたNAVi5。New Advanced Vehicle with Intelligentの頭文字をとって名付けられた同システムは、先例がなく、概念すら定まっていなかった自動制御に果敢に挑戦した意欲作だった。実現のためにはバイ・ワイヤー技術が不可欠。果たして開発陣はいかにしてNAVi5を仕立て上げたのか。

https://car.motor-fan.jp/tech/10009105
「NAVI5」のテクノロジーについてはこちら。

2代目で経営資源の集中という理由からアスカはOEMへ切り替え、商用車や当時人気のRVへと集中することとなる。

いすゞアスカは2代目で早くもOEM車に……ベースは初代レガシィ

アスカCXは登場時レガシィのVZをベースとした2.0にAWD(E-BCM型)とFF(E-BCL型)、4ATと5MTを設定したほか、レガシィViをベースとした1.8にFF(E-BCK型)の4ATと5MTをラインアップした。

いすゞアスカCX

1990年に登場したアスカCXはレガシィのマイナーチェンジに合わせるように発売からわずか1年となる1991年にマイナーチェンジ。

初代レガシィ(マイナーチェンジ前)。※写真はターボモデル
初代レガシィ(マイナーチェンジ後)。※写真はターボモデル

レガシィ同様エクステリアの刷新などが行なわれたほか、グレード体系も見直し、2.0L FF(E-BCL型)から5速MTを廃止。名称も「VZ」をベースとした2.0L DOHC車を「タイプZ」、新たにブライトンをベースとしたマイナーチェンジで追加された2.0L SOHC/FF/4速AT車に「タイプG」、ベースモデルを2.0Lの「Vi」から1.8Lの「Ti」へと変更したモデルに「タイプT」という名称が与えられた。

いすゞアスカCX

今回紹介するのはわずか1年間しか生産されなかったいすゞアスカCXの前期型、グレードは2.0のFF/4速AT(E-BCL型)だ。前述のとおり、ベースは初代レガシィセダンの「VZ」FFとなる。

アスカCX(取材車)の型式プレート。
FFなのでプロペラシャフト・リヤデフ・リヤドライブシャフトが存在しない。

パワーユニットは2.0L水平対向4気筒DOHCのEJ20D型。最高出力150ps・最大トルク171.6Nmを発生。FFモデルということもあり、車重が1240kgと軽量なため、さほど非力さを感じることはない。

比較的軽量なため意外とキビキビ走る。

エンジンもレガシィとスペックは変わらないものの、インテークマニホールド上にISUZUのプレートが付くなどOEMながらISUZU車であることがエンジンルームからもわかる。

EJ20D型1994cc水平対向4気筒DOHC16バルブエンジン。150ps(110kW)/6800rpm・17.5kgm(171.6Nm)/5200rpmのスペックに変更はない。

エンブレムだけじゃない?アスカとレガシィはここが違う!

エクステリアはフロントグリルやトランクに添えられるISUZUエンブレムのほか、車名やグレード名の入るリヤガーニッシュ、リヤクオーターウインドウ下のエンブレム、ホイールキャップ、さらにマニアックなポイントとしてはウインドウまわりのメッキガーニッシュがブラックアウトされている点がレガシィと異なる。とはいえ、ロゴやマークが異なるだけであり、ホイールキャップのデザインなどはレガシィVZ用そのままである。

フロントグリルのいすゞエンブレム。
トランクリッドのメーカーロゴとガーニッシュの車名と排気量(2.0)プレート。
リヤクォーターウインドウ下のエンブレム。フロント・リヤウインドウにメッキガーニッシュが無い点もレガシィとの違い。
ホイールキャップのデザインは共通だが、中央はいすゞの車名になっている。タイヤサイズは135/65R14。

インテリアもステアリングのISUZUマークを除けばレガシィVZそのもの。レガシィはセダンRSかツーリングワゴンGTといったスポーツモデルの人気が高く、ラグジュアリーモデルとして設定されたVZ系は、サポートもゆるく、クッション性の高いシートやライトグレー系の内装色は逆に新鮮に感じる。

いすゞアスカCXのコックピット。ステアリングのエンブレム以外はレガシィと共通。
いすゞアスカCXのフロントシート。スライドとリクライニング以外にもハイトとランバーサポート、ヘッドレスト角度の調整が可能。
いすゞアスカCXのリヤリーと。中央席のみ2点式シートベルトで、ヘッドレストも用意されない。

アスカも初代モデルにはスポーツバージョンが設定されていたことを考えるとRSとまでいかずともGTをベースにしたモデルがあっても面白かったかもしれない。

1985年のマイナーチェンジ後に追加されたいすゞアスカのスポーツモデル「イルムシャー」。2.0L直列4気筒SOHCターボエンジンを搭載。

ラグジュアリーグレードということもあり、装備関連はレガシィGT系にも負けず劣らずの充実装備で、赤外線リモコンドアロック、車速検知式集中ドアロック、照明付き助手席バニティミラー、フルオートエアコンといった当時としては豪華絢爛な装備は満足度が高い。

赤外線リモコンドアロック(黒い四角が受信部)。
照明付き助手席バニティミラー。
フルオートエアコン。純正オーディオはカセットデッキ+AM/FMラジオ。
開閉式のマニュアル操作パネル。

レガシィOEMは1世代限り……3代目からはホンダ・アコードに

OEMモデルとして登場した2代目アスカはCXというサブネームを与えられ、レガシィセダンをベースとしたが、登場から4年、1994年のフルモデルチェンジのタイミングでベースモデルを5代目ホンダアコードへスイッチ。CXというサブネームもなくなり、97年登場の4代目も6代目アコードをベースとしたモデルで販売し、2002年まで販売された。

3代目いすゞアスカとなる5代目ホンダ・アコード。
4代目位すずアスカとなる6代目ホンダ・アコード。

初代のいすゞオリジナルのアスカはディーゼルターボやNavi5を搭載し、2代目ではEJ20水平対向エンジンを搭載。さらに4代目ではVTECエンジンを採用するなど、世代ごとに各社のいいとこどりをした異端児といえるだろう。

NAの水平対向4気筒エンジンのエキゾーストパイプがうねる。

フォトギャラリー:いすゞアスカCX

ここまでの画像や、本文にはない画像はページトップの「この記事の画像をもっと見る(62枚)」で見ることができる。いすゞアスカCXのディティールを写真でさらにチェックしてみてほしい。おそらく、今、見ることができる一番詳しい内容になっているはずだ。

いすゞアスカCX