■軽自動車の新規格に対応して大きくなった3代目アクティ


1999(平成11)年5月27日、 ホンダは前年に施行された新規格に対応した3代目となる軽商用車「アクティ・トラック/バン」の発売を発表した(トラック:翌日、バン:6月25日)。3代目アクティ・トラック/バンは安全性能だけでなく、走行性能や居住性、乗降性、積載性など実用性についても向上を図った。
ホンダ初の4輪車T360を源流とするアクティ
2輪車で成功を収めたホンダが、満を持して初めて市場に送り込んだ4輪車はスポーツカーではなく、1963年8月に登場した軽トラックの「T360」だった。

軽トラT360のパワートレーンは、国産車初のDOHCエンジン、最高出力30ps/最大トルク2.7kgmを発揮する360cc 直4 DOHC水冷4ストロークエンジンと4速MTの組み合わせで、最高速度は100km/hに達した。トラックながら2輪で培ったハイスペックな技術が存分に生かされていた。
駆動方式は、スポーツカーで採用されることが多い、エンジンを前車輪の後方で運転席の下に搭載されたMR(ミッドシップ)。MRにすることで、広い荷室と運転に有利な前後重量配分を実現することを狙ったのだ。
T360は、1967年に「TN360」、1970年には派生車「バモス」へと進化を続け、1977年7月に初代アクティとなる「TN-アクティ」が軽の排気量規格が550ccになったタイミングでデビューした。2人乗りのトラックであり、荷台まで一体化したモノコック構造を採用して、軽量かつ高剛性が特徴だった。
パワートレーンは、最高出力28ps/最大トルク4.2kgmを発揮する新設計の550cc 直2 SOHCエンジンと、5速/4速MTおよび3速ATの組み合わせ、駆動方式はMRだった。また、MRレイアウトにトランスミッションとデファレンシャルギヤが一体型のトランスアクスルを採用。この構造は、スポーツカーに多く採用されており、“農道のフェラーリ”と呼ばれることがあった。
3気筒エンジン、リアルタイム4WDが設定された2代目アクティ
「アクティ」は、11年ぶりのモデルチェンジで1988年5月に2代目へ移行した。2代目アクティは最新の技術を投入し、機能を大幅に向上させた。

エクステリアは、キュービックなボディをベースにスッキリとした開放感あふれるスタイリングを採用、バンについては積載効率にすぐれたハイルーフが設定された。インテリアについては、運転のしやすさと広く快適で機能性が追求された。
パワートレーンは、新開発の34ps/4.5kgmを発揮する550cc 直3 SOHCエンジンと5速MTおよび新設計の3速ATの組み合わせ。実用域での扱いやすさはもとより、力強い発進となめらかな高速走行に加えて、MRリアドライブ方式により、優れた操安性と静粛性は商用車の域を超えていた。
駆動方式については、従来のMRに加えて、キャブオーバータイプ軽商用車で初のビスカスカップリング付リアルタイム4WD車を設定。坂道や雪道、泥道などの路面変化に合わせ瞬時に駆動力を前後輪にバランスよく配分し、安定感のある走りと高い走破性が実現された。
なお、1990年1月には軽の規格変更に合わせて、マイナーチェンジでエンジン排気量が660ccに拡大された。
フルキャブスタイルからセミキャブに変わった3代目アクティ


1999年5月のこの日、「アクティ」は3代目にモデルチェンジすることを発表。トラックは翌日、バンは6月25日から発売された。
その前年1998年10月には、安全性強化のために現行の軽自動車規格となる規格改定が施行された。従来の規格から全長が100mm、全幅が80mmそれぞれ拡大された(全高は変わらず)ことに対応して、このタイミングでアクティもモデルチェンジしたのだ。



3代目アクティは、安全性確保のためクラッシャブルゾーンを車両前部に設ける必要があったため、ボディタイプは、先代までのフルキャブ(前席が前輪の直上にある)からセミキャブ(前輪は前席より前)に変更され、結果としてホイールベースが延びた。さらに引き続きMRレイアウトが採用されたことから、操縦安定性に加えて直進安定性や乗り心地も向上した。

パワートレーンは、最高出力46ps/最大トルク6.0kgmを発揮する660cc 直3 SOHC PGM-FI(燃料噴射)エンジンと、5速MTおよび3速ATの組み合わせ。駆動方式は、引き続きMRとリアルタイム4WDが用意された。
3代目アクティの車両価格は、72.0万~98.3万円(トラック)/88.9万~109.1万円(バン)に設定。当時の大卒初任給は19.0万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約87万~119万円/108万~132万円に相当する。
・・・・・・・・・・・
3代目アクティは、ボディがセミキャブに変更されたことから、室内や荷室が犠牲になり、また高額だったため人気はやや伸び悩んだ。とはいえ、アクティはその後も堅調な販売を続けたが、近年になって排ガス規制対応や自動ブレーキ義務化対応などで収益が見込めないと判断したためか、2021年4月に生産を終えた。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。




