原付シーンが大きく変わった転換点
2002年に登場したスマートDioシリーズは、それまでのDioとはひと味違う存在だった。2ピース構造のU字断面アルミダイキャストフレームに水冷4ストエンジンを搭載し、軽量化と環境性能を両立。中でも上級スポーツグレードとして設定されたのがZ4である。
当時はまだ2ストスクーターが元気だった時代。だからこそ「Dioもついに4ストか」「エコの時代が来たな」と感じた人も多かったはずだ。実際、ホンダは1997年に二輪車の4ストローク化を打ち出し、環境性能向上に本格的に取り組んでいた。2002年度末には一部特殊車両を除く市販二輪車の4スト化をほぼ完了。スマートDioシリーズも、そんな時代の流れの中から生まれたモデルだった。


とはいえ、水冷4ストエンジン自体はすでにクレアスクーピーで実績があり、アルミフレームもスマートDioシリーズ共通の特徴。本当の見どころは、実はもう少し先に待っていた。それが2004年に登場したAF63型だ。原付の未来を変える技術革新は、ここから本格的に始まるのである。
ホンダの技術力はすごかった
後期型Z4最大のトピックは、量産車世界初となる4スト50cc用電子制御燃料噴射装置「PGM-FI」の採用だ。ホンダは1982年、世界初の量産FI二輪車となるCX500ターボへ電子制御燃料噴射を採用。その後は大型車から125ccクラスまで搭載車種を広げてきたが、ついに最も身近で販売台数の多い50ccスクーターへ、その技術が投入されたのである。しかも採用時期はビッグスクーターのフォルツァより約2か月早い。さらに50ccスクーターとして世界初となる水冷4バルブヘッドまで採用し、当時のホンダ最新技術の見本市ともいえる一台となった。
開発陣が目指したのは、単なる排ガス対策ではない。排出ガスのクリーン化、燃費向上、動力性能向上、低温時や長期放置後の始動性向上、そして気候や標高に左右されない扱いやすさ。そんな欲張りな目標を、小さな50ccスクーターで実現しようとしていたのである。その成果は数字にも表れている。PGM-FI化によって排出ガス中のCO(一酸化炭素)やHC(炭化水素)は従来モデル比で約半分まで低減。それでいて30km/h定地走行燃費は前モデル比で約7%向上した。スペック上の燃費は80km/Lを達成し、カブやモンキーには及ばないまでも、スクーターとしては驚異的な数字だった。
さらに4バルブ化にあたっては、バルブ駆動にローラーロッカーアームを採用してフリクションを低減。PGM-FIによる緻密な燃料制御や吸排気系の見直しと組み合わせることで、最高出力は従来型から0.3psアップした。数値だけを見ると控えめに感じるかもしれないが、低回転域から力強く加速し、高回転までスムーズに伸びるフィーリングは確かな進化だった。
もちろんチューナーたちを悩ませた部分もある。4スト以降はケース一体シリンダーとなり、ボアアップは難しくなった。さらにFI化によって、それまでの2スト&キャブレター時代の定番チューニングも通用しなくなってしまったのである。それでもズーマーへのエンジンスワップ素材(2バルブ→4バルブになる)として人気を集めたことからも、このエンジンの完成度の高さがうかがえる。
そして忘れてはいけないのが、当時のホンダが環境性能や燃費向上にも本気だったこと。1999年にはジョルノクレア・デラックスへ量産車初のアイドリングストップ機構を採用している。パワー直結ではないから地味に見えるけれど、こうした積み重ねがあったからこそ、スマートDio Z4のような先進的な原付が生まれたのだろう。今振り返ると、2000年前後のホンダ原付は実におもしろい。環境性能を高めながら燃費を伸ばし、始動性を向上させ、それでいて走りも妥協しない。そんな難題に本気で挑み続けていた。スマートDio Z4は、時代の熱気と技術力を今に伝える“小さな未来”だったのである。
世界初PGM‐FIシステム
50ccスクーター世界初水冷4バルブエンジン
U字断面アルミダイキャストフレーム
主要諸元

SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高:1710×630×1010mm
ホイールベース:1190mm
シート高:710mm
車両重量:81kg
エンジン種類:水冷4スト4バルブ単気筒
総排気量:49cc
最高出力:5.3ps/8000rpm
最大トルク:0.49kgm/7500rpm
燃料タンク容量:4.8L
燃費:80km/L(30km/h定地走行)
ブレーキ:(前・後):ディスク・ドラム
タイヤ:(前・後):90/90-10・90/90-10
価格:19万9000円
※スペックは04年モデル
※この記事は月刊モトチャンプ2025年3月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】


