あえてマイナーなコロナを選択!
昭和の大衆車を現代仕様へアップデート
レストモッド、スリーパー、ネオクラシック。近年の旧車チューンを象徴するキーワードが、これほど似合う一台も珍しいだろう。程よくヤレた外観と低く構えたスタイルからは、かつて峠を駆けた走り屋の姿が自然と重なって見える。
ベースとなるのは1984年式の7代目トヨタ・コロナ(AT141型)。当時の日産ブルーバードと競合した大衆セダンでありながら、4A-Gエンジンを搭載するスポーツグレードも設定されていた、通好みのモデルだ。

オーナーの竹繁さんは筋金入りのプライベーターとして知られる存在。アルテッツァ用3S-GEと6速MTを移植したダルマセリカや、EP82スターレットを4WDからFRへコンバートするなど、常識にとらわれないマシンをDIYで製作し、公認取得まで自ら行ってきた。
その技術力は趣味の領域に留まらない。本業ではGCGターボのワークショップスタッフとして、ターボチャージャーのオーバーホールやハイフロー加工を担当するエキスパートエンジニアだ。大掛かりな作業は長年付き合いのある茨城県の浅野自動車の設備を借りながら進めており、GCGターボと浅野自動車の理解と協力にも感謝しているという。

そんな竹繁さんが次なるベース車両として選んだのが、このAT141型コロナだった。旧車価格が高騰する以前に手頃な価格で入手できたことも理由のひとつだ。


心臓部にはVVT-i仕様の1JZ-GEを搭載。ドナーとなったクラウンから純正ECUやハーネスごと移植し、当初は純正制御のまま完成させた。
以前の製作車両ではCAN通信世代の制御移植に苦労した経験があり、今回のエンジンスワップは比較的スムーズに進んだという。2.5リッター直列6気筒が生み出す余裕あるトルクを楽しんでいた竹繁さんだったが、2024年にさらなる進化へと踏み切る。


導入したのはハルテック製フルコン「Elite 750」。さらに以前から温めていた構想である、ホンダCBR954RR用スロットルを流用した6連スロットル化にも着手した。

片バンク用スロットルを3基使用するため、中古スロットルを3台分確保。そこから6基を選び出し、専用フランジやインテークマニホールドをワンオフ製作した。さらに制御系にはハルテックのIC-7デジタルモニターを組み合わせ、昭和の大衆車とは思えない近代的なエンジンマネジメントシステムを構築している。
ちなみに国内では情報量の多いLINKを選択するケースが一般的だが、あえてハルテックを選ぶあたりも竹繁さんらしいところ。英語のマニュアルやWEB上の技術資料を読み込みながらセットアップを進め、最終セッティングは勤務先であるGCGターボのシャシダイを使用して自ら仕上げたというから驚かされる。

エンジン搭載位置にも独自の哲学が込められている。一般的には重心を下げるため、できるだけ低く後方へ搭載するのがセオリーだ。しかし竹繁さんは、あえて高めかつ前方にセット。その理由は、ドリフト走行時にオイルパンを路面へヒットするリスクを軽減するとともに、R154ミッションとフロアの干渉を最小限に抑え、車検対応を容易にするためだ。

足元には前後8.5J×14インチのRSワタナベRタイプを装着。タイヤサイズは185/55R14で統一し、フロントにはブリヂストンRE-71、リヤにはアジアンタイヤを組み合わせるなど、エンジョイドリフト仕様らしい実戦的なセッティングが施されている。


室内にはAAR製リクライニングバケットシートを装着し、当時らしい雰囲気を演出。一方で、ハルテックIC-7デジタルモニターを組み合わせることで新旧のテイストを巧みに融合している。まさにレストモッドという言葉がふさわしいコクピットだ。

エンジン本体にはまだ手を加える余地が残されている。しかし竹繁さんは、すでに次なるプロジェクトのためのベース車とドナー車を確保済みだという。
誰も選ばない素材を選び、誰も思いつかない手法で仕上げる。そんなプライベーター精神によって、このAT141型コロナは唯一無二の魅力を放つ一台へと生まれ変わったのである。


