GReddy RXシリーズを生んだ男の愛機!
趣味だからこそ、誰より自由にRB26の可能性を追求!
1990年代に加速したGT-Rチューニングの歴史を語るうえで、BNR32ベースの「GReddy RX」や、BCNR33ベースの「GReddy RX S/ROC」といった、トラストが製作したデモカーの存在は欠かせない。当時、GT-R開発の最前線でチームを牽引し、ツインリンクもてぎで開催された「ストリートシュートアウト・ファイナル」にも参戦していたのが、パーツメーカー・トラストに勤める川端さんだ。

しかし意外にも、川端さんはもともとGT-R派ではなかったという。
「トラストへ入社した頃は、どちらかと言えばアンチGT-Rでした(笑)。打倒GT-Rを掲げて、キャブターボ仕様のSA22Cや、5Mエンジンに換装したマークIIバンなどで、首都高や近郊のゼロヨンスポットを走っていましたから」。

そんな川端さんの価値観を大きく変えたのが、トラストがBNR32ニスモを導入し、本格的な開発へ乗り出したことだった。GT-Rの圧倒的なポテンシャルに魅了され、自身も約30年前にBNR32を購入。それ以来、長年にわたってチューニングを重ね続けてきた。
時には開発車両のバックアップマシンとして活躍し、「トラストゼロヨン」などのイベントにも参戦。まさに仕事と趣味の境界を越え、ともに歩んできた愛車なのである。
今回、このBNR32を「ストリートシュートアウト・ファイナル」へ持ち込んだのも、あくまで仕事ではなくプライベートでの参戦だった。


「もてぎ開催が今回で最後ということで、8年ぶりに走ろうと思いました。シュートアウトでの自己ベストは7秒98ですが、今回は8秒8止まり。やっぱりブランクがあった分、感覚が鈍っていましたね」。
そう笑顔で振り返る川端さんだが、そのBNR32のエンジンルームを見れば、開発者らしい探究心が今なお健在であることは一目瞭然だ。
搭載されるRB26DETTは、トラスト定番の2.7Lキットとハイカムを組み合わせた仕様。インジェクターの大容量化に加え、クランク角センサーを廃止して別体センサー化するなど、LINK Furyによるフルコン制御へとアップデートされている。
以前はロムチューン+追加インジェクターという、まさに当時らしい制御だったが、現代のフルコンは制御能力が飛躍的に向上。大容量インジェクターも難なく扱えるようになり、「GT-R新車当時とはまったく別物」と言えるほど、エンジン制御の自由度は高まっているという。

そして最大の見どころが、トラストの現行ラインアップにも存在しない超大型タービンだ。
装着されているのは、三菱製TD09-40QR。当時、R33時代にテスト用として一度取り寄せたものの、「大きすぎる」という判断から商品化には至らなかった幻のモデルだ。1200psオーバーを狙えるほどの風量を持ち、160φという巨大なインレットパイプが強烈な存在感を放つ。ちなみに、このシリーズにはさらに大型となるTD09-45Mも存在しているという。
「当時は制御技術もセッティングも追いつかなかったんですが、今なら使いこなせると思って、改めて取り寄せて試してみました。ブースト2.2キロで980psくらい。まだ積極的なセッティングはこれからですが、今なら十分可能性があると思います。商品化を前提にした開発ではありませんが……提案くらいはしてみようかな(笑)」。

8年前まではT88H-38GKタービンとトラスト製6速Hパターンミッションを組み合わせていたが、ハイパワー化によってミッションがブロー。現在はOS技研製シーケンシャルトランスミッションへ変更し、耐久性と素早いシフトワークを両立している。


熱対策も抜かりはない。フロントグリルいっぱいに収まる大型コアのGReddyオイルクーラーを装着し、高出力時の油温管理を徹底。マフラーもワンオフ製作による砲弾タイプを採用している。

一方で、「あくまで趣味」という部分も随所に見られる。
例えば装着されるタイヤは、年季の入ったフージャー製ドラッグラジアル。そのコンディションも、今回タイムが伸び悩んだ一因かもしれないと、川端さんは笑う。

もともとドラッグ専用車ではなく、オールマイティなストリートチューンドとして製作されたこともあり、ブレーキにはGReddy製6ポットキャリパーを装着。パワーアップに合わせた十分な制動力も確保されている。
ボディにも、GT-Rパーツ開発担当者ならではの哲学が詰め込まれている。
RXシリーズの開発当時、未補強ボディでの開発に苦労し、恐怖すら感じた経験から、自身のBNR32は購入直後にフルスポット増しを施工。開発ドライバーとして数々の車両を走らせてきたからこそ、ボディ剛性の重要性を誰よりも理解していたのだ。


ダッシュ貫通式ロールケージもボディ剛性の向上に大きく貢献しているが、もともとストリートカーというコンセプトだったため、ダッシュボードなどの内装は純正を基本としている。
センターコンソールには追加メーターをGReddy RXと同じレイアウトで配置。まさに当時のデモカーを彷彿とさせる雰囲気を再現している。ボディサイドに貼られた「GReddy RX」のストライプも、開発担当者として歩んできた歴史と誇りを物語るものだ。
そう考えれば、このBNR32は“現代版GReddy RX”と呼んでも、決して大げさではないだろう。

現在は一時抹消登録となっているものの、今回の仕様変更と整備を経て、公道復帰も視野に入れているという。
「あくまで趣味です」と語る川端さん。しかし、約30年前に「大きすぎる」と判断したタービンを、現代の制御技術で改めて検証しようとする姿勢は、まさに開発エンジニアそのものだ。
GT-Rチューニング黄金期を築いたレジェンドの探究心は、30年という時を経た今も、衰えるどころかさらに熱を帯びている。
●問い合わせ:トラスト TEL:0479-77-3000
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トラスト
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