一球入魂のマスターピース!

16年もの歳月をかけて完成した珠玉のFD3S

学生時代に買った1台を、生涯のプロジェクトカーとして育て続ける…、そんなオーナーに出会うことがある。カリフォルニア州在住のマイク・ウェドルは、まさにそのタイプの“ロータリーガイ”だ。

大学時代に購入したFD3S型RX-7を、最初の2年間はごく普通に乗っていたマイク。しかし徐々にカスタマイズの方向に傾き、まずは13Bのシングルターボ化に着手した。

そんな折、かつてオートエクゼが手掛けたという20B型3ローターエンジンが地元で売りに出されているのを発見。「これだ!」と購入したのが大きな転機となる。

「実際に届いた20Bはひどい状態で、売り手ともすぐ連絡がつかなくなってしまった(笑) そこで、ロータリーの評判が高かったミシガン州のチップス・モータースポーツにオーバーホールを依頼して、ようやく今のエンジンのベースが形になったんだ」。

その後、FD3Sを丸ごと預けられるショップを探すも見つからず、時間だけが過ぎていった。しかし、サンディエゴの『OMD(オオツカ・マックスウェル・デザイン)』との出会いが流れを変える。

OMDのマーティン・オオツカは日本出身のファブリケーターで、ドリフト経験も豊富。相方のスティーブ・マックスウェルはフェラーリを知り尽くしたスペシャリストで、あらゆるパーツをCNCで削り出す“マジシャン”でもある。普段はフェラーリの整備を行う彼らだが、ときに和洋折衷のオリジナル車両も製作する。

マイクのFD3Sを預かった当初はロータリーの知識こそ少なかったが、すぐに研究熱心さを発揮。マーティンがクロモリ製チューブラーフレームを製作し、スティーブは独自設計のアルミ削り出しインテークマニホールドを創り上げた。

さらに、等長ターボマニホールドのコレクターやインタークーラーのサイドタンクもCNCで削り出し、フェラーリ用のバッフル内蔵タンクを流用したドライサンプシステムも構築するなど、斬新なアイデアと職人技を駆使している。

20Bエンジン本体はシリーズ5のローターハウジングとシリーズ4のローターを使って組み直された。ローターはCNC加工で軽量化され、1万rpmを許容するバランス取りも実施されている。

タービンはギャレットGTX4294Rで、タービンハウジングはA/R 1.01のTiAL製。ワンオフのアッパー側インテークマニホールドには電子制御スロットルを備え、サージタンク内部には管長違いのファンネルを配置し、吸気の均一化を図る。

TiCON製パイプを溶接したチタンパイピング、Vマウントレイアウトも見どころだ。インジェクターは2600cc、制御はハルテック・ネクサスR5でフレックスフューエルにも対応。最高出力は約743ps、最大トルクは約67.5kgmに達する。

そして最近行った仕様変更が、BMWの7速DCTへのコンバート。Hotel7というブランドのアダプターキットを使って20Bと接続し、エキセントリックシャフトとDCTのクラッチユニットを結ぶ軸上には、変速ショックをやわらげるクラッチマスターのDCT用ダンパーハブも備える。

制御はCANTCUのトランスミッションコントローラーで行ない、Track Formulaのパドルシフト、DCT Shifterのシーケンシャルシフターのどちらでも変速できるようにした。

OMPのステアリングには各種スイッチとパドルシフトが備わるボタンプレートを装着。シフターでも変速可能だが、主にリバースに入れる時だけ使っているそうだ。

メータークラスターにハルテックのIC-7を備え、各種電装品を動かすキーパッドは頭上にレイアウトした。シートはレカロのプロレーサーRMSを2脚揃え、後方にはRogue Motorsportsの4点式ロールバーを装着。リヤウインドウごとハッチ全体がカーボンパネルになっているため、後方視界を得るのにルームミラー型のリヤビューモニターも備えている。

ホイールはアドバンGTの18インチ、タイヤはナンカンCRS V2。サスペンションはジール・スーパーファンクションXに、スーパーナウのアーム&ピロをセット。ブレーキはAPGパフォーマンスの鍛造キャリパー+2ピースフローティングローターのコンビだ。

駆動系はF82型M4の7速DCTに、2004年式のマスタングコブラ用8.8インチデフとOS技研の1.5ウェイLSD、ドライブシャフトショップのカスタムアクスルを組み合わせる。

外装は日本のタイムアタックマシンをモチーフに、RE雨宮のフロントバンパーやアンダースウィープ、ディフューザー、レディーゴーネクストのカーボンボンネット、乱人フェンダー、エスプリのカーボンウイングを装着。

「DCTを選んだのは、ロサンゼルスの渋滞があまりにひどいから(笑) 気づけば39歳になって、結婚して家を買い、子供も2人生まれた。でもプロジェクトカーはずっとこの1台。日本にはこれまで3回来ていて、新婚旅行でも行ったけど、現地で見たタイムアタックマシンがとにかくかっこよくて。だから足回りや外装にはそのイメージを反映させたんだ」。

過激なルックスに反して柔和な笑顔が印象的なマイク。デイリーカーとして手に入れたFD3Sを本格的に弄り始めて16年。遠回りもあったが、今の芸術的な完成度は、彼の“ 一球入魂 ”が結実したものだ。

PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI

「高橋啓介FD3Sとは違う進化形!」3ローターNAで突き詰めたもうひとつのRX-7チューニング到達点

鋭く吹け上がるロータリーサウンドと、思い通りにノーズが入るコーナリング性能。『頭文字D』で描かれたFD3Sの魅力は、多くのファンの記憶に刻まれているはずだ。だが、その世界観をさらに一歩押し進めた存在がある。3ローター自然吸気という異端の選択で仕上げられた、RSパンテーラのFD3Sだ。