AESCのバッテリーは、BMW「ノイエクラッセ」に搭載されることになる。

AESC(アエスク)は、もともと2007年に日産自動車とNECの合弁会社「オートモーティブエナジーサプライ」として設立された、BEV用バッテリーのパイオニア的存在だ。初代「日産リーフ」へのバッテリー供給でその歴史をスタートさせ、長年にわたり量産BEVで培った高い安全性と信頼性で知られている。創業以来、バッテリーが原因となる重大な市場事故ゼロという実績は、その技術力の高さを物語っている。

2019年からは、再生可能エネルギー事業を手掛ける中国のエンビジョングループの傘下に入り、グローバルな事業展開を加速。現在も日本に本社を置きながら、日米欧中に生産拠点を拡大し、地産地消の供給体制を構築している。日産との強固な関係は継続しつつ、現在はホンダやBMWといった世界の大手自動車メーカーにも供給網を広げるなど、グローバルなバッテリーメーカーへと成長を遂げている。

BMW「ノイエ・クラッセ」が選んだ次世代バッテリーの実力

今回AESCが量産を開始した46120大型円筒形バッテリーはBMWの次世代EV群に搭載される見通しで、その先駆けとして、先日発表された新型X5シリーズのEV「iX5」(「ノイエ・クラッセ」プラットフォーム)に新型バッテリーを搭載するの第一弾モデルとなる。

この新型セルの技術的な注目点は、エネルギー密度の向上にある。従来セルと比較して約30%も向上し、重量エネルギー密度は最大310Wh/kgに達するという。これは、BEVの航続距離を飛躍的に伸ばすポテンシャルを秘めているといえるだろう。この高エネルギー密度を実現するため、正極にはハイニッケル材、負極にはシリコン添加材という最新の材料技術が投入された。

「46120」サイズがもたらす構造革命

「46120」という数字は、セルの直径が46mm、高さが120mmであることを示す。従来の小さなセルを多数組み合わせる方式に比べ、セル1つあたりの容量が大きい大型セルは、バッテリーパック全体で必要となるセルの総数を減らすことができる。

これにより、セルを接続するための部品点数や管理系統が簡素化され、システムとしての統合効率が向上するとみられる。さらに、バッテリーパックの軽量化とコスト削減に繋がり、さらに車両のパッケージング自由度を大きく向上し、特にスペース効率が求められるプレミアムEVや大型SUVにおいて、大きなアドバンテージとなるはずだ。

日本のモノづくりを象徴する徹底した品質管理で、BEVの未来を支えるグローバルサプライヤーへ

高性能化とともにAESCが強調するのが、その徹底した品質管理体制だ。最先端の生産拠点では、生産プロセス全体で1000カ所以上ものCCDカメラによる画像検査を実施。さらに、「異物混入を決して許さない」という意志のもと、すべてのセルに対して全数X線検査を行なうなど、徹底している。

最新の高速ポジショニングシステムや搬送システムを組み合わせた高精度な生産設備により、公差0.01mm以内という寸法精度を実現した。これにより、大規模な量産においても均一で高い品質を確保している。こうした品質へのこだわりは、まさに日本のモノづくりの真骨頂と言えるだろう。

AESCは既に日本、中国、米国、英国、フランス、スペインにまたがるグローバルな生産ネットワークを構築しており、世界中の自動車メーカーに対して、現地生産による安定供給と強固な品質体制を提供していく。今回のBMWとのパートナーシップは、AESCが持ちうるバッテリー技術と生産能力が高く評価された証左だ。AESCグローバルCEOのデビッド・ワン氏が述べるように、同社は今後も高効率な量産体制と実績あるバッテリー技術を武器に、世界の完成車メーカーに競争力ある次世代BEV開発をサポートしていく構えだ。