連載

【歴史を飾ったライバル対決】

アメリカ西海岸の若者が火をつけたステーションワゴンブーム

日本の自動車黎明期には、商用車バンの需要が高かったことから、セダンとともに必ずバンが設定され、その乗用登録という形で乗用ワゴンも設定されることが多かった。

1962年デビューの日産「ブルーバード・エステートワゴン」

バンベースの乗用登録車でなく、1960年7月にデビューした日産「ブルーバード・エステートワゴン」は、セダンシリーズの独立したステーションワゴンとして登場。以降は、商用車バンのイメージとは距離を置いた、セダン派生のステーションワゴンが多くの人気モデルに設定されるようになった。

一方、世界の若者文化の発祥地であるアメリカの西海岸カリフォルニアでは、1960年代~1970年代にはステーションワゴンやバン、ピックアップをドレスアップしてお洒落に仕立てることが若者に流行した。特にサーファーたちが、サーフボードをルーフに積んだ大型のステーションワゴンでビーチに通う姿が、当時のカリフォルニアの若者文化の象徴だった。

そのようなカリフォルニア文化が、映画やTVドラマでオールデイズと呼ばれた音楽とともに日本へ紹介されると、日本でもそんなライフスタイルやお洒落なステーションワゴンに憧れる若者が増えた。この影響で1970年代には、日本でもアウトドアやアウトドアスポーツで楽しめるお洒落で快適なステーションワゴンを求める声が上がったのだ。

日本に上陸したカリフォルニア風ステーションワゴン

そうした時代背景のなか、1970年代に日本でアメリカのステーションワゴンを意識したモデルも登場し始めた。当時のアメリカのステーションワゴンには、必ずと言っていいほどウッディサイドパネルが使われていた。黎明期の米国のクルマには、馬車製作のノウハウを生かしてボディの一部に加工の簡単な木材が使われており、特にステーションワゴンにはボディ後部を木製にしたものが多かった。その名残から、ウッディ(ウッド調)サイドパネルはアメリカのステーションワゴンの象徴的な装飾になったのだ。

1979年に発売された日産430型「セドリック・ワゴン 200E」

日本のステーションワゴンにも、ウッディサイドパネルを装備したステーションワゴンが登場した。その代表が、1979年1月にデビューした日産「サニー・カリフォルニア」である。車名は、アメリカの最も新しい文化と風俗を生み出す、若々しく自由で明るいカルフォルニアの地のイメージを託して命名したとされる。同じく、1980年1月にデビューしたホンダ「シビック・カントリー」にもウッディサイドパネル調仕様のモデルが用意された。

その後、日産の「ブルーバード」や「スカイライン」、「セドリック/グロリア」に設定されたステーションワゴンにもウッディパネル調仕様が設定された。

車名は若者が憧れたカリフォルニアを意識して命名

1979年1月にデビューした日産「サニー・カリフォルニア」

4代目(B310型)「サニー」ベースで1979年1月にデビューした「サニー・カリフォルニア」は、当初は輸出専用として北米をメインに販売され、その後日本で需要が高まり始めたことから日本にも投入された。

1979年1月にデビューした日産「サニー・カリフォルニア」

全長をセダンより165mm延長し、バンとは異なる遊びのクルマのイメージを鮮明にするため、全高をクーペ並みに低く設定。リアゲートの後方に向かうラインに従って狭まっていくサイドガラスやメッキタイプのアメリカンバンパーを採用。ボディ色は、イメージカラーの黄色を筆頭にブルーメタリックなど明るい色を用意し、オプションで米国ステーションワゴンの定番であるウッディサイドパネル仕様も設定された。

日産「サニー・カリフォルニア」のコクピット
日産「サニー・カリフォルニア」のフロントシート

インテリアについても、乗用車並みの豪華な装備が注目され、分割可倒機構を組み込んだリアシート、ファスナー付きトノカバー、コンソールボックスなどで利便性をアピール。さらに、ゲート開口部を広くし荷室地上高を低く設定して、荷物の積み下ろし性への配慮もされた。

日産B310サニーに搭載されたA14E型エンジン

パワートレーンは、最高出力80ps/最大トルク11.5kgmの1.4L 直4 OHVエンジンと4速/5速MTおよび3速ATの組み合わせ、駆動方式はFRである。

車両価格は、標準グレードが91.6万円でその他に96.4万円と104.0万円の3グレードを用意。セダンよりも約5~8万円高額の設定なので、比較的割安と言える。ちなみに、当時の大卒初任給は10.9万円程度(現在は約23万円)なので、現在の価値では標準グレードが約193万円に相当する。

ホンダからは、シビック・カントリー登場

1980年1月にデビューしたホンダ「シビック・カントリー」

ホンダは、日産「サニー・カリフォルニア」発売の翌1980年1月に、2代目「シビック(スーパーシビック)」をベースにした「シビック・カントリー」を発売した。シリーズ初、しかもホンダ初のステーションワゴンだった。

1980年1月にデビューしたホンダ「シビック・カントリー」

シビック・カントリーは、アウトドアレジャーで使用するに相応しい装備が注目を集めた。クラストップレベルの広い室内スペースに、後席シートは4段階の角度調整が可能で、荷室フロアとフラットにできる可倒機構が組み込まれた。さらに、テールゲートには運転席のボタンでロックが解除できる電磁式オープナーを採用して利便性も高められた。

ホンダ「シビック・カントリー」のコクピット
ホンダ「シビック・カントリー」のフロントシート

パワートレーンは、最高出力80ps/最大トルク12.3kgmの1.5L 直4 SOHCと5速MTおよびホンダマチックの組み合わせ、駆動方式はFFである。

ホンダ「シビック・カントリー」の広い荷室スペース

またアウトドアを楽しむクルマらしく、ウッディサイドパネル、サイドプロテクションモール、大型カラードバンパーなどが装備され、ファミリーで楽しめるクルマらしい外観に仕上げられた。

1980年1月にデビューしたホンダ「シビック・カントリー」のサイドビュー

車両価格は、95万円(5速MT)/97万円(ホンダマチックAT)。当時の大卒初任給は11.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約190万円/194万円に相当する。シビック・カントリーは大ヒットとはならなかったが、堅調な販売を記録した。

1983年のモデルチェンジに伴い、シビック・カントリーはモデル廃止となり、後継車として3代目シビックから「シビック・シャトル」に後を任せた。

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「サニー・カリフォルニア」と「シビック・カントリー」は大ヒットには至らなかったが、時代を先取りしたアウトドア派やアウトドアスポーツ派からは強い支持を受けた。その後1980年代中盤には、キャンプなどをファミリーで楽しむアウトドアブームが巻き起こり、4WDのステーションワゴンが人気を得た。そして、1990年代になると「レガシィ・ツーリングワゴン」がけん引したハイパワー4WDのステーションブームが市場を席巻したのだ。

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