電動量産EVスーパーカー「Denza Z Di-Aero P2000+」
BYD傘下の高級ブランド「Denza(デンザ)」が開発を進める電動スポーツカー「Denza Z」に、さらに過激なハイパフォーマンス仕様が存在することが明らかになった。ニュルブルクリンクで目撃されたそのプロトタイプは、「Denza Z Di-Aero P2000+」と呼ばれ、量産EV最速ラップの更新を狙うスペシャルモデルとみられている。

標準モデルのDenza Zだけでも、3基のモーターによって約1605hpを発生するスーパーカーとして大きな話題を集めた。しかしBYDの狙いは、高出力EVを発売することだけではない。欧州のハイパフォーマンスブランドが築いてきた牙城へ真正面から挑み、「世界最速」という分かりやすい称号を手に入れることにある。

ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ最速を目指す
その舞台となるのが、世界で最も過酷なサーキットとして知られるニュルブルクリンク・ノルドシュライフェである。
現在、量産EVのラップレコードはポルシェ「タイカン ターボGT Manthey Kit」が保持している6分55秒533だ。その前にはシャオミ「SU7 Ultra Track Package」が7分04秒957というタイムを記録し、中国メーカーとして大きなインパクトを残した。今度はBYDが、その両者をまとめて超えようとしているのである。


今回スクープされた「Di-Aero P2000+」は、その車名が示す通り、空力性能を極限まで高めたサーキット志向のモデルだ。
大型固定式リアウイングや専用フロントスプリッター、ワイド化されたサイドスカート、大型ディフューザーを装着し、ボディ各部にはカーボンファイバーを多用。ルーフまでカーボン化されるなど、軽量化とダウンフォースの両立を徹底的に追求している。

さらに注目されるのが、「P2000+」という名称である。
現段階では正式なスペックは公表されていないものの、BYDは2000馬力級の最高出力を視野に開発を進めているとされる。標準仕様のDenza Zが約1580馬力級と伝えられていることを考えると、その性能差は驚異的だ。
その圧倒的な出力を支えるため、バッテリー冷却性能は30%、パワートレイン冷却性能は180%向上したモータースポーツ由来の熱管理システムを採用するとされる。近年の高性能EVは、一発の加速性能だけでなく、高負荷状態をどれだけ維持できるかが勝負になっている。BYDもその課題を十分理解した上で開発を進めているようだ。

興味深いのは、このモデルが単なる記録挑戦車ではないことである。
グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでは、ほとんど注目されないまま展示されていたが、その後に「Di-Aero P2000+」であることが判明した。市販車として認証を受けるため少量生産される見込みだが、その真の目的はニュルブルクリンクで新記録を樹立することにあるとみられる。

ここ数年、中国メーカーは「価格の安さ」を武器に市場を拡大してきた。しかし現在は、世界最高レベルの技術力そのものをアピールする段階へと移行している。シャオミがニュルで存在感を示し、BYDがそれを追う構図は、その象徴と言えるだろう。
もしBYDがポルシェの記録を更新すれば、それは単なるラップタイム更新以上の意味を持つ。「中国EVは安くて速い」という評価から、「世界最高峰のスポーツカーを開発できるメーカー」という評価へ変わる転換点になる可能性がある。

現時点で正式なアタック日時は明らかになっていない。しかし、開発スピードを見る限り、その挑戦はそう遠くないと考えられる。ニュルブルクリンク最速EVを巡る戦いは、いよいよポルシェ、シャオミ、そしてBYDによる三つ巴の様相を呈してきた。今後の動向から目が離せない。
