メルセデス・ベンツが、EVの商品戦略を大きく転換しようとしている。その象徴となるのが、現在開発中の新型電動セダンだ。
スクープ班は今回、「EQE」の実質的な後継を担う新型EVの最新プロトタイプを捉えた。カモフラージュはこれまでより大幅に軽減され、量産仕様に近いヘッドライトやボディラインが姿を現している。

メルセデス・ベンツ EクラスEQ プロトタイプ スパイショット

注目すべきは、単なるEQEのフルモデルチェンジではないことだ。メルセデスはEV専用の「EQ」シリーズとして内燃エンジン車と明確に差別化してきた従来の商品戦略を見直し、新世代EVを既存の「Eクラス」ファミリーへ統合する方向へ進んでいる。

つまり、次の電動ミドルクラスセダンは「新型EQE」ではなく、“電気で走るEクラス”という位置づけになる可能性が高い。

メルセデス・ベンツ EクラスEQ プロトタイプ スパイショット

現行EQEは2021年に発表され、2022年から本格的に市場投入された。しかし米国では2026年モデルを最後にラインナップから外れることになり、商品寿命はわずか4モデルイヤーほどとなる。

その背景には、メルセデスのEV戦略そのものの見直しがある。
EQEや上級のEQSでは、空力性能を優先し、ボンネットからルーフ、リアエンドまでを滑らかにつないだ独特の「ワンボウ」デザインを採用した。未来的である一方、従来のEクラスやSクラスとは大きく異なるプロポーションでもあった。

メルセデス・ベンツ EQE

最新プロトタイプを見ると、その方向性は一変している。
新型はボンネット、キャビン、トランクの存在を明確にした3ボックス型に近いプロポーションを採用。ルーフからリアまで滑らかにつながっていたEQEとは異なり、ひと目で「セダン」と分かるシルエットへ回帰している。

メルセデス・ベンツ EクラスEQ プロトタイプ スパイショット

フロントでは量産仕様とみられるヘッドライトも初めて露出した。内部にはスリーポインテッド・スターをモチーフにしたデイタイムランニングライトが確認できる。グリル部分は依然としてカモフラージュされているものの、新世代の電動GLCなどで導入されている大型イルミネーショングリルのデザインを発展させる可能性がある。

メルセデス・ベンツ EクラスEQ プロトタイプ スパイショット

一方、リヤにも新たな発見があった。
初期プロトタイプでは仮設テールライトだったため、市販仕様ではスターをモチーフとしたグラフィックの採用も予想された。しかし今回姿を見せた量産仕様に近いランプには、より直線的な発光グラフィックが確認できる。

EQEのように「EVだから違うデザイン」にするのではなく、誰が見てもメルセデスのEクラス系セダンだと認識できるスタイルを目指しているようだ。

メルセデス・ベンツ EクラスEQ プロトタイプ スパイショット

もちろん、変わるのはデザインだけではない。
新型にはメルセデスの次世代EVアーキテクチャ「MB.EA」系の技術が採用されるとみられており、800V電気システムの導入も予想される。

急速充電性能については最大330kW級に達する可能性があり、実現すれば現行BMW「i5」の最大205kWを上回る。ただし、BMWも次世代Neue Klasse(ノイエ・クラッセ)技術の展開を進めているため、発売時点での単純比較には注意が必要だ。

パワートレインの詳細も明らかになっていないが、上位仕様にはデュアルモーターAWDが設定される可能性が高い。
新世代の電動Cクラス系モデルと技術を共有するとみられ、500ps近い最高出力や、長距離走行を意識した大容量バッテリーの採用も予想される。

今回インテリアは撮影されていないが、新世代メルセデスEVと同様に、大型ディスプレイを中心とした最新世代のデジタルコックピットが採用される可能性がある。

メルセデス・ベンツ EクラスEQ プロトタイプ スパイショット

EQEから新型EクラスEVへの変化で興味深いのは、メルセデスがEVそのものを諦めたわけではなく、「EVだけを特別扱いする」戦略を修正している点である。

これまでのEQシリーズでは、EクラスとEQE、SクラスとEQSのように、内燃エンジン車とEVを別の商品として展開してきた。しかしEVが特殊な存在ではなくなれば、顧客にとって重要なのはパワートレインよりも「Eクラスを選ぶのか」「Sクラスを選ぶのか」という従来の商品軸になる。
新型EVが正統派セダンへ回帰しているのも、その戦略転換を象徴するものといえる。

登場は2027年が有力視されている。EQEの個性的なワンボウフォルムから、伝統的なEクラスらしい3ボックスセダンへ――。この新型EVは、メルセデスの電動化戦略が次の段階へ入ったことを示す重要な1台となりそうだ。