ベルトーネは、2026年9月9日に開催した第3回トゥット・ベーネ・ヒルクライムに「Bertone Runabout:新型ベルトーネ・ランナバウト」で参戦した。
新型ベルトーネ・ランナバウト

「新型ベルトーネ・ランナバウト」は、1969年のトリノショーでマルチェロ・ガンディーニがデザインした名作コンセプト「アウトビアンキ A112 ラナバウト」にインスパイアされた、25台限定のコーチビルドモデル。
オリジナルのアウトビアンキ A112 ラナバウトは小型で斬新なオープン・バルケッタで、低い車高、水平なベルトライン、そして前方に突き出したウェッジシェイプが、一目でそれとわかるシルエットを生み出し、航海を連想させる要素が、当時の自動車デザインとは一線を画す軽やかさ、自由さ、そして遊び心をもたらしていた。ランナバウトはイタリアン・ウェッジ・デザインの初期の代表例の一つとなり、その後の数十年間、自動車デザインの中心となるプロポーションと幾何学の概念を導入することとなる。

かつてのカロッツェリアが描いた前衛的なデザインスタディを、現代の少量生産ビジネス(コーチビルド)として成立させるため、「新型ベルトーネ・ランナバウト」においていかにデザイン言語の「翻訳手法」がなされたか。ここが注目すべきポイントのひとつ。
ミッドシップの3.5Lのスーパーチャージャー付きV6エンジンは、475馬力と490Nmを発揮し、6速MTを介して後輪に伝達されるレイアウト。車両重量は1,057kgで、コンパクトなサイズ、軽量設計、そしてドライバーと車との一体感を重視したシャシー設計により、優れたパフォーマンスを実現している。
インテリアも同様の哲学に基づいている。ドライバーとパッセンジャーは、船体のような形状のコックピット内で低く密着して着座。ダッシュボードは力強い水平線で統一され、ドライバーの前にはメーターディスプレイ、中央にはランナバウトの特徴である航海用コンパスが配置されている。ゲート式のマニュアルギアシフトと物理的なコントロールスイッチにより、操作感は意図的に触覚的でダイレクトなものとなっている。
| パワートレイン | エンジン | 3.5L V6スーパーチャージャー過給 |
| トランスミッション | 6速MT | |
| パフォーマンス | 最高速度 | 時速270 km |
| 0-100 km/h 所要時間 | 3.1秒 | |
| 最高出力 | 475 CV | |
| 最大トルク | 490 Nm | |
| 重量対出力比 kg/CV | 2.45 kg/hp | |
| 車体 | ボディ | 押出アルミ合金材+接着工法 |
| サスペンション | ダブルウィッシュボーン式サスペンション、3段階調整式ダンパー、調整式アンチロールバー | |
| ブレーキサイズ | フロント 径343/幅32 mm リヤ 径343/幅26 mm | |
| 寸法 | 長さ | 3,990 mm |
| ホイールベース | 2,369 mm | |
| 高さ | 1,116 mm | |
| 前後幅 | 1,750 / 1,841 mm | |
| 全幅 | 1,933 mm | |
| 車両重量 | 1,057 kg | |
| 座席数 | 2 | |
| ホイール | リム | 鍛造アルミ合金製 |
| フロントタイヤ | 225/30 ZR18 | |
| リヤタイヤ | 315/25 ZR19 |
トゥット・ベーネ・ヒルクライム

マッジョーレ湖を見下ろすモッタローネ(トゥット・ベーネ・ヒルクライムを開催する山の名称)の道路に、クラシックカーから現代車まで、多種多様な車を集め、タイム計測や順位付けは一切ないというトゥット・ベーネ・ヒルクライム。BorromeoDeSilvaとRace Serviceが共同で創設し、瞬く間に国際的な自動車カレンダーの中で独自の地位を確立した。
その理念は「スピードを落としてこそ速く走れる」と「クールな車だけ参加可」というふたつのフレーズに集約されている。
この環境は、ベルトーネ・ランナバウトに特によく似合う。こうした意味で、ランナバウトはベルトーネのDNAへのオマージュであると同時に、同ブランドのデザイン文化を現代的に表現した作品としてモッタローネに登場したと言える。

「スピードを落としてこそ速く走れる」とは、単に速度を落とすという意味ではない。あらゆる道を競争の場にすることなく、車を楽しむ方法を表現している。モッタローネへの道は、連続するコーナーと高低差によって、ドライバーが車本来の個性を体感しながら、同時に他のドライバーとの共有体験を楽しむ機会を与えてくれる。
その意図は、運転を思い出深いものにする要素のための空間を残すことにある。このデザインと体験の融合こそが、ランナバウトをトゥット・ベーネが体現するより広い文化へと導くものであり、トゥット・ベーネは、デザイン、エンジニアリング、あるいはその車が生まれた文化について何かを語る車、つまり個性という重要な要素と共鳴する。
ランナバウトは、まさにそうした要素が融合したモデルと言えるだろう。ベルトーネは、最も象徴的なデザインコンセプトの一つと現代的なコーチビルディング技術を融合させ、かつては構想段階だったものを、実際に運転できる車へと昇華させている。

