マツダ「MX-5(日本名:ロードスター)」にとって、「軽さ」は単なるスペックのひとつではない。初代から一貫して守ってきた、クルマそのものの個性である。大排気量エンジンや圧倒的なパワーではなく、軽量な車体を生かした「人馬一体」の走り。それがロードスターの魅力を支えてきた。

マツダ ロードスター 改良新型 

しかし、電動化と環境規制が進むなか、次期MX-5も従来の延長線上だけでは生き残れない。
マツダの毛籠勝弘CEOはドイツの自動車専門誌「Auto Motor und Sport」の取材に応じ、次期MX-5について興味深い開発方針を明らかにした。将来、「内燃機関のないシナリオ」にも対応できるようにする必要があるというのだ。

マツダ ロードスター 次期型 予想CG

もちろん、これは次期MX-5のBEV化が決まったという意味ではない。マツダUSAも次期MX-5について、規制などを考慮しながら複数のパワートレインを検討していると説明している。
つまり次期型では、まずガソリンエンジンを搭載して登場するとしても、将来の規制や市場環境の変化に対応できるクルマづくりが求められている。

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そこで最大の難題となるのが「重量」だ。
BEVは大容量バッテリーを搭載するため、一般的に車重が増える。軽さを最大の武器としてきたMX-5にとって、単純にバッテリーとモーターを積むだけでは、その持ち味を失いかねない。

だからこそ、毛籠CEOが示した重量目標が興味深い。
次期MX-5では、カーボンファイバーのような高価な特殊素材に頼るのではなく、基本構造そのものを軽量化する考えだという。開発陣に与えられた重量レンジは、1000kgをわずかに下回る水準から1200kgまで。毛籠CEO自身も達成可能との考えを示している。

ただし、この数字には注意が必要だ。
「1000〜1200kg」は次期MX-5全体について語られた重量レンジであり、将来BEVを設定した場合にも1200kg以下に収めると明言されたわけではない。

それでも、電動化を視野に入れる次世代スポーツカーで、この数字を掲げること自体が野心的である。
現行ND型MX-5は2015年に登場。欧州仕様には車重1000kg程度のモデルも存在し、登場から10年以上が経過した現在でも世界有数の軽量スポーツカーである。次期型でも、この思想を捨てるつもりはないようだ。

マツダ アイコニック SP コンセプト

では、エンジンはどうなるのか。候補として海外で取り沙汰されているのが、マツダが開発を進める新世代2.5L直列4気筒ガソリンエンジン「SKYACTIV-Z」だ。

SKYACTIV-Zは、マツダが「電動化時代のエンジンラインアップの基軸」と位置づける新世代ユニットである。2027年中には次期CX-5へマツダ独自のハイブリッドシステムと組み合わせて投入する計画となっている。ただし、MX-5へのSKYACTIV-Z搭載はマツダから発表されていない。2.5Lという排気量を含め、軽量スポーツカーであるMX-5にどのような形で使えるのかも注目点となる。

さらに、軽量性を損なわないことを前提にハイブリッドを採用する可能性も海外では指摘されている。
つまり次期MX-5は、「ガソリンかEVか」という二者択一だけで考えるクルマではなくなりそうだ。
内燃機関を残しながら電動化にも対応し、さらに将来はBEVという選択肢も排除しない。規制や市場環境が変わってもMX-5というスポーツカーを存続させられる設計が重要になる。

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世代交代の時期について、マツダから具体的な発表はない。海外では2028年以降との観測も出ており、そうなれば現行ND型は異例のロングライフを全うすることになる。

毛籠CEOはMX-5とは別に、マツダのブランド価値を象徴する「Hero-Car(ヒーローカー)」をラインアップ上位に置きたいとの構想も明らかにしている。場合によっては手作業も取り入れる特別なスポーツカーになる可能性にも言及しており、マツダがスポーツカーそのものを今後も重要視していることがうかがえる。

次期MX-5にとって最大のテーマは、EVになるか、ガソリンエンジンを残すかだけではない。パワートレインが変わっても、1000kg級の軽さと「人馬一体」をどこまで守れるのか。電動化時代になってもロードスターをロードスターのまま残す。そのための次世代開発が、すでに始まっている。