商用バンがベースとは思えない気持ち良い走り。機能の充実ぶりも魅力

まずもって「Kia(キア)って何?」ってところから始める必要があるだろう。Kiaは2025年のグローバル自動車販売実績で世界第3位となったHyundai(ヒョンデ)自動車グループの一員であり、2025年はグループ全体で727万台、Kiaブランドで310万台を販売した。

Kia PBVはKiaが展開する電気自動車(EV)のブランドで、PBVはPlatform Beyond Vehicle(車両を超えるプラットフォーム)の略。E-GMP.Sと呼ぶEV専用プラットフォームを用い、柔軟な設計により大小さまざまなモデルを展開していく考えだ。大手商社の双日が100%出資して設立したKia PBVジャパンが日本への輸入と販売を手がける。

最初に日本に導入するのは、2名乗車パネルバン(商用車)の「PV5カーゴ」と、5名乗車ワゴン(乗用車)の「PV5パッセンジャー」である。「商用なのに乗用車並みのクオリティ」を持つのが自慢のPV5カーゴは事業者を主なターゲットとしており、配送や福祉サービス、ハイヤーなどの用途を見込んでいる。

Kia PV5カーゴ。スタンダード(電池容量51.5kWh)が619万円、ロングレンジ(同71.2kWh)が679万円。国の補助金は最大196万円。
後部の窓はパネル化されている。

いっぽうPV5パッセンジャーは「乗用なのに商用車並みのフレキシビリティ」を備えているのがセールスポイントで、電動ミニバンとしての需要にとどまらずキャンピングカーや車中泊用途を想定しているとのことだ。

PV5パッセンジャーの全長×全幅×全高は4695×1895×1925mm、ホイールベースは2995mm。最小回転半径は5.5mで、ホイールベースが長い割にリーズナブルな数値だ。バッテリー(NMC:三元系)はPV5パッセンジャー、PV5カーゴとも「ロングレンジ(71.2kWh)」と「スタンダード(51.5kWh)」の2種類を設定している。車両重量は最上級グレードの「ロングレンジ(プラス)」で2140kgである。

Kia PV5パッセンジャー。グレードは3種類で、装備が厳選されたベーシックのスタンダード(電池容量51.5kWh)は679万円、上級グレードであるプラスのスタンダードは709万円、プラスのロングレンジ(電池容量71.2kWh)は769万円。、国の補助金は最大26万円。
PV5パッセンジャーのボディカラーは7色が用意されている(PV5カーゴは3色)。

フロントに搭載して前輪を駆動するモーターの最高出力はロングレンジが120kW、スタンダードが89kWである。250Nmの最大トルクは共通。一充電走行距離はPV5パッセンジャーのロングレンジが521km、スタンダードは377km。PV5カーゴのロングレンジは528km、スタンダードは379kmとなっている。走行用バッテリーの電源を家電製品等へ給電するV2Lと、建物に供給するV2Hに対応。最大充電出力は150kWとのことだ。

急速充電は150kWまで対応する。

PV5カーゴ

PV5のフロントマスクは昆虫の顔のように見えて個性的だと感じた。試乗はまずPV5カーゴから。運転席の座面の位置はやや高く、身長184cmの筆者でも腰をスライドして座るわけにはいかず、Aピラー内側のグリップをつかんで体を持ち上げたほうが楽に乗車できる。足元スペースには余裕があるので、かさばる靴を履いていたとしても足の出し入れに困ることはなさそう。フロアがフラットなおかげで助手席側への移動が楽に行なえるのもポイントだ。

ステアリングホイールは上から抱え込むような形にならず、背の低い乗用車と同じように正対したポジションで向き合える。ステアリングの位置調整はチルト(上下)だけでなくテレスコピック(前後)も備えており、ポジションが決まらずにモヤモヤした気分にならずに済む。これなら長時間のドライブでもストレスを感じず、快適に過ごせそうだ。

PV5カーゴのインテリア。運転席前は7インチ、センターには12.9インチの液晶画面が配される。
乗用車から乗り換えても違和感のないドライビングポジションがうれしい。

電池容量が少ないPV5カーゴ・スタンダードの最大積載量は650kg、ロングレンジの最大積載量は550kgとなる。贅沢なことに(?)、空荷、1名乗車でPV5カーゴ・スタンダード(車両重量1830kg)を試乗。ラインアップ中最軽量なこともあるし、空荷なこともあって動力性能面に不足はない。後にラインアップ中最重量のPV5パッセンジャー・ロングレンジ(車両重量2140kg)に乗り換えたが、軽快に走る印象に変わりはなかった。

積載マックスの状態でも苦しげな素振りを見せることはないと想像する。それにモーターで走るEVなので、高負荷の運転状況でもエンジン車のように騒々しいノイズを発することはない。急勾配の坂を登るシーンであっても至って静かだ。空荷であってもピョンピョンと落ち着きなく跳ねることもなく動きは落ち着いている。

乗員スペースと隔壁で仕切られた荷室は低床(床面地上高419mm)が自慢。アクセスは両側スライドドア、または観音開きのバックドアから行なえる。荷室として活用できるのは当然として、部屋としても使えそうな広々とした空間だ。

静粛性や乗り心地、走りの滑らかさが光るPV5カーゴ。エンジン車の商用バンと比べると、その違いは明らかだ。
フロントサスペンションはダブルウィッシュボーン式。
リヤサスペンションはトーションビーム式。スプリングはコイルタイプ。
PV5カーゴのバックドアは観音開きとなる。欧州の商用バンではこれがスタンダード。
EV専用の低床プラットフォームを採用。荷室寸法は長さ2255mm、幅1450mm、高さ1520mm。

PV5パッセンジャー

PV5カーゴの室内は無彩色系のトーンで統一されているが、PV5パッセンジャーのほうは試乗車のようなディープネイビーとテラコッタブラウンを組み合わせたカラフルなインテリアを選択することも可能。最上級の「プラス」は左側だけでなく右側も電動スライドドアになり、運転席と助手席にシートヒーターを装備し、ステアリングヒーターを備えるのが「ベーシック」との相違点。オプションのコンフォートパッケージを選択すると前席がパワーシートになり、ランバーサポートを備え、前席にシートベンチレーションが付く。USBポート(タイプC)は前席にも後席にも用意されている。

後席は足元も頭上も広々としている。誇張なしに脚が組めるほどだ。運転席と助手席の間にあるコンソールの後端に空調の吹き出し口があるし、ACのコンセントもあって家電製品を使うことが可能。振り返ると、広々とした荷室が見える。カーゴと違い、バックドアは跳ね上げ式。プラスは電動、ベーシックは手動である。現在は2列シート5名乗車仕様のみのラインアップだが、将来的に3列シート仕様の導入を検討しているようだ。

PV5パッセンジャーのインテリア。内装色は3色あり、写真はディープネイビー✕テラコッタブラウン。
PV5パッセンジャーのシートは人工皮革。上級グレードの「プラス」はシートヒーターが標準で、オプションのコンフォートパッケージを装着するとシートベンチレーションやパワーシートも加わる。
後席は広々とした足元スペースが印象的。
リヤシートは6対4分割可倒式で、背もたれの角度調整も可能。

ドライブモードはNORMAL、ECO、SNOWの3種類。回生ブレーキの強弱はステアリングホイール裏のパドルを操作することでLV0からLV3の4段階でコントロールできるようになっている。左のパドルを長引きするとi-PEDALとなり、アクセルペダルだけで加減速のコントロールが可能。アクセルペダルの戻し側で完全停止まで持ち込むことができる(他のモードではクリープ走行に移行)。右のパドルを長引きするとAUTOになり、レーダーで検知した先行車の動きに合わせて回生ブレーキの強弱を自動で制御する(ベースはLV0で空走感あり)。

シフトセレクターはステアリングコラム右側に配置。ドライブモードスイッチはセンターパッドの下側に備わる。

商用バンがベースだと思ってなめてかかると、シャキッとした走りに面食らうことになる。攻めた走りをするかどうかは気持ちの問題だが、ストレスを感じずに、というか気分良く攻められるのはPV5の美点。加減速側も旋回側も意図どおりに動いてくれるので、操っていて気持ちいいし、ロングドライブでもストレスを感じずに済みそうな雰囲気を感じとることができる。

というわけでKia PV5、内外装の質感の高さや機能の充実ぶりも含めて完成度は高く、魅力的な1台である(正直、驚いた)。

商用バンがベースとは思えない、ストレスのない走りを披露するPV5パッセンジャー。充実した先進安全装備も魅力だ。
サラウンドビューモニターは全車に標準装備される。

主要諸元:Kia PV5パッセンジャー プラス(ロングレンジ)

全長:4695mm
全幅:1895mm
全高:1925mm
ホイールベース:2995mm
乗車定員:5名
最小回転半径:5.5m
車両重量:2140kg
駆動方式:前輪駆動
モーター種類:交流同期電動機
モーター定格出力:40.0kW
モーター最高出力:120kW/4600-9000rpm
モーター最大トルク:250Nm/4400rpm
バッテリー種類:NMCリチウムイオン電池
バッテリー総電圧:402V
バッテリー総電力量:71.2kWh
交流電力量消費率(WLTCモード):152Wh/km
一充電走行距離(WLTCモード):521km
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン式/後トーションビーム式
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク/後ディスク
タイヤサイズ:215/65R16
価格:769万円