クローズドコースでのeスカイ試乗

スライドドアを持たない“トールワゴン”として誕生した、スズキ初の軽EV「e SKY」(イー・スカイ)。試乗したのは発売前のプロトタイプ車輌ということもあり、クローズドコースの袖ケ浦フォレストレースウェイだ。

バックストレートは100km/h、外周路は70km/hが目安。インフィールドの第4コーナーを立ち上がった登り区間にはパイロンで区切ったコース設置をして、そこからゴールまでは50km/hで走る。

クローズドコースで速度制限を設けたのは、全開率が高いコースでの電欠や、バッテリーの熱ダレを考慮したせいもあるが、より一般道に近い領域での評価をスズキが求めたからだろう。ちなみにこのコース設定は、「eビターラ」で採用されたものと同じだ。

運転席からの景色はごく普通のトールワゴン
インパネのスタートボタンを押して、シフトノブをDレンジに。ハンドルを切りながらアクセルにそっと力を込めると、eスカイは小回りを効かせて、静かにピットロードを走り出した。

フロントウインドウから見える景色は、トールワゴンのそれだ。EVになったからといって、特別何かが変わるわけではない。スーパーハイトワゴンほどグラスエリアは広くないし、頭上の空間も普通だけれど、140mmの最低地上高がもたらす視界は良好。個人的にはクルマとの一体感が出る、このくらいのルーフ高が好みだ。

インテリアで目を引くのは、液晶ディスプレイのデザインだ。ドライバー用のメーターはこれまで通りの小ぶりなモニターで、ステアリングの上部空間を通して視認する。しかしメータークラスターとなるトリムが、ピアノブラック化されたパネルで10.1インチのセンターディスプレイと連結しているため、パッと見1枚の大きな液晶パネルに見えるのだ。これならナビも好みで選べそうだし、故障にもそれぞれで対応できるだろう。

集中制御は効率的で見栄えも良いが、拡張性は低いし、システムダウンのリスクは分散されない。そして、故障したらアセンブリーになってコストが高い。
これは実にスズキらしい、賢いやり方だと思った。
そしてこのモニターを支える、トレータイプの白いダッシュボードも、黒一色の内装にコントラストを与えていた。丸みを帯びたフレームの両脇には、四角いドリンクホルダーがメリハリを効かせる。インパネ上部の造形も、立体的でスタイリッシュ。可愛いだけを売りにしない、大人の男性も乗れるデザインだと感じた。

良い意味で“フツー”の乗り味
ピットロードからコースイン。1コーナーに向けて穏やかにアクセルを踏み込んでみると、至って“フツー”にeスカイは加速した。そしてこのフツーが、eスカイの良さだと感じた。

クローズドコースの路面は整っているから、乗り心地やロードノイズについては精査できない。それでもトルク追従性のまろやかさや、3-in-1パワーユニットの静粛性、ステアリング回りのちょうどよい剛性感に、素性の良さを感じた。

アクセルを一気に踏んでも、そもそもの制御が穏やかなせいもあるが、ヘッドトスする(ヘッドレストに頭を打ち付ける)ような加速はしない。しかし必要にして十分か、それをちょっと超えたパワー感には「これでいいじゃん、よく走るね」と素直に思えた。ちなみにスポーツモードはなく、回生ブレーキを高めるワンペダルボタンがインパネの右端に設置されている。

何より感心したのは、高速安定性の高さだ。旋回速度が乗せられる1コーナーでは、ブレーキングからの操舵がピタッと決まって、ボトムスピードも高い。ターンインでリヤはきちんと接地していて、旋回姿勢も整っている。

またここから敢えてアクセルを開けてみても、モータートルクが一気に解放されないのが安全だと思えた。メーターに制御のアラートを点滅させながら、穏やかにトルクを収めてくれたから、スリッパリーな路面でもこれなら安心だろう。

そしてストレートでは90km/hからダブルレーンチェンジを試みたが、切り始めの素直な姿勢変化だけでなく、ヨーモーメントの収まりがよいことにも感心した。
床下にバッテリーを敷く上にルーフが低いから、操舵レスポンスを敢えてダルにする必要がなく、発生したヨーもダンピングしやすい。横風にも対応しやすいだろうし、緊急回避のときにも役立つはずだ。
比較的軽めの車体としなやかな足まわりで軽快かつ快適

乗り心地はわからないと言いながらも、足まわりの伸縮はしなやか。縁石を乗り越えてもバンプタッチする様子はなく、196/65R14サイズのタイヤが上手にたわんでくれる。こうした足まわりでも余計なロールが抑えられているのは、重心が低いトールワゴンのEVボディが、さらに軽く仕上げられているからだろう。

1030kgといえば、ロードスターなみに軽い。だからヘアピンのような小さいカーブも、操作通りにクルマが曲がってくれる。決してスポーツカーのようなボディバランスではないけれど、普通に運転して楽しさが感じられる。

ホイールベースがライバルたちに較べて2460mmと短いこともあるが、インフィールドに設定されたスラローム及びクランクも快適だった。回生ブレーキを強めれば、アクセル操作ですいすい曲がるが、それなしでもハンドルがよく切れる。サイズ感的にはちなみに最小回転半径は4.4mだ。
電動パワステは、軽すぎず重すぎず、本当にちょうどよい印象。モーターはコラム式とのことだったが、急な操作を繰り返しても、eビターラのように応答遅れすることはなかった。またステアリングや、ラック回りにも剛性不足は感じなかった。
eスカイを走らせてパワー不足を感じないのは、そのボトムスピードが速く、結果的にスピードを活かしたまま、気持ち良く再加速できるからだろう。

ちなみに何の参考にもならないが、30分走らせた電費(うち2回インターバルを取った)はSOC(Start of Charge:充電率)が79%で、航続可能距離は114km、平均電費は6.4km/kWhと、踏むべきときは踏んだ割に、かなりよかった。
試乗で感じた完成度と「欲しい」と思わせる魅力

総じて第一印象は、かなり良かったeスカイ。まだリアルワールドでの乗り心地や後部座席の居住性、肝心な航続距離の長さを確かめる必要はあるけれど、小型車好きとしては素直に「欲しい」と思える1台だった。

EVの動的質感が軽自動車のクオリティを引き上げるのは先達たちが示している通りだが、eスカイもその例には漏れないだろう。むしろ軽さを走りと燃費に活かしながらも、ちょっとだけ乗り心地(特に後部座席)にガマンを強いられることが多かったスズキの軽自動車に、eスカイは変化をもたらしてくれるのではないか。
そんな期待を胸に、一般公道試乗を待ちたいと思う。

| 車名 | eスカイ |
| 駆動方式 | 2WD |
| 電池容量 | 26kWh |
| 全長 | 3395 mm |
| 全幅 | 1475 mm |
| 全高 | 1625 mm |
| ホイールベース | 2460 mm |
| トレッド(フロント) | 1285 mm |
| トレッド(リヤ) | 1295 mm |
| 最小回転半径 | 4.4 m |
| 最低地上高 | 140 mm |
| 車両重量 | 1030 kg |
| タイヤサイズ | 165/65R14 |
※本記事記載の数値は全て現時点のプロトタイプに基づく参考値です。



