スズキ初の軽EV「eスカイ」の狙いと立ち位置

スズキeスカイ

派手なグリルがなく、すっきりしたキャラクターラインを持つボディと、黒目がちで大きなヘッドライトが特徴的な愛らしいルックス。スズキが「軽常用EV 第一弾」としてお披露目した「e SKY」(イー・スカイ)は、スライドドアを持たない5ドアのトールワゴンだった。

スズキeスカイ

そんなeスカイのスリーサイズは、全長(3395mm)と全幅(1475mm)を軽自動車枠いっぱいまで使い切る一方で、全高は1625mmとなっている。セダンタイプ(2ボックス形状ながら軽自動車では、ワゴンや商業版と区別してこう呼ばれる)のアルトは1525mmで、トールワゴンのワゴンRは1650mmだから、その間に位置している。

スズキeスカイ
スズキeスカイ
スズキeスカイ

ちなみに軽自動車カテゴリーへと新規参入して話題を振りまくBYD「ラッコ」は、開発当初から日本市場での成功を見込んで、スーパーハイトワゴン一択の戦略を採った。その全高は1800mmで、両側に備えるスライドドアは電動だ。

BYDラッコ

そしてeスカイ同様ハイトワゴンに属する、日産サクラ/三菱eKクロスEVの全高は1655mm。いわゆる立体駐車場に入らないサイズを選んだのに、どうしてこれほど中途半端な高さを選んだのだろう?

日産サクラ
三菱eKクロスEV

それはスズキがこのeスカイに、EVとしてのトータルバランスを重要視したからだと思う。

そのパワーユニットは、モーター/インバーター/減速機をひとつにまとめた「3-in-1」設計。前輪を駆動するモーターの最高出力は自主規制枠を使い切る47kW(64PS)で、規制のない最大トルクに関しては133Nmを発揮する。この数値は直近のライバルとなるサクラ(47kW/195Nm)と比較して、かなり小さい。対して車重は1030kgだから、サクラ(1070~1090kg)と較べて軽くはあるが、トルク・ウェイト・レシオで較べればやっぱり劣る。

スズキeスカイのエンジンルーム。

しかし一充電当たりの航続距離は、サクラの180kmに対してeスカイが310kmと圧勝だ。ちなみにバッテリー容量は26kWhと、サクラより6kWh、30%ほど大きい。それでいて車重が1030kgと軽いから、35.84kWhの大容量バッテリーを搭載するラッコ 300Plusと較べても、航続距離で10km短いだけに収まっているといえる。バッテリーはeビターラで実績のあるLFP(リン酸鉄リチウムイオンバッテリー)だ。

フロア下に配置されたスズキeスカイのバッテリー。

つまり1625mmの車高は、全面投影面積を減らすためなのだろう。その動的性能については後述するが、より小さなバッテリーで310kmの航続距離を実現するためにスズキは、ボディの全高、特にルーフ高を抑えた。ちなみにその最低地上高も140mmと、サクラ(145mm)より5mm低い。適度な高さをもたせつつも、初めての軽EVで走安性を高めようとしているスズキの姿勢は慎重だと思えた。

スズキeスカイ

もしeスカイに容量の大きなバッテリーを搭載したら……

これは“たら・れば”になってしまうが、もしこの軽くて小さな(大きくはない、と言った方が適切か)eスカイに、35.84kWhとは言わないまでもより大容量のバッテリーが搭載されたらどうなるだろう?
仮に30kWhのバッテリーが搭載されたら、単純計算でその航続距離は357.6kmだ。WLTCの7掛けとして考えても、普通に250kmを走れるコンパクトEVが誕生する。

スズキeスカイのメーター。メーター表示ではバッテリー残量80%で走行可能距離は130km。試乗会での平均電費は6.9km/kWhと表示。

重心が低くて運転しやすく、ターボ車よりもアクセル追従性が高くて、トルクも豊か。それでも航続距離はガソリンターボ車の半分強程度だけれど、1日250kmを不安なく走れると思えばちょっと夢がある。

スズキeスカイ

現状と将来を見据えたススキ軽EVの確かな一歩

スズキeスカイのコックピット。

そんな将来への第一歩を踏み出すためにもスズキは、このパッケージングを選んだ。将来的にスライドドア付きのスーパーハイトワゴンEVを発売するためにも、まずは最もベーシックなトールワゴンで勝負するということなのだろう。

スズキeスカイのフロントシート。
スズキeスカイのリヤシート。

現実的な目で見てもスズキは日本で最も多くの軽自動車ユーザーを抱えており(2025年度はシェア33%、販売台数は55万6632台※全国軽自動車協会)。仮にその1.6%(日本のEV比率)がEVに乗り換えただけでも、年間約9000台の軽EVオーナーが一気に誕生することになる。日産サクラが2022年5月の発売から累計10万台を突破し、2025年で1万4000台以上を売り上げたことを考えれば、それは無理ない数字であり、スズキもそう考えているはず。

スズキeスカイの給電口。右リヤフェンダーに配置される。

となれば各ディーラーには充電インフラの充実が望まれるだろうし、販売面でもEVへの理解を深めてもらう必要がある。いま裏方さんたちは、てんやわんやのはずだ。

ラゲッジルームフロア下に収納された充電ケーブル。

深刻化するガソリンスタンドの減少を考えても、自宅で充電可能なEVの存在価値は大きくなって行くだろう。地方や郊外でアシとして活躍する軽自動車、これを主力とするスズキにとって、企業としてのCAFE対策と同じくらい軽自動車のEV化は重要なテーマだと思う。門外漢からは一見コンサバに見える姿勢も、スズキにとっては超真剣勝負だ。

スズキeスカイ

こうしてスズキの期待を一身に背負ったeスカイは、しかし運転すればとても素直で爽快な軽EVに仕上がっていた。後半では、その動的性能について述べることとしよう。

車名eスカイ
駆動方式2WD
電池容量26kWh
全長3395 mm
全幅1475 mm
全高1625 mm
ホイールベース2460 mm
トレッド(フロント)1285 mm
トレッド(リヤ)1295 mm
最小回転半径4.4 m
最低地上高140 mm
車両重量1030 kg
タイヤサイズ165/65R14
eスカイ(プロトタイプ)諸元表

※本記事に記載の数値は現時点のプロトタイプに基づく参考値です。