75年間変わらないランクルの使命。「生きて帰ってこられる」を支える“信頼”

トヨタ・ランドクルーザーは2026年に誕生75周年を迎えた。原点は1951年の「BJ型」だ。「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」として、必要とする人が必要とされる場所で使い、人や荷物を確実に届ける。そんな使い方をするクルマとして生を受けた。
「ランドクルーザーを鍛えたのは開発現場ではありません。世界のお客様と過酷な環境が鍛えてきました」
そう語るのは2025年1月からランドクルーザーシリーズのチーフエンジニア(CE、開発責任者)を務める内山征也氏である。
「乗っていただくと壊れる。壊れたのを直してまた乗っていただく。その繰り返しで鍛えられ、育ってきました。例えばコロンビアの生活道路は雨が降ると泥沼のようになります。こうした環境で必要になるのは、エンジン、駆動系、足回りを含めたクルマ全体で前に進んでいけること。パキスタンの山ではランドクルーザーで丸太を運んでいますが、そこでクルマが止まると仕事が止まり、その人たちの生活が止まってしまいます」

ランドクルーザー(ランクル)はクルマであると同時に仕事の道具でもある。内山CEはランクルの使われ方について説明を続けた。
「世界には『直せない』環境もあります。日本だと故障したらディーラーにという話になりますが、近くにディーラーがない世界がある。ディーラーに行ったとしても最新の設備があるとは限らないし、部品もすぐには届かない。となると、自力で走るしかない。ランクルは『壊れない』と言われますが、壊れないだけでは足りず、何かが起きても可能な限り走り続ける必要があるのです。走って直せる場所まで帰っていく。そこで直してまた走る。そこまで含めての“信頼性”です」

「生きて帰ってこられる」のがランクルの使命だが、それは「人の暮らしや仕事、時には命がかかった大変重たい言葉」だと内山CE。ランクルが生まれて75年になるが、75年間、「このクルマなら行ける、このクルマなら帰ってこられると思っていただけるように、信頼(トラスト)を磨き続けてきました。その“信頼”を変えないために、ランクルは変わり続けてきたのです。ランクルの開発のなかで大切にしているのは“継承“と“進化”です。継承というと技術や構造を守ることと思いがちですが、継承してきたのは信頼という考え方の部分です」
車両サイズやパッケージング、サスペンションやステアリングの形式、操縦安定性や快適性、安全性に環境性能などなど、ランクルは75年の歴史のなかで時代に合わせて進化を遂げているが、それは信頼性を守るためである。「変えないために変えてきた」と内山CEは語る。
4モデルに分かれた理由とそれぞれの役割。なにが違うの?

原点のBJ40が誕生して以来、ランクルはしばらくの間ヘビーデューティー系のみのラインアップだったが、現在ではステーションワゴン系とライトデューティー系が存在する。初期のランクルは悪路を確実に走って仕事をこなすことが求められたが、現在では働くことに加え、日常で使ったり、冒険を楽しんだり、長距離を快適に移動する目的で使われるようになっている。

こうした要求を1台で満足させるのは難しく、異なる要求に応えるべくラインアップを拡充してきたわけだ。ステーションワゴン系の最新モデルは「300」で、ブランドのフラッグシップの位置付け。ヘビーデューティー系の「70」はランクルの原点を色濃く受け継ぐ、質実剛健かつ堅牢なつくり。ライトデューティー系の「250」は本格的なオフロード性能を持ちながら、日常の暮らしに寄り添う使い方をカバーする。2026年5月に追加されたランクル4番目のモデルである「FJ」は、ランクルの性能をコンパクトなサイズに詰め込むことで、もっと楽しく自由に走ってもらいたいという意図が込められている。

悪路での乗り味は別物! 70から300まで乗り比べて見えた違い
300、250、70そしてFJの4モデルにさなげアドベンチャーフィールド(愛知県豊田市)で乗った。走行したのは、アップダウンに富んだダート路面の「林間コース」と、岩場やモーグル路が設定された「岩石・モーグルコース」である。

走るコースは同じなのに、クルマによって印象はガラリと変わる。路面の過酷さをダイレクトに感じられるのは70で、FJ→250→300の順に安楽になっていく。70とFJでは上屋の揺れが大きく、ドタン、ガタンときつい入力が体に伝わってくるが、250と300は揺れが少なく、ショックの角も丸められている。250でも安楽だと感じられたが、300はまるで別世界で、同じコースを走っているとは思えないほどフラット感が強く快適。同じ寝るにしても、体育館の床とホテルのベッドくらい印象が違う。

操舵システムの違いにより、ステアリングホイールから手に伝わる力や、ステアリングを操作するのに必要な力に違いが生じているのが乗り比べによってわかり興味深かった。電動パワーステアリング(EPS)を採用する300と250は軽い操作力でクルマの向きを変えることができるし、ダートの凸凹や岩石を乗り越えたり着地したりするときの衝撃、いわゆるキックバックをほとんど感じさせず、イージーに難所をクリアできる。
300については注釈が必要で、今回試乗したのは2026年10月1日に発売になったばかりのハイブリッドモデルだった。V35A-FTS型3.5L V6直噴ターボのガソリンエンジンに最高出力40kW、最大トルク290Nmのモーターを組み合わせている。縦置き10速ATのトルクコンバーターはそのままに、トルコンの前、エンジンとの合わせ面側にモーターを配置した構成。切り離しクラッチを持つためモーターのみによる走行が可能である。

従来からあるディーゼル車(F33A-FTV型、3.3L V6)は油圧パワーステアリングに操舵アクチュエーター(電動アシストモーター)を加えたシステムだが、ハイブリッド車はエンジンを停止させるシーンがあり、そうなるとポンプを駆動して油圧を作ることができないため、電気で動くEPSが合理的な選択となる。現行300投入時はオフロード車への投入は時期尚早とEPSの採用を見送ったが、北米で販売するタンドラなどでの実績を踏まえてまず250に投入。ハイブリッド車の設定を機に300でも満を持しての採用となった。
300系にハイブリッド車を追加したのは燃費のためでもあるのだが、応答性の高いモーターの強みを活かさない手はないと開発陣は考えた。残念ながら岩場ではSOC(バッテリー残量)の関係でエンジンは停止してくれず、純EV走行は体験できなかった(EVモードのスイッチは設定されていない)。300のハイブリッド車はオンロードだけでなく悪路でも、モーターを持つ仕様だからこその応答性の高い走りを提供してくれるはずだ。

300や250と対極にあるのが70だ。ステアリングのパワーアシストが(EPS=電動ではなく)油圧なら、操舵システムそのものが異なる。300と250はラック&ピニオン式だが、70はボールナット式。過酷な生活や仕事の現場での修理のしやすさなどを考慮した選択だ。ステアリングのギヤ比がスローなのはランクルシリーズ全般に言えることだが、70は一段とスロー。つまり同じカーブを曲がるにしても操作量は大きい。EPSに比べて操作に強い力が必要だし、キックバックも大きい。
ただし、信頼と安心には代えがたい。過酷な現場で長時間連続で付き合うにはこのほうがいいと聞けば納得だ。メカはシンプルに、電気・電子デバイスは最小限に、である。視界はカメラに頼らず自分の目で確かめる。上から見下ろす感覚はシリーズ中最も強く、前だけでなく側方も良く見える。

2026年5月14日にランクルシリーズに加わった「FJ」はコンパクトさが身上。全長は4575mmで300より375〜410mm短く、250より350mm短い。全幅は1855mmで300より125〜135mm、250より125mmナローだ。狭い林道を切り抜ける際の取り回しの良さと安心感は断然FJのほうが上。さすがはランクルシリーズの一員だけのことはあり、雨でドロドロになったうえにわだちがある急勾配の道やモーグル、岩場など、乗用車ベースのSUVでは尻込みしたくなるような難所も、FJなら自信を持って臨むことができる。
FJの乗り味はどちらかというと70寄りで、路面の状態がダイレクトに感じられるタイプ。ステアリングは油圧アシストかつラック&ピニオン式で、250や300のEPSに比して操作に強めの力が求められるし、キックバックも強い。上屋の動きは大きめだが、ボディのしっかり感というかガッシリ感が頼もしく感じられたのが印象的だった。

一般道でも扱いやすいFJ。新モデルは高い視界と快適な乗り味で“カジュアルに楽しめるランクル”に

FJでは一般道も走った。周囲にいろんなタイプのクルマがいる状況に持ち込んでみると、アイポイントの高さによる視界の良さが際立つ。アイポイントも高いが、ルーフはさらに高い。1960mmの全高はランクルシリーズ中トップだ。キャビンがコンパクトなぶん(それでも後席、荷室ともに使い勝手のいいスペースは確保されている)、高さ方向の余裕で心理面のゆとりをもたらす考えだという。その考えは狙いどおりの効果を発揮しているようで、開放的な気分が味わえる。

ラダーフレームシャシーにありがちな、ステアリングを切り込んだらワンテンポ遅れて向きを変えるというようなクセは見あたらず、モノコックボディのクルマと同じ感覚でカーブを曲がったり、交差点を曲がったりできる。シャキッとした動きだが、動きが過敏すぎてドライバー自身も、同乗者も不安に陥れるような動きは見せない。つまり、神経を尖らせることなくリラックスした気分で運転できる。それに乗り心地が良く、不快に感じるような揺れや突き上げは皆無だった。

パワーユニットは2TR-FE型、2.7L直4自然吸気ガソリンエンジンと6速ATの組み合わせ。単気筒容積の大きなエンジンだからだろうか、出足から充分に力があり、交通の流れについて行くのはもちろん、望めばリードすることさえ可能。アクセルペダルの動きと連動して軽快な排気音が耳に届き、これが加速の盛り上がりとシンクロして気分を高揚させる。
ランドクルーザーシリーズの4モデル、250と300は同じベクトル上にあり300は悪路走破性の面でもラグジュアリーさの面でもトップに君臨する印象。70は過酷な環境での仕事を黙々と支えてくれるモデル。FJはランクルの魅力と実力をカジュアルに味わえるキャラクターの持ち主。それぞれ性格は異なるが、信頼できる相棒になり得る点で共通している。

