かつて300万円前後から購入できたミドルサイズSUVが、いまや400万円、500万円という価格帯に移行しつつある。しかし、その背景にあるのは単純な車両価格の上昇だけではない。ガソリンエンジンや2WDを採用した廉価グレードが減り、購入時の選択肢そのものが変化しているのだ。
電動化で190万円アップのトヨタRAV4
その象徴といえるのが、トヨタ「RAV4」である。2019年に日本市場へ復活したRAV4は、2.0LガソリンエンジンとFFを組み合わせた「X」が260万8200円から購入できた。ところが、現行モデルの6代目RAV4はパワートレインをハイブリッドに集約。最廉価の「Adventure」でも450万円、「Z」は490万円となり、いずれも2.5Lハイブリッドと電気式4WDのE-Fourを組み合わせる。

2019年の最廉価モデルと比較すると、購入に必要な金額は約190万円も増えた計算になる。もっとも、世代が異なる両モデルを単純に比較して「190万円値上げされた」とするのは正確ではない。安全性能や快適装備、パワートレインなどは大きく進化しているためだ。

重要なのは、かつて260万円台という価格を実現していた2.0Lガソリン+FFという仕様自体が、現在のラインナップからなくなったことにある。つまり、同じRAV4でも「安く購入するための選択肢」が消えたのである。
2WDモデルはそもそも考慮されないスバル・フォレスター
スバル「フォレスター」にも、似た傾向が見られる。現行モデルの最廉価グレード「Touring」は385万円だが、1.8L直噴ターボエンジンにAWDを組み合わせる。ハイブリッドのS:HEVを選ぶ場合は、エントリーグレードの「X-BREAK S:HEV」でも437万8000円となる。

そもそもフォレスターの場合はAWDを外して価格を抑えるという選択肢がない。悪路走破性や走行安定性を重視するスバルにとって、AWDは単なる追加装備ではなく、商品の特徴を支える重要な技術だからだ。
一方、こうした価格帯の変化には、電動化や装備の充実も影響している。近年のSUVでは、ハイブリッドシステムや先進運転支援機能、大型ディスプレイ、コネクテッド機能などが広く採用されるようになった。かつては上級グレードだけの装備だったものが標準化され、車両価格を抑えるために省ける装備が少なくなっている。

さらに、SUVが一部のアウトドアユーザー向けの商品ではなく、セダンやワゴン、ファミリーカーからの乗り換え需要まで受け止める主力カテゴリーになったことも無関係ではない。メーカー側も、単に安いSUVを用意するのではなく、装備や性能を充実させた高付加価値モデルとして販売する戦略を強めていると考えられる。
お買い得グレードを設定するマツダCX-5
ただし、すべてのメーカーが同じ方向に進んでいるわけではない。
その違いがよく表れているのが、マツダの新型「CX-5」だ。新型CX-5では、2.5Lガソリンエンジンにマイルドハイブリッドシステム「M HYBRID」を組み合わせた「S」の2WDを330万円で設定。4WDでも353万6500円とされている。
上級グレードの「L」は407万円となるが、2WDを残すことで300万円台前半から購入できる価格設定を実現している。RAV4が450万円から、フォレスターが385万円からとなる一方、CX-5は330万円からという構成だ。

トヨタ、スバル、マツダで異なるグレード構成と商品戦略を検証
もちろん、ボディサイズや駆動方式、標準装備などが異なるため、価格だけで優劣を判断することはできない。それでも、RAV4がハイブリッド+E-Fourを基本とし、フォレスターが全車AWDを採用するのに対し、CX-5は2WDを残して購入価格を抑えているという違いは明確だ。メーカーごとに、どの性能や装備を標準とし、どこまで価格を抑えるかという判断が異なっているのである。

そして、車両価格の上昇とともに変化しているのが購入方法だ。近年は残価設定型クレジットを利用し、月々の支払額を基準にクルマを選ぶケースもある。メーカー各社も月額負担を前面に打ち出した販売を行っているが、頭金やボーナス払い、最終回の据置額などによって支払条件は大きく変わる。月々の支払額が低く見えても、車両そのものが安くなったわけではない。購入時には支払総額や契約終了時の条件まで確認する必要がある。

かつては、同じ車種のなかに安価なガソリン+2WDから高性能なハイブリッド+4WDまで、幅広い選択肢が用意されていた。しかし現在は、車種ごとにパワートレインや駆動方式を絞り込み、狙う価格帯を明確にする動きが見られる。

RAV4は電動化と4WDを重視し、フォレスターはAWDを基本とする。一方、CX-5は2WDを残すことで、購入価格を抑えた仕様も用意する。300万円台で買えるSUVがなくなったわけではない。ただ、同じ車種を少しでも安く買うためのグレードは、以前より選びにくくなっている。ミドルサイズSUVの価格上昇は、単なる値上げではなく、メーカーがどのようなクルマを、どの価格帯で販売するかという商品戦略の変化でもあるのだ。
