ベスパって、こんなに寝かせて走れるの!?

車体を深く寝かせ、膝は路面スレスレ。小径ホイールのスクーターとは思えないフォームでコーナーを駆け抜ける。

ベスパというと、丸みを帯びたボディや小径ホイールなど、まずデザインへ目が行きがち。でも、クラシックベスパは一般的なスクーターとは車体構造からして少し違う。鉄製ボディそのものが骨格を兼ねるモノコック構造を採用し、2ストエンジン+ハンドチェンジという独自のメカニズムを持つモデルも多い。見た目はかわいくても、きちんと走らせて楽しめる素性を持っている。

もちろん「モノコックだから速い」と単純に結びつけるわけではない。実際のレース車両ではエンジン、サスペンション、タイヤなどに手を入れ、それぞれのライダーが自分好みに仕上げている。ただし、そのベースにあるのはあくまでベスパ。街で見かけるあの姿の延長線上で、ここまで本気の走りができることに驚かされる。

海外にもベスパを使ったレース文化はあり、スペインではベスパやランブレッタによる24時間耐久「Pinasco Vespa The Resistance」が開催されている。2026年大会は4カテゴリー、60チーム規模。つまり、ベスパを本気で走らせる文化は日本だけのものではない。

クラシック系からモダン系まで入り交じる集団戦。車体もカラーも仕様もバラバラだが、コーナーへ入れば一気にレースの顔になる。

速い人が前から逃げる……だけじゃないVespaGP

コースインを待つ参加車両。レース前の緊張感はあるものの、並んでいるのはすべてベスパという独特な光景だ。

VespaGPは年間シリーズとして開催されるベスパのワンメークレースで、スプリント戦や耐久戦を実施。第4戦では予選タイムをもとに決勝グリッドを決めるが、速いライダーほど後方からスタートするリバースグリッドを採用し、さらに速い、MASTER/MASTER-KINGと呼ばれるライダーは時間差でスタートする仕組みとなっている。

こうすることで、前を走るライダーは「どこまで逃げ切れるか」、後方から追う側は「何周で追いつけるか」という展開になる。さらに初級・中級クラス向けのMID-TOP賞も用意され、速さだけで序列が決まるのではなく、それぞれが自分なりの目標を持って走れる仕組みになっている。

第4戦は14台が参加し、決勝は15周。レース終盤まで順位争いが続き、最終的にはゼッケン79の土倉雄大選手が優勝、2位は佐藤剛選手、3位は尾西洋一選手となった。

15周を走り切ってチェッカー。ベスパだけのレースとはいえ、ゴールの瞬間はしっかり競技そのものだ。

クラシックだけじゃない! 最新ベスパも走る

こちらはオートマチックのモダンベスパ。クラシック系とは車体も駆動方式も違うが、コーナーではしっかり深くバンクしている。

VespaGPという名前から、昔ながらのハンドチェンジ車だけを想像するかもしれない。でも現在は、現代的な駆動方式を持つベスパ(モダンベスパと呼称)も参戦している。第4戦でも複数台が出走しており、クラシック系とは違った車体や駆動系の特徴を持ちながら、同じコースで競い合った。

近年では、モダンベスパの参戦率が上がってきている。いっぽうで、連続したスポーツ走行では駆動系の熱ダレが課題になる場面もあったという。普段の街乗りでは見えてこない弱点や特徴が、サーキットでは分かりやすく顔を出す。

パドックにはクラシックからモダンまでさまざまなベスパが並ぶ。カラーや仕様を見るだけでも、それぞれの個性がよく分かる。

ブルー×オレンジのガルフカラーにゼッケン79と、MotoGPで活躍する小椋藍選手を思わせるカラーリングで仕上げた1台だ。速さだけでなく、こうした“ネタを仕込む”楽しみ方もVespaGPらしい

コースでは本気、パドックへ戻ればこの距離感

走行の合間はテントの下でひと休み。さっきまでコース上で競っていたライダー同士が、笑顔で話しているのもVespaGPらしい光景だ。

写真だけを見るとかなり本気のレースだけれど、VespaGPの魅力は勝敗だけではない。走行の合間には参加者が同じブースへ集まり、ライディングやセッティング、レース中の駆け引きについて話しながら過ごす。

決勝が終われば、良かったところや反省点を話し合い、表彰式のあとは協賛品をかけたじゃんけん大会まで開催。コース上では膝を擦りながら競り合っているのに、戻れば一気に和やかな空気へ切り替わる。このギャップも、VespaGPを単なるレースで終わらせない理由のひとつだ。

第4戦の表彰台。優勝は土倉雄大選手、2位は佐藤剛選手、3位は尾西洋一選手となった。

街でベスパを見かけたら、次から少し見方が変わるかもしれない。その優雅なボディの向こう側には、ツナギを着て膝を擦りながら走る世界もある。おしゃれに乗るのも良し、本気で走らせるのも良し。ベスパ、思っていた以上に懐が深いぞ。

2026年 VespaGP 第4戦

開催日:2026年10月18日
会場:茂原ツインサーキット ウェストDコース
天候:晴れ/ドライ
参加台数:14台
決勝:15周

次戦は11月22日、筑波サーキット1000で開催

2026年シーズンの最終戦は11月22日、茨城県の筑波サーキット1000で開催予定。takumagpとの併催で、観戦は無料となっている。今回の記事を読んで「ベスパってこんな走りするの!?」と気になった人は、実際の走りを間近で見てみるのも良さそうだ。

開催日:2026年11月22日
会場:筑波サーキット1000
併催:takumagp
観戦:無料

VespaGPについての問い合わせ

主催・問い合わせ:株式会社ベスパ/ベスパ東京日本橋
VespaGP担当:菊地 信康
TEL:03-3666-1778
WEB:https://www.vespa99.com/
VespaGP公式サイト:https://www.vespagp.com/

【モトチャンプ編集部】