兄弟車とは一線を画する魅力と、長距離走行で感じた物足りなさ ヤマハXSR125 1000kmガチ試乗2/3 

2023年からヤマハが国内発売を開始した125ccスポーツ3兄弟は、基本設計を共有しながら、各車各様の特性を備えている。そして3台の中で最もツーリングに適しているモデルが、大らかで自由度が高いライポジと優しいハンドリングを実現したXSR125だ。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

ヤマハXSR125……506.000円

兄弟車のYZF-R125とMT-125の純正指定タイヤはオンロードに特化したIRC・RX-01だが、XSR125はオフロードも多少は考慮したIRCトレールウィナーGP211。

兄弟車とは異なる自由度の高さと安心感

第1回目で述べたように、基本設計を共有する兄弟車のYZF-R125・MT-125と比較すると、XSR125はロングランに適した資質を備えている。僕がそう感じた一番の理由は、大らかで自由度が高いライディングポジションだ。上半身の適度な前傾を強いられるYZF-R125、着座位置が前方に固定されがちなMT-125とは異なり、ハンドルグリップ位置が高く、シート座面がほぼフラットで、ステップが前方に設置されているXSR125は、どんな場面でもリラックスした気分でいられるし、アイポイントが高いおかげで周囲の状況を遠くまで見渡せるから、渋滞路でもあまりストレスが溜まらない。さらに言うならアップライトな乗車姿勢は、未舗装路を含めた悪路での走りやすさにも大いに貢献してくれる。

と言っても、僕は第1回目でホンダのクラシックウイングマークシリーズを引き合いに出して、XSR125のシート高に対する異論を述べている。でも長距離走行での快適性を考えると、810mmという現状の高さはひとつの正解なのだと思う。ただし、小柄なライダーに配慮した10~20mmくらいのローダウンなら、現状からのマイナスはそんなに大きくない……ような気はする。

ライディングポジションに続いて、僕がXSR125で感心した兄弟車とは異なる魅力はハンドリングの優しさ。我ながら妙な表現ではあるものの、撮影を兼ねたツーリングのシメとして、徐々に日が暮れていくワインディングロードを走った際の安心感は、明かに兄弟車を上回っていたのだ。と言っても、25度30分のキャスター角や88mmのトレール、1325mmの軸間距離などは兄弟車と共通なのだが、前輪を他2車より1サイズ太い110/70-17とし、アップライトな乗車姿勢で前輪荷重を少なめに設定した効果なのだろうか、XSR125は車体を傾けた際の舵角にフロント18インチを思わせる穏やかさがあるので、安心してコーナーに入って行ける。

だから心身がそれなりに疲労して視界が悪くなる状況でも、XSR125はスポーツライディングが楽しめるのだ。逆に考えると、フロント17インチならではの軽快な旋回性やシャープさが堪能しやすいYZF-R125・MT-125には、そこまでの包容力は備わっていないように思う。

最高とは言い難い乗り心地とエンジン特性

そんなわけでXSR125の資質に大いに感心した僕だが、気になる点が無かったわけではない。その1つ目として挙げたいのは乗り心地の悪さ……と言うより、リアサスの硬さ。もっとも、当初の僕はこのバイクのリアサスに対して、ちょっと硬めでもトラクションがわかりやすいという印象を抱いていたのだが、距離が進むにつれて腰にジンワリとした痛みが発生。となれば、リアショックのプリロードを緩めて様子を見たいところだが、残念ながらアジャスト機構は存在しなかった。

2つ目の気になる点は、エンジンが意外にフレキシブルではなかったこと。具体的な事例を記すなら、周囲の交通の流れに身を任せて走っていて、前走車との距離が開いた際に右手に力を込めると、アレ、意外に加速しない?と感じる場面に何度か遭遇したのである。

もっともその背景には、まったり走行時に高めのギアを使いがちな僕のクセがあるのだが(すぐに5速や6速に入れがち)、エンジンの内径×行程がロングストロークの52×58.7mmで、7400rpmを境にカムシャフトが低速・高速用で切り替わるVVAを採用しているのだから、個人的にはホンダのクラシックウイングマークシリーズのような、充実した低速トルクを期待していた。

でもXSR125の低速・低回転域の加速はそこまで万全ではなく、ある程度はスピードと回転数とスロットル開度のバランスを意識して、状況によってはシフトダウンを行う必要があったのだ。いや、この表現だとホンダのクラシックウイングマークシリーズがエラいみたいだが、必ずしもそうではない。絶対的な速さやエンジンを回す楽しさなら、XSR125のほうが優位なのだから。念のために各車の最高出力・最大トルクを記しておくと、XSR125は15ps/10000rpm・12Nm/8000rpm、クラシックウイングマークシリーズの代表格と言うべきCT125は9.1ps/6250rpm・11Nm/4750rpmである。

また、田舎道をまったり巡航した際の排気音の味気なさも、個人的には気になった要素。兄貴分のXSR155とマフラーボディの基本を共有しているせいか(もちろん内部構造は異なるはず)、XSR125の排気音は主張がいまひとつ希薄で、本来の性能が抑え込まれている印象なのだ。

カスタムによって印象がガラリと変化

さて、気になる点を述べ始めたら意外に長くなってしまったが、実は今現在の僕は、アフターマーケットパーツを用いたカスタムで、XSR125の乗り心地とエンジンフィーリングが激変することを知っているのだった。と言うのも、少し前に他媒体の仕事でヨシムラのデモ車として活躍するXSR125を体験したところ、前後タイヤをブリヂストンBT-46に変更した効果で乗り心地が上質になり、同社製マフラーの採用によってエンジンは格段に元気でフレキシブルな特性に変貌を遂げていたのである。

ちなみに、XSR125に適合するタイヤは選択肢がかなり豊富で、快適性と運動性の大幅なレベルアップを求めるなら、バイアス→ラジアル化を図るのも面白いと思う。一方のマフラーはヨシムラ以外にも、スペシャルパーツ忠男やBEAMS、WR’SなどがXSR125用を発売中で、各社の開発ブログや製品紹介を見ていると、いずれの製品もノーマルマフラーとは一線を画するフィーリングが楽しめそうだ。

もっとも、新車のインプレでカスタムの話を持ち出すのは反則技のような気がするけれど、改めて振り返ると過去にガチ1000kmで取り上げたハンターカブCT125やダックス125、GSX-R125でロングランをした後も、僕はカスタムプランを夢想していた。だから個人的には、いじりたくなることはまったく悪いことではなく、むしろバイクの評価を高めるプラス材料なのだ。いずれにしてもカスタムを含めて考えると、XSR125のオーナになったら、相当に充実したバイクライフが過ごせそうである。

※近日中に掲載予定の第3回目では、筆者独自の視点で行う各部の解説に加えて、約1100kmを走っての実測燃費を紹介します。

1325mmのホイールベースと137kgの車重は、現代の125ccスポーツネイキッドでは平均的な数値。ちなみにライバル勢の中で、最もホイールベースが短いのはスズキGSX-S125:1300mmで、最も車重が軽いのはホンダCB125R:130kg。

主要諸元

車名:XSR125
型式:8BJ-RE461/E34LE
全長×全幅×全高:2030mm×805mm×1075mm
軸間距離:1325mm
最低地上高:170mm
シート高:810mm
キャスター/トレール:25°30′/88mm
エンジン形式:水冷4ストローク単気筒
弁形式:OHC4バルブ
総排気量:124cc
内径×行程:52.0mm×58.7mm
圧縮比:11.2
最高出力:11kW(15ps)/10000rpm
最大トルク:12N・m(1.2kgf・m)/8000rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:2.833
 2速:1.875
 3速:1.363
 4速:1.142
 5速:0.956
 6速:0.840
1・2次減速比:3.041・3.714
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ37mm
懸架方式後:リンク式モノショック
タイヤサイズ前:110/70-17
タイヤサイズ後:140/70-17
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:137kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:10L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:60.3km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス2:49.4km/L(1名乗車時)

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…