1960年代のスクランブラーを彷彿させるマッシュマン250はどんなバイクなのか?|マットモーターサイクルズ

マットモーターサイクルズが送り出す個性的なカスタムモデルはどれも、シンプルな中にクラシカルな雰囲気を見事に表現しています。そうした中にあってMUSHMANは、もっともビンテージスクランブラーらしさを造り込んだバイクだといえます。都会を駆け抜け、郊外の田園地帯を行く。風景に溶け込むそんな走りをゆったりと楽しむことができるバイクが、MUSHMAN250なのです。

写真:徳永茂
協力:MUTTモーターサイクルズ https://www.muttmotorcycles.jp/
   MUTT東京セントラル http://mytec-realize.com/mutt/

メーカー希望小売価格(消費税込み):749,100円

武骨で逞しいフォルムに力強さと高い存在感を表現

荒野を駆ける姿がもっとも似合うバイクの1台がMUSHMANじゃないかと思います。60年代のスクランブラーを彷彿させるスタイルは、とてもワイルドです。デザインの基本はトラディショナルなモデルなのですが、ショートタイプのフロントアップフェンダーやステンレス製フォークブレース、エンジンガードバー、タンクパッド、そしてレザーとスチールのタンクラックなどが装備され、足回りを固めた極太の18インチブロックタイヤと合わせて、武骨なスクランブラーバイクへと造り上げられています。マット系のボディカラーとのマッチングもバッチリです。
MUSHMAN250で街へ繰り出せば目立つこと請け合い。そしてひとり旅の相棒にもピッタリな雰囲気を醸し出していると思います。

街乗りにもツーリングにもフィットするポジション

シート高は810㎜あるのですが、実際にはそれほど高い印象はなく、乗降性も悪くありません。例によって、シートに腰を下ろしてもそれほど沈み込みはありません。しかし足つき性に不満はありませんでした。足を下ろしたときにステップと干渉しないのも利点だと思います。とっさに足を下ろした瞬間、ステップに裾が引っかかって倒してしまう、なんて可能性も否定できないので。
ハンドルはセミアップのパイプハンドルが装備されています。高さ、幅、角度のどれもがすんなりと手をグリップに収めてくれます。肘が張ることもなく、上体も自然な直立姿勢となるので、肩に力を入れずに走ることができます。前寄りに位置しているステップとのバランスも良く、下半身の収まりはいいです。シートの座り心地は硬めですが、自由度が大きいので着座位置をずらしながら乗れば、お尻の痛みを抑制することができます。
いずれにしても、体格に関係なくだれにでも違和感のないポジションが得られるんじゃないかと思いました。
上体、下半身ともにリラックスした自然なポジションがとれる
シート高は810㎜で、スクランブラーとしては標準的なもの。サスペンションの沈み込みはあまりない
足を下ろしたときにステップと干渉しないので足が着けやすい。取り立てて足つき性がいいわけじゃないが、足つきに不安はないはず

シングルらしさを放つスムーズなエンジン特性

心臓部の空冷シングルエンジンは、わずか13kW(17.2hp)の最高出力しか発揮しませんし、最大トルクだって18Nmです。250㏄の排気量からしても動力性能は低めです。「そんなパワーしか出ないんじゃ走っても楽しくない!」と思う人もいるでしょう。でも、この空冷シングルは歯切れの良いサウンドとフィーリングをもたらしてくれるのです。たしかにパワフルじゃありませんけどエンジンの存在感はライダーに伝えてきます。
国内の一般道では60km/h制限となっていますが、スタートから制限速度までの範囲、つまり常用域で、低中速重視の動力性能に不足はありません。実際に発進加速で他車に置いて行かれるようなことはありませんし、スムーズなパワーフィーリングも使いやすいと感じます。さらに、田舎道をのんびりと走らせれば、マシンとの一体感も生まれます。
パワフルじゃないですが130㎏と軽く仕上げられたボディのおかげもあって、日常的な走行使用において加速性に大きな不満を抱くことはありません。上りが続く山岳路や高速道路ではもう少し力がほしいと感じるでしょうが、MUSHMAN250のメインステージはストリートや田園地帯の一般道です。250㏄空冷シングルでも十分に対応してくれます。
空冷SOHC2バルブシングルエンジンは、決して動力性能が高いわけじゃないが、低中速型のトルク特性なので一般道での常用域で不測のない加速性を発揮してくれる。左出しされたショートマフラーからは歯切れの良いサウンドを放ち、シングルらしい鼓動を体に伝えてくる

予想外に軽快なハンドリングはストリートで高い機動性を発揮

極太のブロックタイヤを履いているので、正直にいって、もっさりとした鈍重な操縦性を予想していました。ところが実際に走り出してみると、住宅地の路地を曲がるような小さなターンにも素直に反応してくれ、そうした操作に際して重さを感じる度合いも少なかったのです。さらにちょっとしたワインディングへと導くと、カーブへのアプローチでバンクさせるときも、S字を切り返すときも、軽快なハンドリングで狙ったラインに乗せることができました。
タイヤのグリップ性にも不足は感じませんでしたし、直進性も含めてつねに高い安定性を発揮。それでいて素直で軽快なハンドリングを両立していたのですから、少しばかり驚きました。これでもし前後サスペンションの作動性が良ければ、スポーティな感覚で走ることができるはずです。
今回は林道などのダートを走らなかったのですが、見た目がスクランブラーなので林道ツーリングにも行きたいと思うユーザーもいるでしょう。もちろんダートを走ることは十分可能です。ブロックタイヤを履いているのでグリップ性も高いんじゃないかと思います。ただし、動きの硬いサスペンションは走破性を少なからずスポイルしますし、見た目にはかっこいいフロントのショートフェンダーも、容赦なく泥や小石を跳ねてくるでしょう。林道ツーリングやキャンプツーリングをメインにするのであれば、用途に合わせたカスタムは必要だと思います。
ABS装備の前後ディスクブレーキは、制動力に大きな不満はありませんでした。バイクの性能を考えれば、まあ十分な装備かなと思います。
装備でいえば、ヘッドライトなどの灯火類にLEDが採用されていたのも新鮮でした。さらに、使いやすいレバーアジャスターにも感心しました。クラシカルなデザインを突き詰めながら、新しいものも積極的に導入する。そんな姿勢に共感が持てます。

ディテール解説

奇をてらわないオーソドックスなパイプハンドルは、自然で違和感のない乗車姿勢を実現
小さな丸型メーターは、アナログ式タコメーターと液晶ディスプレイの組み合わせ。ギヤポジションを表示するが、ニュートラルランプはない
各スイッチは操作しやすい大きさと配置。ツマミがついたレバーアジャスターも使いやすい
右スイッチにはキルスイッチとセルスターターが配置される。ブレーキレバーにも使いやすいアジャスターが装備
アルミボディの丸型ヘッドライトにはLEDを採用。ウインカーはフォークに装着されるシンプルなスタイル
いかにもカスタムモデルらしい小型のテールランプ。ウインカーともどもLEDを採用している
14L容量の燃料タンクのサイドにはスクランブラーらしくラバーパッドが装着。さらにタンク上にはレザーとスチールで仕上げられたタンクラックが装備
シンプルなスタイルのダブルシートは自由度が大きい。クッション性は良くないが、着座位置をずらすことでお尻の痛みが緩和できる
フレームのダウンチューブにスチール製のエンジンガードを装備。アルミ製アンダーガードとともにエンジンをしっかりガードする
ステンレス製フォークブレースによって強度を確保。上部にはショートタイプのアップフェンダーがマウントされている。タイヤはブロックタイヤ
正立フロントフォークにはフォークブーツが装着。ブレーキは2ピストンキャリパー採用のシングルディスク。ABSは標準装備
リアサスペンションには別体タンク付きツインショックを装備。ブレーキはディスク。ホイールはスポーク式だ

主要諸元

排気量:249cc(0.249L)
トランスミッション:5速リターン式
最大出力:13 kW (17.2 hp)
最大トルク:18Nm
シート高:810mm
全長×全幅×全高:2060mm×760mm×1150mm
車両重量:130kg
フューエルタンク:14L
エンジン:4-ストローク シングルシリンダー
燃料供給方式:フューエルインジェクション
規格:ユーロ5
タイヤ・ホイール(前後):18インチ
ブレーキ:ABSブレーキシステム
エキゾースト:左出し

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…