MotoGPイギリスGP開催地、シルバーストンのパドック紹介。移動用電動スクーターがずらり

シルバーストンは長い歴史を持つサーキット

MotoGP第7戦イギリスGPが行われた、シルバーストン・サーキットのパドックを紹介しよう。

シルバーストン・サーキットがどこにあるかというと、ロンドンを北西にバーミンガムへ向かった真ん中あたり。バーミンガムから南東にロンドンに向かった真ん中あたりにある。

グレートブリテン島としては南に位置している。5月のイギリスは天候が不順だ。夜から朝は寒く、日中は陽が差して暖かいと思えば雲が空を覆って寒くなる。雨が降ったかと思えば、青空が見えてくる。“four seasons in one day”と言われるほど、変わりやすい気候である。例年、イギリスGPは8月に開催されてきたのだが、今年は5月の開催になった。大方の予想通り、週末は不安定な天気になった。(ちなみに、2026年のイギリスGPは、8月開催に戻ることがすでに発表された。さもありなん、である)

シルバーストン・サーキットの歴史は、とても長い。サーキットになる以前のこの場所は、第2次世界大戦中の1941年にイギリス航空省によって飛行場として徴用され、爆撃機司令部の訓練基地だった。戦後、1950年にはフォーミュラ1の第1回大会イギリスGPが開催された。こうした歴史が背景にあるサーキットだから、サーキット内の壁にはF1ドライバーの顔やフォーミュラカーなどが描かれている。

壁にフォーミュラカーが描かれている©Eri Ito

なお、ロードレース世界選手権がシルバーストン・サーキットで初めて開催されたのは、1977年のことだ。その後、イギリスGPは1987年から2009年までドニントンパークというサーキットで開催され、2010年から再びシルバーストン・サーキットに戻った。現在、ドニントンパークではスーパーバイク世界選手権が開催されている。

現在のパドックには、2011年に完成した「ザ・ウイング」というピットビルが立っている。この「ザ・ウイング」はピットやメディアセンター、プレスカンファレンスルームなどが入る巨大な複合施設である。MotoGPでは2022年まで旧ピット(現在の8コーナーから9コーナーの間にあった)を使用していたが、2023年からは「ザ・ウイング」の新ピットが使用されている。

ザ・ウイング©Eri Ito

イギリスGPのパドックは……といっても、ヨーロッパのMotoGPパドックの雰囲気は、似たようなものだ。ヨーロッパのグランプリはトレーラーで移動するので、チームのトレーラーやトラック、ホスピタリティは同じものが停まり、立っている。

ピットの前には各チームのトレーラーが停まっており、トレーラーヘッドがぴたりとそろっていて、とても美しい。MotoGPクラスの各チームのトレーラーの前には、そのチームに所属するライダーの写真が衝立てになって立てられている。

その他のレイアウトはサーキットによって多少異なるが、イギリスGPの場合は、基本的に各チームのトレーラーの前に、そのチームのホスピタリティが立っていた。これはMotoGPクラスの場合で、Moto2、Moto3クラスになると、ホスピタリティは少し離れた場所に立つことが多い。シルバーストン・サーキットもそのパターンだった。

右側がピット前にならぶチームのトレーラー。各トレーラーの前には所属ライダーの顔写真が衝立てになっている©Eri Ito
こちらはホンダのファクトリーチーム、カストロール・ホンダLCRのトレーラー©Eri Ito
日本人MotoGPライダー、小椋藍が所属するトラックハウス・MotoGP・チームのトレーラー。奥がピット©Eri Ito

ホスピタリティとは、チームのスタッフが食事をしたり、ミーティングをしたり、ゲストを迎え入れたりするための場所である。ライダーに個別インタビューを申し込んだとき、インタビュー場所としてホスピタリティを指定されることもある。食事時間ではなくてもいつもカフェバーはオープンしていて、ホスピタリティに行くといつも「コーヒーはどう?」とすすめられる(残念ながら筆者はコーヒーが飲めないので、いつもにっこり笑って「ありがとう。でも、大丈夫」と言うばかりなのだが)。

また、チームが主催するイベントの会場になることが多いのも、ホスピタリティだ。イギリスGPでは、LCRチームのホスピタリティで、フランスGPでのヨハン・ザルコ優勝のメディア向けセレブレーションが行われた。そんなときは、みんな、軽食とともにお酒と会話を楽しむ。

1階建てのホスピタリティもあれば、3階建て(!)のものもある。そしてもちろん、このホスピタリティも解体されてグランプリを移動していく。残念ながら、日本まではるばる海を越えて来ることはできないので、ホスピタリティ、そしてチームのトレーラーやサプライヤーのトラックなどが立ち並び、小さな街のようになったパドックは、日本GPでは見られない光景である。

ホンダのホスピタリティ©Eri Ito
ヤマハのホスピタリティ©Eri Ito
小椋が所属するトラックハウス・MotoGP・チームのホスピタリティ©Eri Ito
LCRホンダのホスピタリティ©Eri Ito
イギリスGP木曜日の夕方、メディアに開かれたフランスGPヨハン・ザルコ優勝のセレブレーションイベントが開催された©Eri Ito

そんな具合にパドックはとても広いので、チームスタッフやライダー、関係者はパドック内の移動のためにスクーターなどを使用する。ただ、シルバーストン・サーキットでは、主に週末の日中、スクーターはパドックに入れなかった。また、2ストローク、4ストロークのスクーターは許可されない。というわけで、多くの電動バイクがパドック周辺に停まっていた。そこまで電動バイクで移動して、パドックには歩いて入るわけだ。

電動バイク以外にも、電動キックボード、自転車も多く使用されている。過去に、Moto2、Moto3ライダーが、木曜日の朝に購入したばかりらしい電動キックボードを持ってサーキットにやって来たシーンを見かけたことがある。持ち運びができるし、便利なのかもしれない。

パドックに停まるスクーター。全て電動である。©Eri Ito
Feloの電動スクーター©Eri Ito
KTMはZEEHOの電動スクーターを使用©Eri Ito
ホンダのEM1 e:もあった©Eri Ito
Super Socoの電動スクーター©Eri Ito
ドゥカティカラーのSilence電動スクーター©Eri Ito
ヤマハの電動スクーターNEO’s ©Eri Ito

イギリスGPの開催地、シルバーストン・サーキットの雰囲気、お楽しみいただけただろうか?

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伊藤英里 近影

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