【愛車で北海道ツーリングの手引き】東京圏住まいのベストなフェリー航路を考える。

1980~1990年代前半にかけて、バイクブームとともに〝北海道ツーリング〟が社会現象にまで発展した。それを大学時代にリアルタイムで体験した筆者は、当時を懐かしむかのように3年前から彼の地へ毎年訪れている。東京圏からの近年における代表的な3ルートを全て試した経験から、ベストなフェリー航路について考察した。見逃せないのが新潟港からの日本海ルートなのだ!

REPORT&PHOTO●大屋雄一(OYA Yuichi)

陸送やレンタルという手段もあるが、主流は今も昔もフェリーだ

筆者にとって初めての北海道ツーリングは1990年。写真は大洗港で、この時代は23:59発→翌日20:00苫小牧着だった。

日本国内で最もバイクが売れたのが1983年のこと。その前後から1990年代前半にかけて、ライダーの間で北海道ツーリングが大ブームとなった。北の大地へ愛車とともに渡る手段としては当時からフェリーが一般的だったが、その航路は今よりも多く、東京~釧路間や大洗~室蘭間というルートもあったのだ。

また、他の手段としては、JRによる上野駅/大阪駅~函館駅間で運行されていたMOTOトレイン/モトとレール、ANAによるスカイツーリングなどもあったが、いずれも現在は終了となっている(ANAは2020年度で終了。2021年度は9/12~10/31にバイク輸送のみを受付)。
時間がない、もしくはフェリーが苦手というライダーには専門業者によるバイク陸送という手段がある。また、飛行機で現地入りしてレンタルバイクを借りるという方法も、実は昔からあったのだ。とはいえ、長時間の船旅という非日常感も含めて、フェリーによる渡航は北海道ツーリングにおける醍醐味の一部だと筆者は感じている。

太平洋フェリー「きそ」のエントランスホール。3層吹き抜けという豪華な造りで、まさに洋上のホテルだ。
新日本海フェリー「ゆうかり」のスカイデッキから沈む夕陽を眺める。この非日常感こそ船旅の醍醐味だろう。

東京圏からの代表的な出発港は、大洗、仙台、新潟、青森の4か所

東京駅から約120km、「大洗発」はお手軽さの最有力手!

現在の大洗港。これは帰ってきたときのもので、誰もが北海道との気温差に驚く。

今回は筆者の居住地である千葉県市川市をベースにルートを検討したい。市川市は東京都の江戸川区に隣接しており、さらに私の自宅から東京駅までは15km圏内なので、都心近郊に住む多くのライダーにとっても参考になるかと思う。
さて、近海郵船による東京~釧路航路が1999年に旅客輸送が休止となった現在、東京から最も近い北海道行きのフェリー乗り場は茨城県の大洗港となった。この大洗~苫小牧間の商船三井フェリーは夕方便(19:45発→翌日13:30着)と深夜便(01:45発→当日19:45着)の1日2便体制で運航されており、仕事が終わってから乗船することも可能だろう。

北海道の公式サイトより引用。フェリーの移動速度は40km/h弱で、大洗~苫小牧間を約18時間で移動する。
北海道の公式サイトより引用。青森~函館間は約4時間なので、これを仮眠にあてるライダーも多い。

「仙台発」便で着目すべきは苫小牧の到着時刻

仙台港。後ろのフェリー「いしかり」は、2020年10月にくじらがバルバスバウに引っ掛かっていたことでニュースに。

次に東京から近い発着港として挙げられるのが宮城県の仙台港。こちらは太平洋フェリーで、具体的な航路は名古屋~仙台~苫小牧となっている。仙台~苫小牧間は毎日運航(仙台~名古屋間は隔日運航)されており、ダイヤは仙台19:40発→翌日11:00苫小牧着だ。

大洗発、仙台発とも到着は苫小牧港だが、注目してほしいのはその時刻だ。商船三井フェリーの場合、夕方便なら13:30、深夜便なら19:45。仙台港発の太平洋フェリーは11:00である。フェリーが接岸してからバイクで下船するまで20分前後は要することから、実際に走り始められるのはこの到着時刻以降となる。もしキャンプツーリングが目的であれば、暗くなる前にキャンプ場に到着しないとテントの設営が困難に。北海道の夏は東京よりも日没が遅いとはいえ、例えば大洗港から夕方便に乗船して13:30に苫小牧港に到着した場合、約150km離れた富良野あたりでキャンプしたいとなると、途中の観光は早めに切り上げないと間に合わなくなる可能性大だ。


あえての日本海ルート。「新潟発」の決め手は北海道への到着時刻にあり!

新潟港のフェリーターミナル。乗船するバイクが白線に沿って並ぶ。テンションが上がる光景だ。

そこで目を向けてほしいのが、新潟港~小樽港間を結ぶ新日本海フェリーだ。北行き、つまり小樽行きは火~日に運航していて、新潟港を12:00に出港し、翌日04:30に小樽港に着港するダイヤとなっている。小樽港から札幌駅までの距離は約35kmで、もし札幌観光が目的であれば苫小牧港からアプローチするよりもはるかに近い。それに早朝04:30に到着するので、道が空いている涼しい時間帯に道北や道東へその日のうちにワープすることだって可能なのだ。

実は仙台港も新潟港も、東京圏からの距離はほとんど変わらない。筆者の自宅からそれぞれのフェリー乗り場までの距離は、仙台港は常磐道経由で352km、新潟港は関越道経由で359kmとなっている。付け加えるとフェリーの料金も、客室のグレードとバイクの排気量が同等であれば、ほぼ同じぐらいなのだ。


とにかくバイクで走りたい! そんなライダーは「青森」までGO!

青森港~函館港間は2社が運航。写真の津軽海峡フェリーよりも青函フェリーの方が運賃が安く設定されている。

さらに、本州の最北端である青森県の青森港や大間港から函館に渡る航路、同じく青森県の八戸港から苫小牧港に渡る航路がある(ちなみに岩手県の宮古港と室蘭を結ぶ川崎近海汽船は2020年3月に運航休止となっている)。青森港~函館港間の航路における最大のメリットは便数の多さだ。津軽海峡フェリー青函フェリー、二つの会社が1日8便ずつ(!)運航しているので、スケジュールの自由度は格段に大きい。筆者の自宅から青森フェリーターミナルまでの距離は常磐道~東北道をつないで708km。これを走りきれるだけの体力と高速料金が必要なのと、あとは北海道のどのエリアを集中的に走りたいかによって函館着はデメリット(函館港から札幌駅まで最短で252km)になってしまうが、ガラガラの東北道を独り占めできるあの感覚は体験しておいて損はないだろう。


青森フェリーターミナルの近くにある「あおもり健康ランド」は宿泊も可能。ヘルメット用のロッカーもあり、ここで疲れを癒やしてから北海道へ渡るのもいいだろう。
せっかく東北地方を通るのだから、東北道を途中で降りてツーリングするのもあり。写真は津軽岩木スカイラインだ。

フェリー料金と高速&ガソリン代はトレードオフの関係にある

今年の9/21~10/30、太平洋フェリーは「きたかみ」限定で秋のライダーツーリングキャンペーンを実施。客室はエコノミーシングル限定で、バイクは排気量を問わず一律16,900円で利用できるというもの。オリジナルステッカー付きということで、もちろん筆者も飛び付いた。

最後に費用感について。フェリーは繁忙期と閑散期で運賃が異なるほか、客室のグレードやバイクの排気量などによっても大きく変動する。一例として筆者が2021年9月のシルバーウィークに北海道ツーリングを計画した際の料金は、最も安い寝台と250ccのバイクを選択した場合、商船三井フェリー(大洗~苫小牧)が片道で計27,760円、太平洋フェリー(仙台~苫小牧)が計16,800円、新日本海フェリー(新潟~小樽)が計17,200円だった。単純に航路が長くなるほど高くなるわけだが、高速道路代やガソリン代とトレードオフの関係にあるので、商船三井フェリーが極端に高いとは言い切れない。

というわけで、東京圏住まいなら新日本海フェリーがかなりオススメではあるのだが、残念ながら月曜は運航していないので、筆者にとって今年はそれがネックに。また、シルバーウィークは北海道もまだまだツーリングシーズンということで、商船三井フェリーはバイクの積載枠がずいぶん前からキャンセル待ち状態だった。つまり、必ずしも狙ったフェリーに乗れるとは限らないからこそ、それぞれのルートにおけるメリット・デメリットを知っておくと予約の際に慌てずに済むはずだ。


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