身長163cmのオジサンライダーが、いろんなヨーロッパ車にまたがって足つきチェックした! |東京モーターサイクルショー2022

続けてお送りしている東京モーターサイクルショーでの足つき性チェック。今回はヨーロッパメーカーのバイクたちに次々とまたがってみることにした。大柄な人が多い地域だけに身長163センチの短足オッサンには厳しい結果が待ち受けていることだろう。いつだって道のりは平坦ではない。日本男児の意地を見せるべき時が来たのだ!


REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
PHOTO●星野耕作(HOSHINO Kosaku)
ヨーロッパーメーカーのバイクたちにアタック!

前回のスズキ車では自信が持てる足つき性を確認できたのは4台中2台、中国生産で甦った老舗ベネリでは125ccモデルだけという悲惨な結果になった短足オッサン。だが、敵はまだまだ数多く存在する。次々に攻略しなければ先へ進めないとばかり、ヨーロッパメーカーのバイクたちにもチャレンジだ。身長163cmしかない短足オッサンより20cmも30cmも身長が高いヨーロッパ人が設計するモデルにどこまで肉薄できるのか。始める前からさらに悲惨な結果になるだろうことは百も承知。何事も始める前から無理と決めず、チャレンジしてから判断すべし。短足な人の参考になるのであれば、オッサンは猪突猛進するのだ!

KTM 390 DUKE

人気のデュークは390にまたがることができた。

まずはイタリアのKTMから始めてみたい。今回の東京モーターサイクルショーでまたがることができたのはデュークの390と1290、それにRC390。手始めに390デュークからまたがってみよう。実は390デュークを3年前に試乗したことがあり、非常に好印象を抱いている。パワフルかつ軽量なのでシーンを問わずファンなライディングが味わえたからだ。ただ問題は足つき性。シート高が830mmもあるので信号で止まる時などは気を使ったもの。数年ぶりに対面した390デュークは新型に生まれ変わったもののシート高は不変で、やはり短足オッサンにシビアだった。両足は足指の付け根が曲げられるくらいに余裕はあるものの、つま先立ちに変わりはない。ただ車両重量が153kgと軽いので、お尻をズラして片足だけ着地させていれば問題なし。また乗りたくなってしまった。

KTM RC390

390デュークと同じエンジンを積むRC390。

390デュークが新型に切り替わり、スーパースポーツモデルであるRC390も2022年にモデルチェンジして新型に生まれ変わった。短足オッサンにとり気になるのは燃料タンク容量が増えたことでスタイルが変わり、大きなタンクが足つき性を邪魔しないかということ。シート高は同じエンジンのデュークより少しだけ低い824mmなのだが、強めの前傾姿勢になることからタンクが邪魔になりそうだと感じた。実際にまたがってみると事前の想像通りで、デュークより低いシート高なのに足つき性はむしろ悪くなってしまった。足指の付け根がほぼ曲げられず、バレリーナ状態寸前になってしまう。車両重量が155キロと軽いので何とかなりそうだが、街中で乗るには厳しいだろうことが予想される。

KTM 1290 SUPER DUKE GT

デュークシリーズの最大排気量モデルはどうだ。

デュークシリーズで最大排気量モデルになるのが1290スーパーデューク。スーパーデュークは「R」が先行して発売され、そこに大型スクリーンを備えるツーリング向けモデルに仕立て直したのがスーパーデュークGTが遅れて登場した。「R」は一足先にモデルチェンジしており、GTも2022年に新型が発売された。実に新車価格は244万9000円(税込)とのことで、価格もズバーンと突き抜けている。走れば最高に楽しそうだが足が届かなくては話にならない。さて、実際またがるとどうか。シート高は835mmもあるのだが、意外にも両足は足指の付け根付近まで着地してくれた。「R」だと前傾姿勢が強いので足つき性は悪くなりそうだがGTなら何とかなりそうに思える。ただ、車両重量は216kgあるので油断は禁物だろう。

ハスクバーナ・スヴァルトピレン401

スヴァルトピレン401は390デュークと同じエンジンのモデル。

ハスクバーナといえばオフ車のイメージだったが、それを覆したのがKTM傘下になって発売されたヴィットピレン401。390デュークと同じエンジンを用いつつ、独自のチューニングを施し斬新なスタイルで登場した。やはり数年前に試乗するチャンスがあったのだが、その時はあまりに足が届かないので乗るのを見送った。短足ゆえの悔しい思いを味わったハスクバーナだが、今回のモーターサイクルショーにはヴィットピレンではなくブロックタイヤを履いたスヴァルトピレン401が展示されていた。またがる前から「足が届かないだろうな」と予想していたのだが、実際には両足つま先立ちながら、何とか両足とも着地することができた。シート高は835mmもあるのになぜだろうと考えたが、数年前だと体重が50kg前後しかなかったからではないかと予測される。今では58kgまで体重が増えたので、もしかしたら沈み込みで足が届くようになったのかも。中年体型にも良いことはあるのだ。車両重量は152kgしかないので、再チャレンジする機会があればぜひ試乗してみたい。

F.B.モンディアル Hps300

新生F.B.モンディアルがモーターサイクルショー初展示。

F.B.モンディアルというメーカーをご存知だろうか。1979年に経営不振に陥ったイタリアの老舗メーカーなのだが、近年になって中国生産モデルとして甦った。すでに日本にも上陸していたが新型コロナウイルスの影響によりモーターサイクルショーには今回が初出展となる。そのためかプレス向けの時間であるにもかかわらず、ブース内は結構な人だかりで足つき性を次々と試してきた筆者が足つきを試すことができたのはわずかに1台だけだった。試したのはFOR HIPSTERSと呼ばれるHps300。Hps300には標準モデルとカフェスタイルのスポーツクラシックの2種がラインナップされていて、さらに125cc仕様がそれぞれに存在する。どちらもエンジン排気量が違うだけで車体構成は同じ。ちなみに車名は300となっているが排気量は250ccなので車検不要のモデルだ。シート高は標準モデルで125が795mm、300が790mm。スポーツクラシックは125、300ともに804mm。いずれも偏差だから足つき性にそれほど違いはないだろう。ということでまたがると、両足はつま先を曲げることができるくらいに着地する。車両重量は300でも149kgでしかないので、街乗りで困ることはなさそうだ。

BMW G310R

中型免許で乗れるBMWは気になる存在。

中免でも乗ることができるBMW、さらには新車価格60万円台ということが話題になって人気のBMW G310R。2022年モデルでも新車価格は68万1000円(税込)からなので、興味津々な人も多いことだろう。単気筒エンジンのモデルなので全体的にスリムな車体構成でシート高は785mmに抑えられている。また車両重量は燃料タンク90%以上時で164kgと軽量だから、身長163cmの短足オッサンにもフレンドリーなはず。ところが実際またがると数値から想像するより足つき性は良くなかった。両足ともにつま先立ちとなり、足指をわずかに曲げることができる程度。とはいえ軽量だから街乗りで困ることはないだろうと思えるくらいの足つき性といえる。ライポジも写真のように自然なものなので、どこにも無理がない感じだ。

BMW R nine T

ヘリテージファミリーのクラシックモデル。

続いてはBMWのラインナップ中で個人的に一番気になっているR nine T。ヘリテージファミリーというくらいだから、どこか懐かしく感じるスタイルは非常に魅力的。特に今回またがったミネラル・ホワイト・メタリックは派手なカラーリングがスタイルの良さを一層際立たせ、伝統のボクサーツインも存在感抜群。ただ、身長163cmのライダーがまたがると、明らかにバイクがデカイ。シート高は805mmと低めながら車両重量は224kg(燃料満タン)。取り回せるかどうかギリギリといったところで、足つき性は両足ともつま先をわずかに曲げられるくらいしか余裕はない。ただ現代の平均的な日本人体型であれば普通に乗ることができるサイズ感だろう。

BMW S1000RR

スーパーバイク世界選手権で勝つために生まれたS1000RR。

BMWがスーパーバイク世界選手権に打って出るなんて思ってもみなかった人が多いことだろう。だから2010年に発売されたS1000RRは、世界中から驚きの目で見られたもの。2019年モデルで刷新され、現行型では999ccの排気量から207psを発生する。まさにスーパーな性能を有するスポーツモデルだからシート高も824mmと高い。さらには写真のような前傾姿勢になるため、とてもじゃないが体格負けしている。いかに満タン時の車両重量が200kgとはいえ、これでは無理というもの。ただ、サーキットだけ走るなら楽しいこと間違いないだろう。

BMW R18 Classic

ひとこと「デカイ!」。

BMW最後はR18クラシック。こちらもヘリテージファミリーの一員で、燃料タンクに2本のストライプが入れられたことでもわかるように初期BMWを彷彿とさせるデザインのクルーザーモデル。短足オッサンには無縁な乗り物だと常々感じているが、実際またがってみないことには何も判断できない。またがってみたのは標準のR18にスクリーンやサイドバッグなどを装備したクラシックで、シート高は690mmと断然に低い。そのため両足ともにカカトまでベッタリと着地してくれた。ヨーロッパ車で初の快挙だ! ただ、そんなことで喜んでいる場合ではなく、車体の大きさを反映して車両重量は374kgもある。乗れと言われたら乗ることはできるだろう。けれど押し引きは絶対に無理だし、倒したら一人で起こせるはずもない。

プジョー・ジャンゴ125/150ABS

クラシカルなスタイルのユーロスクーター。

2022年の東京モーターサイクルショーは、心なしかスクーターの展示が少なかったように感じた。おまけにまたがることができたのは、写真のプジョー・ジャンゴくらいなものだった。ジャンゴは2018年から日本でも発売されているスクーターで、現在は125ccと150ccのエンジンがラインナップされている。どちらの排気量を選んでもフロントブレーキにABSが装備される仕様で、レトロなスタイルだがしっかりと現代のモデルである。新車価格は42万9000円から46万2000円(税込)なので、国産スクーターを狙っているなら一考していいところ。シート高は770mmで車両重量はどちらの排気量でも129kg。またがってみるとなぜか両足では着地できない。ハテと思ってよくよくみるとリヤタイヤが台の上に乗っていた。できれば外した状態で再チャレンジしたいところだが、足つき性が良いモデルとは言いづらいかもしれない。

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…