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FANTIC XEF 125……890,000円(消費税込み)
日本国内においては強い印象を残してきていないかもしれないFANTIC。一部ファンからすれば「トライアル」のイメージも強いことだろう。1968年にイタリアでスタートしたFANTICはそのイメージ通り、オフロードそしてトライアルの世界で名を残してきたメーカーである。
日本デビューを最初に飾り話題となってきたのはトラッカースタイルのキャバレロシリーズ。こちらは125、250、500と排気量ラインナップがあり、これまたとても魅力的だが、むしろ今回試乗できたXEFシリーズこそが本来のFANTICらしいラインナップなのかもしれない。
XEFシリーズはこの125の他に250と2ストロークの50もラインナップする三兄弟。いずれもコンペティション志向であり、また少量生産を感じさせる手作り感もワンオフレーサー的で心を躍らせてくれる。
ユーロ5に対応するエンジンは、本国のスペックシートによれば免許区分に合わせて15馬力となっているものの、アイドリングからなかなかパルス感のある元気さがあり、走り出してもスペック以上のパフォーマンスを感じられる。ギア比がショート方向に振ってあること、またアクセル開け始めのインジェクションの作り込みが上手なことが手伝って、クラッチミートからの発進ではフルサイズの車体を感じさせない軽やかさで走り出せた。
125cc版は車体や足周りをほぼ250cc版と共通としたフルサイズモデル。クロモリフレームやアルミのスイングアーム、タイヤサイズも同じで、倒立フォークの径が細かったり、チェーンのサイズが違ったりといった排気量に合わせた小変更のみである。また試乗車はローダウン加工がなされていたため、車体重心が低くなっていた。
ローダウンされているとはいえ高いシート高、そしてタンク上方へと伸びる薄っぺらいシートなど車体構成からはかなりの「コンペ感」を味わえる。腰に近い位置でハンドルを握るイメージはまるでレーサー、なのだが、同時にそのハンドルは小指側が絶妙に下に向く垂れ角がついているため、いかり肩にならない優しさも持っていた。座っても立ってもコントロールしやすい絶妙な位置と言えるだろう。
トコトコとフラットな林道を散策するように進むと、車体から受けるコンペ感とは裏腹にのんびり走ることも可能だと実感。125ccながら低速のトルクもあり、登り坂になっても良く粘ってくれた。車高の高さやノンシールチェーンが垂れ角の強いスイングアームにパチャパチャ当たる音などはコンペなのだが、心持ちとしてはセロー的な気分でいられたのが意外だ。
一方でペースを上げると元気な性格も見せてくれる。今年のモデルで新採用されたというミナレリ製エンジンは可変バルブ機能も搭載、高回転域も元気に伸びていってくれるのだ。四輪車が入ってこれないような細い林道において気持ちの良いペースでオフロード走行を楽しむのも良し、そしてそれが行き止まりになった時などには、ローダウンされ足つきが良くなった車体と、簡単にはエンストしないエンジン特性によりUターンもしやすかった。
ただ、本当にペースを上げていくと、同時に試乗した250cc版に比べるとトラクション感が希薄に感じる場面がなくもなかった。それはローダウンされたことによるディメンションの違いなのか、それともより高回転域までエンジンが回っているためなのか、もしくはただ250の方が優秀過ぎるのか、その違いは明確ではないものの、250版ではトラクションを感じながら曲がれた場面で125の方はリアが横を向いてしまって「おおっ!」となった場面も見られた。しかしそれはかなり元気なペースで、という前提のため、また即転倒に繋がる挙動でもないため、オフロードランを楽しむ一環とも言えよう。
気軽なトコトコ散策も、元気な高回転域も楽しめて、かつ125ccという排気量区分ゆえに所有するハードルも低いXEF125。排気音がとても静かというのも所有しやすい一面で、仰々しくないというか、押しつけがましくないというか、走らせることにおいて無理がないのが好印象だった。家の近所にちょっとした未舗装路や、もしくは降りていける河原などがあって、たまには本格オフロード走行を味わいたい人、もしくはいわゆるトレール車(公道向けの量産オフ車)では満足できず、もう一歩コンペモデルに近い本格オフを味わってみたい人にお薦めできる車両だろう。
逆に舗装路区間が多いツーリングを気軽に走れるような性格ではないし、また車両価格的にも街乗りで日常的に使うにはハードルが高いため、「心の中では生粋のオフロードファン」という人にこそXEF125の魅力がわかり、かつ楽しめるのではないかと思う。
足つきチェック(身長185cm)
ディテール解説
主要諸元
排気量:4ストローク 124.66cc ボア×ストローク:52×58.7mm 始動方式:セル式 変速機:6速 フレーム:クロームモリブデン鋼 ペリメタフレーム ブレーキ(F):φ260mmディスクブレーキ ブレーキ(R):φ220mmディスクブレーキ サスペンション(F):FANTIC φ41mm 倒立フォーク サスペンション(R):FANTIC FRS 125 Piggyback 全長:2100mm シート高:915mm ホイールベース:1420mm タイヤ(F/R):90/90-21 / 120/90-18 車両重量:108kg(ガソリン抜き) タンク容量:7.5ℓ ボディカラー:ブラック/イエロー クラシック・レッド/ホワイト/ブラック