最高出力12.2psはライバル160ccスクーターより控えめ。なのに発進加速がメチャいい感じ!|SYM・JET14 200試乗レポート

台湾のSYM(エス・ワイ・エム)のラインナップにおいて、中核を成すスクーター群がJETシリーズだ。その中でも2017年に登場し、前後14インチタイヤを履くローホイールスクーターの「JET14」が欧州市場で人気が高いという。かつては125ccモデルが日本でも販売されていたが、現在は169ccの「200」のみが流通している。果たしてその実力やいかに。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●SYMジャパン(http://www.sym-jp.com/)

SYM・JET14 200……385,000円

車体色は写真のホワイト以外にブラックとレッドを用意。いずれもホイールは黒となる。
ホイールは前後14インチで、エッジを効かせたスタイリングが特徴的なJET14。車名の数字は「200」だが、排気量は169ccとなっている。ABSを前後に採用しているのは良心的。
前後13インチホイールでフラットフロアボードを採用。155ccの水冷SOHC4バルブ単気筒を搭載するヤマハのマジェスティSが直接のライバルになりそうだ。車両価格は37万9500円。

騒々しく感じるものの、力強いスタートダッシュに思わず笑顔

ここ数年、126~250ccの軽二輪クラスにおいて、販売台数ランキングで常に上位にいるのが、ホンダのPCX150/160、ヤマハのマジェスティS、同NMAX155などのスクーターだ。いずれも250ccフルサイズではないが、排気量が少ない分だけ車体を軽量コンパクトにできるほか、原付二種クラスを超える余裕の動力性能と、自転車専用道路を走れるという法的メリットが人気を集める理由となっている。

今回試乗したのは、台湾メーカーSYMのJET14 200だ。車名に惑わされやすいが排気量は169ccで、PCX160(156cc)やマジェスティS(155cc)、NMAX155(155cc)とほぼ同等となる。なお、スタイリング的にはフラットフロアボードを採用していることから、直接のライバルはマジェスティSだろう。

まずはエンジンから。先に挙げた国内メーカー3車が水冷SOHC4バルブ単気筒を搭載するのに対し、JET14 200は空冷SOHC2バルブ単気筒となっている。それもあってか、最高出力はマジェスティSの15psに対して12.2psとやや控えめだ。

エンジンを始動する。水冷エンジン勢と比べると各種ノイズはやや大きめだが、これは力量感と捉えることもできる。停車状態からスロットルを開けると4,000rpm付近で遠心クラッチがミートし、125ccの原付二種スクーターよりも明らかに力強く発進する。車重はN.A.となっているので不明だが、取り回しているときの印象は原付二種並みに軽く、そのことも加速性能に好影響を与えているのは間違いない。

上り勾配のきつい峠道も走ってみたが、スロットルを開けてから実際に加速するまでのタイムラグが原付二種よりも短く、44cc多いだけとはいえ排気量のアドバンテージを痛感する。試乗スケジュールの都合で実際に高速道路は走れなかったが、このパワーフィールから想像するに100km/h巡航はそつなくこなしてくれるだろう。


フラットフロアボードを採用しながらシャシー剛性に不足なし

このJET14 200、ハンドリングも優秀だ。ホイールベースは1350mmで、これはマジェスティSの1405mmよりも55mm短い。それもあってか、ホイール径は前後ともマジェSより1インチずつ大きいにもかかわらず、Uターンなどのコンパクトな旋回もスムーズに行うことができ、それでいて速度を上げていけば14インチらしい安定成分が強まってくる。そのバランスが絶妙なのだ。

そして、何より感心したのはシャシー剛性の高さだ。フラットフロアボードのスクーターはそのレイアウト上、どうしてもステアリングヘッド付近が弱くなりやすいのだが、JET14 200はABSが作動するほどフロントブレーキを強く握っても車体がしっかりしており、不安を感じさせない。ゆえに、勾配のきつい峠道の下りコーナーも安心してこなせるのだ。

さて、ブレーキについて。このJET14 200をはじめマジェスティS、PCX160、NMAX155の全車が前後にディスクブレーキを採用するが、前後にABSを導入しているのはJET14 200とNMAX155のみ。PCX160はフロントのみ、マジェスティSは前後連動式すら非採用となっている。JET14 200のディスクブレーキはコントロール性良好で、ABSの介入タイミングについても特に不満なし。何より前後にABSが採用されていることの安心感は絶大だ。

給油口がシート下にあるので面倒、グローブボックスとラゲッジスペースが小さめなどいくつか不満はあるが、基本設計はさすがスクーター大国の台湾生まれだけあって非常に高い。そして、あらためて気付いたのがフラットフロアボードによる乗降車のしやすさであり、軽二輪スクーターを日常的に使いたい人に強くオススメできる1台だ。


ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

乗降車しやすいフラットフロアボード。足を伸ばせるデザインではないが、窮屈ではない。
シート高は770mmを公称。ウレタンがソフトなこともあり、足着き性はご覧のとおり良好。

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…