タイから届いたカジュアル系&カラフル系ビジネスバイク。【GPX POPZ110試乗】

GPXとはタイ王国のバイクメーカー。中小排気量車が主流となっている国の事情にあわせ、250ccまでのモデルを数多く発売している。本国ではスポーツモデルからクラシックタイプ、ファミリーモデル、スクーターなど幅広い車種をリリースしているが、その中から厳選したモデルをGPXジャパンが日本市場に投入。今回はオシャレなストリートモデル・POPZ110を紹介しよう!
REPORT●横田和彦(YOKOTA Kazuhiko)
PHOTO●関野 温(SEKINO Atsushi)

POPZ110 … 26万4000円(消費税込み)

もはやビジネスバイクとは呼べない、スタイリッシュなフォルム

アンダーボーンフレームにシリンダーが前傾した4スト単気筒エンジンを搭載。レッグシールドや前後の大型フェンダーなど、車体構成だけを見ると古くからあるお馴染みのビジネスバイクである。
しかしPOPZ110の存在感は従来のビジネスバイクとはまったく異なる。ボディラインはなめらかで、ビル街にも似合う現代的なスタイリッシュさを持っているのだ。5種類用意されているカラーリングも新鮮。ビジネスバイク特有の野暮ったさがないため、見た瞬間に思わず「おおっ、シャレてるじゃん!」と口に出してしまった。

シンプルな放射状のスポークを持つ17インチのキャストホイールやハンドルの下に埋め込まれたヘッドライト、後部が浮いたシートデザインなど個性的な部分は多々ある。ローター径が220mmのフロントディスクブレーキや、すべてLEDの灯火類などは現代のバイクらしい装備。なかなかの完成度である。

車格は一般的なビジネスバイクとほぼ変わらず、シート高は740mm。シートの前方が絞り込まれていることもあり足つきは良好。ハンドルも手を伸ばすとそこにある自然な位置にあるので上体は垂直に近い。リラックスできる乗車姿勢だ。ブラウンの表皮を採用しているシートの座り心地は良好でクッション性も高い。長時間のライディングでもお尻が痛くなりにくいだろうと感じた。

シンプルなメカニズムなので操作もイージー!

ハンドルの右スイッチボックスにあるセルボタンを押すと、単気筒エンジンはすぐに目を覚ます。インジェクションなのでアイドリングも安定。うれしいのはキックペダルが標準装備されていること。万一バッテリーが弱ってしまいセルが回らなくなってしまってもキックでエンジンを始動させることができるのだ。


ミッションは4速のロータリー式。クラッチレバーの操作がいらない自動遠心クラッチなので、シフトペダルを踏み込むと自動的にクラッチが切れて1速にギヤが入り、ペダルを定位置に戻すとクラッチがつながる準備段階になる。そこからアクセルを開けていくとエンジンの回転が上がるにつれてクラッチが徐々につながっていく。
スピードが上がったら再びペダル踏み込んでシフトアップするのだが、そのときアクセルを一瞬戻しペダルが戻るのと同時にアクセルを開けるとスムーズに加速する。

シフトダウンはかかとでペダルの後ろを踏んで行う。その時もアクセルを戻すのだが、慣れてきたらかかとでペダルを踏み込んでいるとき(クラッチが切れているとき)に一瞬アクセルをあおってエンジンの回転を少し上げてからペダルを戻すようにすると、よりなめらかに減速することができる。これはうまく決まるとちょっと嬉しくなるポイントだったりする。

誰もが操れる自然なライディング・フィール

今回の試乗はサーキットで行われた。ハッキリ言ってしまうと場違いだ。POPZ110は市街地走行をターゲットに作られたモデルだというのはスタイルや装備をみても明らか。サーキットを走ってもその良さはわからないのでは…、なんて思っていたけれど走ってみてビックリ。いや楽しいじゃないの!
確かにバンク角は足りないし、アクセルを全開にしても強烈な加速をするわけでもない。だからラップタイムを削るような走り方にはまったく向いていない。そんなのアタリマエだ。

しかしエンジンの回転を上げすぎず、POPZ110なりのスピードで巡航するのが実に気持ちイイのだ。それは車体剛性の高さとサスペンションの動きの良さが理由だと推測できる。フロントのテレスコピックフォークはブレーキングでググッと沈み込むが底づきすることなくやんわりと受け止めてくれ、リヤのツインショックもフワフワしすぎず適度なダンピングが効き、リヤタイヤにトラクションをかけつつ快適な乗り心地を提供してくれる。

前後17インチの大径ホイールがもたらすハンドリングは至ってニュートラル。バンク中の車体姿勢は安定していて、ちょっとしたギャップがあっても振られにくい。そのため余計な気遣いをせずにスーッと曲がっていける。
ブレーキの効きも必要十分。ABSこそ装備されていないが、握り込んだだけ効いてくれるレバータッチのおかげで思ったスピードまで減速でき、不安を感じるシーンはなかった。
切り返しでもスポーティとまではいかないが妙なダルさはなく、軽々とした挙動をみせる。これなら市街地もキビキビと駆け抜けていけるだろう。
またサーキットだったので高負荷がかかるハイスピード時でも車体が安定していたことを体感できたのも収穫だったと言える。

熟成された機能と使い勝手を持つ新世代のストリートバイク

幅広いスキルのライダーが時間をかけずに馴染めるフレンドリーさを持つPOPZ110。車格と走行性能のバランスが良く、価格が想像以上にリーズナブルなのにも驚く。短時間の試乗だったので耐久性までは分からないが、搭載されている110ccエンジンはタイでも長く使われているもので信頼性は高いという。またGPXジャパンのバックアップがあるというのも安心材料だといえよう。
近未来を舞台にしたマンガやアニメに出てきそうなフォルムのPOPZ110は、ビジネスシーンやショッピング、レジャーなど、さまざまな使用用途に使えるマルチなシティコミューター。
肩肘張らず、毎日気軽に乗って便利なバイクライフが満喫できる一台だと言えよう。

年齢性別問わず、誰でも気軽に乗れるPOPZ110。女性が乗るとまた雰囲気も違って見える!

ディテール解説

埋め込まれた異型ヘッドライトやウインカーはすべてLED。メタリック塗装や要所にあるメッキカバーなどにより高級感がある仕上がりになっている。自動遠心クラッチなのでクラッチレバーはない。

コックピットの風景は見慣れた雰囲気。ヘッドライトのハイ/ロー切り替えやウインカーなどのスイッチは左側に集中。ハザードも装備されているのが嬉しい。グリップのパターンが可愛らしい。

アナログ式のスピードメーターがメインのシンプルなメーターを採用。下部にギヤポジションインジケーターや燃料計、各種ワーニングランプが装備されている。

フロントフェンダーの上に小さなキャリアを装備。場所的にあまり重い物を乗せることはできなさそうだが、ワンポイントとしても効いている。

フロントブレーキのローター径は220mm。キャリパーはピンスライドの2ポット。自然なタッチで速度調整しやすい。直線的なデザインのスリムなスポークを持つ17インチキャストホイールを装備。

シンプルな造型の単気筒エンジン。前傾しているシリンダーヘッドにはフィンがないが冷却方式は空冷だ。振動は少なくスムーズに吹け上がる。

低く伸びたマフラーにはメッキのヒートプロテクターがつく。排ガス規制のユーロ4に対応。リヤホイールは17インチ。リヤブレーキはシンプルな構造のドラム式。

チェーンは衣類がオイルで汚れないようフルカバードされている。カバー付きのリヤショックは、上部にある黒いレバーを回すと1人乗りと2人乗り、それぞれに向いたプリロードにワンタッチで調整できる。これは便利だ。

ブラウンのシートは前後セパレートタイプ。座り心地はよく長時間乗っていても疲れにくい。タンデムシートの居住性もよく、シート下にある窪みに手をかければ体勢も安定している。

SPECIFICATION

車名(型式):POPZ110(POPZ110A)
全長×全幅×全高:1880mm×745mm×1070mm
最低地上高:180mm
シート高:760mm
車両重量:100kg
エンジン:109㏄ 空冷4ストローク単気筒
燃料供給方式: フューエルインジェクション
トランスミッション:ロータリー式 4段変速
ヘッドライト : LED
テールライト : LED
エンジン始動方式 : セルモーター
ブレーキシステム(前): ディスクブレーキ
ブレーキシステム(後): ドラムブレーキ
タイヤ(前): 2.25-17-38P
タイヤ(後): 2.50-17-43P
タンク容量:4L
乗車定員:2名

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著者プロフィール

横田 和彦 近影

横田 和彦

学生時代が80年代のバイクブーム全盛期だったことから16歳で原付免許を取得。そこからバイク人生が始まり…