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通勤・通学時に最強の乗り物が原付2種スクーター。コンパクトな車体にパワフルな125ccエンジンの組み合わせは渋滞時でもスイスイ走れるうえ、50ccと違って一般車と同じ制限速度と二段階右折不要だから交通違反のリスクが大幅に減らせる。混雑した街中を走って目的地を目指すなら最高の選択肢が原付2種スクーターなのだ。ところが昨今の人気はホンダPCXやヤマハ・シグナスグリファスなど、大柄なボディと水冷エンジンによるスムーズな加速力を備えるモデルたちで原付2種スクーターも大きく様変わりした。PCXやシグナスグリファスなどでは通勤・通学時に最速であるには少々難しいし、第一新車価格が高い。どちらかというと趣味の乗り物で、原付2種スクーター本来の使い方をしたいなら選択肢は違ってくる。そこで注目したいのが最新の排出ガス規制に適合して2022年に発売された新型ヤマハ・アクシスZだ。
今回はYouTubeで無料配信しているモトチャンプTVのプログラムから「2022最新通勤スクーター試乗Pt.1 ヤマハ・アクシスZ」で最新モデルがどのように進化したのか確かめてみたい。この動画は「モトチャンプTV」が用意している動画ジャンルのなかの「スクーター」にアップされている。スクーターであれば、紹介するライダーはお馴染みのジャーナリストより適任がいる。そこで今回の動画では編集長のチャボと鈴鹿8耐で実況を務めたMCシモの二人が担当することになった。MCシモは過去にモトチャンプが開催した各種イベントなどでMCを務めた経歴があるため、スクーターや4MINIにも精通しているのだ。
新型ヤマハ・アクシスZの特徴
新型アクシスZの特徴を一言で表現すれば、平成32年排出ガス規制に適合したことが大きい。厳しさを増す排出ガス規制に対応しつつ「燃費」「環境性能」「走りの楽しさ」を追求したヤマハらしさに溢れる新型エンジンを開発。従来型だと燃費性能(WMTCモード)は54.6km/Lだったが、新型でも同51.9km/Lを達成。アクシスストリートから続く通勤・通学向け原付2種モデルとしての熟成が図られ、前後連動式ブレーキであるUBS(ユニファイド・ブレーキ・システム)を新採用している。後輪ブレーキだけを使用しても前輪に制動力がかかり安全に止まってくれる技術だ。
従来モデルから変わらぬ点としては前後10インチタイヤ・ホイールを継承している。街中などでの操作性を優先するなら10インチはベストなサイズだし、維持費という面からもコストパフォーマンスに優れている。もう一つ変わらぬ点として挙げたいのがフラットなフロアだ。最新スクーターの多くでフラットではないフロアを採用する例が増えたものの、アクシスZでは従来モデルから変えることなく継続採用している。足の置き場が自由であることは操作面で有利になることさえあるほどだ。
シート下スペースが大きなこともアクシスZの特徴として外せない部分だ。2017年に発売された初代アクシスZは37.5リッター容量を確保してジェットヘルメットなら2個を収納可能とした。2022年発売の最新モデルでもジェットヘルメットが2個入るスペースを確保している。コンパクトな車体ながら、これだけのスペースがあることは驚きであり実用性という面でも大いに役立つことだろう。さらにヘルメットホルダーが2個用意されていることも便利なポイント。荷物で塞がってしまってもヘルメットを固定できるから、駐車時にヘルメットを持ち歩かなくて良い。
新型アクシスZを語る上で欠かせないのがヘッドライト。高価なLEDなどを採用したわけではないが、新型には60W/55Wもの光量が採用された。従来モデルでは35W/35Wだったので倍近くの明るさとなったわけで、これは中型バイクと同程度の明るさでもある。街中から街灯の少ない郊外へ向かったとしても安心できる光量なのだ。さらに新型ではエンジンにセルモーターがない。ではどうやってエンジンを始動するのかといえば、発電機(ジェネレーター)にセルスターター機能を与てジェネレーターが直接クランクシャフトを回転させるのだ。朝早くや夜遅くにエンジンを始動する時は、セルモーターの音が近所迷惑になることもある。その点、このSMG(スマート・モーター・ジェネレーター)と呼ばれるシステムなら安心してシーンを問わずエンジンを始動できる。
足つき性・ライポジをチェック
コンパクトな車体だから足つき性も良好。身長が162cmあるかないかという小柄なMCシモあまたがってみても、しっかり両足が地面に着地する。誰でも安心できる足つき性だといっていいだろう。またがった時のライポジも良好で、大型化した最近の原付2種スクーターだとハンドルが遠かったりすることがあるが、アクシスZは日本人の体格にあったポジション設計となっている。とても自然なポジションが得られるのだ。そのままセルスイッチを押すとセルの音がしないままエンジンが始動する。エンジン本体からの音も驚異的に小さく、動画の音量を上げないとかかったのかどうかわからないほど。
試乗インプレッション
実際に乗った印象をMCシモが語っている。印象的なのは静かなエンジンの出力特性で、回転数を問わずスムーズにパワーが引き出されることだ。低速から高速までスロットル操作が一定でなかったとしても、エンジンのマナーは変わらずライダーのミスを許容してくれる特性を備えている。またフレームやタイヤとのバランスが最適化されているため、もちろん10インチタイヤによるクイックなハンドリングはそのままに、高速域でフラついたりすることなく細かな微振動などを低減している。とても10インチスクーターとは思えないほどリラックスして乗っていられるのだ。また前後連動ブレーキであるUBSの制御がとても自然な印象で、後輪ブレーキレバーだけ使っているのに、しっかりフロントフォークが沈み込んで前輪にも制動力が発生していることを感じられる。その際の前後配分などの制御が的確なため、MCシモは後輪ブレーキだけでほとんどのシーンをクリアできるのでは、と語るほどだ。
総評
最後に新車価格が27万1700円(税込)に引き上げられたこともにも触れている。従来モデルが24万7500円(税込)だったため、2万4000円ほどの価格アップとなった。通勤・通学スクーターとして考えるなら価格設定はとても大事な点だが、新型エンジンの静かさやセルモーターのないマナー、さらには前後連動ブレーキや光量アップしたヘッドライトなどを考えると納得の価格ではないだろうか。