自分でバイクのブレーキフルード交換&エア抜きのコツ。スズキ アドレスV125Gで実践||YouTube『moto medico TV』008

東京都中野区にあるバイクショップ「モトメディコ」が運営するYouTubeチャンネル『moto medico TV』では、スズキ アドレスV125Gを題材にしたメンテナンス動画を定期的に配信しています。今回は、前回紹介した「フロントブレーキパッドの交換」の続編として「ブレーキフルードの交換」を紹介します。エア抜き作業も細かく解説しますので、ぜに参考にしてください!

マスターシリンダーのトップキャップを外す

まずはマスターシリンダーの中を確認します。アドレスV125G/Sシリーズは、ライトカウルを外さなくてもマスターシリンダーにアクセスできるのが便利です!

プラスドライバーでトップキャップのねじ2本を外します。ここは固着している場合も多く、なかなか外れないことも……。そうするとねじの頭をナメてしまうことも多いので、「外す前から『ここは緩みにくい!』と覚悟して、慎重に作業すること」と山根さん。しっかりとプラスドライバーを押し付けながら回しましょう。
ネジが取れたと思ったら、次はキャップが固着していることも多いそうです。無理に開けようとすると、勢いがついてキャップが外れた途端に中のオイルが飛び散ることも! ブレーキオイルは攻撃性が強いため、外装などについてしまうと大変です。また、オイルがカウル内に入り込むと、ライトカウルなどを外して拭かなければなりません。そうならないように、マイナスドライバーなどで軽く叩いたり、こじるようにして、慎重に開けましょう。
トップキャップとラバーキャップをゆっくり開けます。ウエスでフォローしながら作業するのがベター!
中のブレーキオイルをチェックしてみると……透明度ゼロ! めちゃくちゃ汚れていて、「購入後、一度も交換されていないかも」と、山根さんも苦笑します。

マスターシリンダーカップ内のブレーキオイルを抜き取る

いきなりキャリパー側からブレーキオイルを抜き始める人も多いですが、マスターシリンダーカップ内を綺麗にするのがモトメディコ流。洗浄できるところはなるべく綺麗に……これがバイクを良い状態に保つポイントなのです。

市販の油差しなどを使って、カップ内のブレーキオイルを空っぽになるまで吸い上げます。
ウエスでカップ内の汚れをゴシゴシ落としていきましょう。角にはドライバーを使うことで、作業がスムーズに進みます。

ブレーキキャリパーに廃油タンクをセットする

古いブレーキオイルはキャリパーから抜きます。そこで廃油タンクをキャリパーにセットします。専用タンクが市販されていますが、ペットボトルでも代用できますよ!

キャリパーのブリーダープラグにはゴムキャップがあります。キャップはプラグの頭から外すだけでなく、タグごと全部取ってしまう方が、この後の作業をスムーズに進められます。
メガネレンチ(8mm)をプラグに掛けます。
廃油タンクを用意。ペットボトルと耐油ホースで自作できるので、ぜひ挑戦してみてください。ちなみにキャップには穴が2つ……ひとつはエア抜き用です。
プラグに耐熱ホースを挿し、廃油タンクをセットします。プラグは固く締まっていることが多いので、一旦緩めて、すぐに軽く締める。これで準備完了です!

ブレーキオイルをカップに補充

ここからはブレーキオイルの入れ替えです。 まずは空になったマスターシリンダーカップに新品オイルを補充します。ちなみに、作業中にハンドルを切るとカップの高さや角度が変わってしまい、オイルが溢れることがあるので、ハンドルは絶対切らないように!

油差しなどに小分けした新品オイルをカップに入れます。小分けにしている理由は、「1Lの缶などでそのままカップに注ぐと、勢いがついて、こぼしてしまいがち。こぼしてしまうとカウルなどは全部外して、ハンドル周りなどを掃除しなければなりません」とのこと。また溢れ出さないように、1回の注油の目安は点検窓の上面くらいに留めておくのが良いそうです。

マスターシリンダー内のエアを抜く

先ほど、カップ内の古いオイルをウエスで吸い取ったため、カップ入口とホースの隙間にほんの少しエアを噛み込んでいる可能性があります。そこでまず、ブレーキレバーをポンピングしてマスターシリンダー内のエアを出します。

マスターシリンダーカップ内のオイルを注視しながら、ブレーキレバーを数回握ります(=ポンピング)。
すると、カップの底から泡が出てきます。これが残っていたエアです。さらにポンピングを続けると、泡が出てこなくなり、ホース内の古いオイルが吹き返してきます。カップの綺麗な新品オイルが濁ってきたら終了です。

ホース内のブレーキオイルの入れ替え

ブレーキオイルの入れ替え方法を詳しく説明します!

まずはブレーキレバーをグッと握ります!
ブレーキレバーを握ったまま、ブリーダープラグを緩めます。すると、ブレーキレバーがさらに奥まで握り込めるようになるので、そのまま握り続けます。そうするとブレーキオイルが廃油ホースの中に出てきます。そしてブレーキレバーを握ったまま、プラグを軽く締めます。
握っていたブレーキレバをゆっくり離します。
ブレーキレバーを数回ポンピングして、再度握り込みます。この後は先ほどと同じ……これを何回も繰り返すことで、キャリパーから汚れたオイルがどんどん出てくるのです。
マスターシリンダーカップ内のオイルが減っていくので、まめにチェックすること! 完全になくなってしまうと、エアを噛み込んでしまいます。そのため、完全になくなる前にオイルを補充しましょう。
ホース内のオイルが透明になったら、キャリパーまで新品オイルが下りてきた証拠。最後にブリーダープラグを本締めします。

規定量のブレーキオイルを入れる

減ってしまっているマスターシリンダーカップ内のブレーキオイルを規定量まで注ぎ足します。

ブレーキパッドが新品の場合は、点検窓の上側のフチあたりまで。パッドを再利用する場合は、もともと入っていた量を覚えておいて、その位置まで補充しましょう。「ブレーキオイルとパッドは同時交換が理想ですね」と山根さん。

ラバーキャップとトップキャップの洗浄

あとは外したパーツを元に戻せばOK……では、もちろんありません! 外したパーツの汚れや腐食を取り除くのはメンテナンスの基本!! ラバーキャップとトップキャップも綺麗にします。

トップキャップとラバーキャップをチェック。内側にびっしり汚れが付着していますね。
洗浄方法は水を張ったバケツに入れて、手洗いです。じつはブレーキオイルは水に弱く、パーツクリーナーなどを使わなくても、水だけで汚れを落とせるのです。
最後はウエスで水気を完全に拭き取ります。
トップキャップのプラスねじも汚れが付着しやすく、そのまま装着すると噛み込みの原因になります。真鍮ブラシで汚れを落としましょう。

トップキャップを取り付ける

ラバーキャップとトップキャップを元に戻し、プラスねじをセットします。
このねじは締めすぎに注意です。手である程度締め込んだところから、軽くキュッと締める程度でOKです。
緩むのが心配な人にはマーキングがおすすめです。

廃油タンクを取り外す

廃油タンクのホースを外します。この時、ホース内のブレーキオイルが漏れないに注意して、ゆっくり外しましょう。その後、メガネレンチも外しますが、ブレーキオイルが付着していることが多いので、ウエスでしっかり拭き取ります。
パーツクリーナーを染み込ませたウエスでブリーダープラグ全体と周辺を拭きあげます。
ディッシュペーパー1/4枚程度でコヨリを作り、ブリーダープラグ内に差し込みます。すると、コヨリが中に残ったブレーキオイルを吸い上げてくれるのです。このまま10分程度放っておくか、もしくはコヨリにブレーキオイルがつかなくなるまで、何度か繰り返します。
最後にゴムキャップを装着して終了です。ポイントはタグを下側にして装着すること。こうすることで、万が一ブレーキオイルが滲んできたとしても、タグ部分に一旦溜まります。オイル滲みの早期発見やオイル飛散を防止できるのです。

最終チェック

以上ですべての作業は終わりですが、最後にブレーキの引きずりや効き具合を確認しましょう。

ジャッキなどで前輪を上げて、進行方向に回します。ブレーキの引きずりがなく、綺麗に回転すればOKです。
次にブレーキレバーを握って、離します。そして再度前輪を回転させて、抵抗がないかを確認しましょう。最初はスムーズに回っても、ブレーキをかけると回転が重くなることがあるのです。その場合は、エアを噛んでいたり、ブレーキオイルの汚れが残っているなどが考えられます。

実際にブレーキオイルが汚れてくると、ブレーキをかけた時にグッと踏ん張るようなタッチが失われてきます。だけど、徐々に変化するので毎日乗っていると気づきにくいもの。そのため、必ず点検窓などを定期的にチェックしてオイルの汚れを目視することをおすすめします!

あとはブレーキパッドを交換する時は必ずブレーキオイルも交換するなど、自分なりの目安やタイミングを設定するのもよいでしょう。

ブレーキ性能は安全運転の要です。しっかりとしたメンテナンスを心がけたいものですね!

当記事でも十分に手順を追うことはできますが、さらに詳細を知りたい場合はぜひ、YouTubeもチェックしてみてください!

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著者プロフィール

佐賀山敏行 近影

佐賀山敏行

学生時代からの乗り物好きが高じて、 雑誌『カスタムバーニング』やムック『ハーレー・バガースタイル』な…