目次
CLの元祖は1962年の大ヒットモデル
ホンダのCLシリーズは、1962年に登場した250ccの「ドリームCL72スクランブラー」を元祖に持つスクランブラーモデルのシリーズだ。
スクランブラーとは、オンロードモデルをベースに、ダートなどでの走破性も両立したモデルのこと。1960年代頃から登場したこのスタイルは、当時、オフロード専用モデルがあまりなかったこともあり、ロードバイクを使い、マフラーをアップタイプにしたり、サスペンションのストローク量を増やすなどで、悪路走行向けにモディファイしたのが始まりといわれる。いわば、オフロード車の草分け的なバイクだ。
実際に、ドリームCL72スクランブラーも、1960年登場のロードスポーツ「ドリームCB72スーパースポーツ」がベースで、マフラーをアップタイプにしたり、フロントに19インチのホイールを採用するなど、各部を悪路走行向けに変更。まさに、当時のスクランブラーモデルの方程式に則ったマシンだといえる。
その後、日本や北米などで大ヒットしたCLは、450ccや250cc、125ccや50ccなど、さまざまな排気量のモデルがシリーズ化されて登場し、長年多くのファンを魅了した。
軽二輪のCL250は幅広いユーザーに最適
そんな往年の名車CLを現代に蘇らせたといえるのが、CL250とCL500。なかでも、2023年5月18日に発売が予定されている250cc版のCL250は、高速道路を走れることで長距離ツーリングに対応しつつも、車検が不用なことで維持費も安い軽二輪モデル。ベテランから免許取り立ての若い初心者、女性ライダーなど、幅広い層のユーザーに最適なバイクだといえる。
スクランブラーの大きな特徴といえるアップタイプのマフラーを採用した外観は、比較的シンプルだ。オフロードテイストを演出したグリップを装備するバーハンドル、ラウンドシェイプをモチーフとした燃料タンク、座面にワディング加工を施したシートなどが、ワイルドかつヘリテージな雰囲気を醸し出す。それに、LEDタイプのヘッドライトやテールランプなどが、現代風なテイストも織り交ぜる。
エンジンには、249ccの水冷4ストローク単気筒を採用。最高出力24ps/8500rpm、最大トルク2.3kgf・m/6250rpmを発揮し、オンからオフまで幅広いシーンに対応するよう、低回転域から高回転域まで扱いやすい出力特性に調教されている。
また、クラッチレバーの操作を軽くすると共に、シフトダウンで急激なエンジンブレーキが掛かった場合の後輪ホッピングを軽減する「アシスト&スリッパークラッチ」も採用。減速時などの高い走行安定性に貢献する。
美しいフレームワークがレトロさを強調
車体には、剛性と重量バランスを最適化したダイヤモンドフレームを採用。リヤ後端でループ状につながる美しいパイプワークを描くフレームデザインは、レトロなスタイルを一層引き立てる。
サスペンションには、フロントに直径41mmの正立フォークを装備。オイルとスプリングのマッチングを最適化することで、オンロードはもちろん、オフロードでも快適な乗り心地を実現する余裕あるストローク量を確保する。また、リヤサスペンションは、5段階のプリロード調整機構付きで、タンデム時や荷物の積載時にも最適な車体姿勢を保つことが可能だ。
ほかにも、フロントフォークにはフォークブーツも装備。フォークのインナーパイプを飛石や泥から守ると共に、クラシカルな外観にも貢献する。また、ホイールはフロント19インチ・リヤ17インチで、ブロックパターンのタイヤとのマッチングにより、オン・オフ両方で高い走破性や優れた快適性に一役買っている。
なお、カラーバリエーションは、「キャンディーエナジーオレンジ」、「パールカデットグレー」、「パールヒマラヤズホワイト」の3色。価格(税込)は、62万1500円だ。
より余裕ある走りを楽しめるCL500
一方、500cc版のCL500。すでに欧州では、2022年11月の「EICMA2022(通称ミラノショー)」で発表されたモデルだ。日本仕様について、まだ詳細は公表されていないが(2023年3月17日現在)、国内導入は決まっている。
CL250の兄貴分ともいえるのがCL500。エンジンには、クルーザーモデルの「レブル500」と同様の471cc・直列2気筒を搭載。欧州仕様では、最高出力34.3kW(46.6ps)/8500rpm、最大トル43.4Nm(4.42kgf-m)/6250rpmを発揮する。専用のECU設定や、ショートに設定した最終ギア比などにより、1速から6速までシャープでレスポンスの高い加速を実現する。
こちらも、アップタイプのマフラーや美しいパイプワークのフレーム、フロントの直径41mmテレスコピックフォーク、プリロード調整が可能なリヤサスペンションなどを装備。レトロな雰囲気とオフロードでのプロテクション効果を狙ったフォークブーツを備えるなど、主な装備はCL250と同様だ。
250cc版のCL250と比べると、恐らく、排気量が大きい分、スタートの加速はもちろん、高速道路などでのより余裕の走りをみせてくれることが期待できる。そういった意味では、より上級者向けのモデルだといえよう。
街でオシャレに走り、オフのツーリングにも対応?
以上が、CL250とCL500の概要だが、これらモデルに期待できるのは、まず、ネオクラシックなスタイルにより、街をスタイリッシュに走れることだ。しかも、アップライトなポジションなどにより、渋滞路や細い路地でのUターンなども、比較的楽に走れることが予想できる。
なお、発売日が発表されたCL250では、純正アクセサリーもすでに用意されており、フロントまわりをタフなオフロード車的な雰囲気にできる「ヘッドライトバイザー」や「アップフェンダー」、リヤまわりにも往年のモトクロッサーのようなスタイルにできる「リアサイドカバー」などをラインアップする。より個性的で、カスタムバイク的な印象にしたいのならおすすめだ。
また、オフロードの走行性能が、どれほどあるのかも気になるところだ。特に、最近のアウトドアブームにより、バイクにテントなどを積んでキャンプなどに出かけるユーザーも増えてきた。オン・オフ両用のスクランブラーである新型2モデルが、そうしたユーザーのニーズに十分対応していることにも期待したい。
ちなみに、CL250は、タイヤにダンロップ製TRAILMAX MIXTOURを装備する。アドベンチャーバイクなどに多く採用されているモデルだ。オンロードでの巡航性能とダート走破性を最適にバランスさせたというこのタイヤと、フロント19・リヤ17インチのホイールにより、オフロードでもある程度の走りをみせてくれることは確かだろう。
もちろん、樹木が立ち並び、倒木や激しいアップダウンなどもある山奥の林道などを、ハードに走ることまでは難しいかもしれない。だが、例えば、キャンプ場に行く途中の未舗装路くらいは、楽にクリアできそうだ。
いずれにしろ、通勤・通学や買い物などの普段使いから、休日のツーリングやキャンプなど、幅広いニーズに応えてくれそうなのが、新型のCL250とCL500だ。ネオクラシックなスタイルだけでなく、実用性などにも大きな魅力があることに期待したい。